海外人材紹介になりすます求人メールが、試用期間中に先渡し金を配って信用させたあと、研修タスクの先払いを求め、応じると連絡が取れなくなる型を、国民生活センター・警察庁・金融庁の一次情報で調べた
求人サイトや人材紹介会社の名を借りたメールから始まり、LINEへ移ったあと、担当者を名乗る相手が「試用期間中の報酬」として、こちらより先に少額を振り込んでくることがある。ありがたい話に見えるが、そこで作られた信用は、後で別の形になって返ってくる。特定の事業者は名指しせず、この「先渡し金」と、その先で応答が途絶える型を、国民生活センター・警察庁・金融庁の一次情報とお金の流れで調べた。
型を、お金の流れで分解する
個別の事業者名は伏せる。求人サイトを装うメールの入口や、LINEでの担当者交代という中継点については、前号(第448号)ですでに仕組みを調べた。今号はその先――向こうが先に払ってくるという珍しい段階と、支払いに応じたあとに何が起きるか、という出口に焦点を当てる。
中継点:試用期間中の「先渡し金」という逆手
連絡先はLINEに移り、しばらくやり取りが続いたあと、担当者が「試用期間中の報酬」として先にいくらかを振り込んでくる。ここまでは、こちらは一円も払っていない。だからこそ警戒がゆるむ。国民生活センターは2026年5月の注意喚起で、「最初に少額の報酬が得られる場合でも、その後に、『より高額報酬を得るため』や『タスク失敗の連帯責任』などと称して、保証金や手数料といった金銭の振り込みを要求されるケースが発生しています」と説明している(国民生活センター「簡単なタスクで稼げるとうたう副業トラブルに注意!」2026年)。先に金をもらったという事実は、その後の要求を疑わない理由にはならない、と私は見ている。
出口:研修タスクの先払いと、そのあとの沈黙
信用ができたところで、「本採用には研修タスクの完了が必要」として、こちらが先に振り込むよう求められる。消費者庁は別の副業事案について、「実際には消費者が支払った参加費用が返金されることも、提示された高額の報酬が支払われることもありません」と注意を促している(消費者庁「『タスク副業』で報酬が支払われるとうたい、実際には高額を送金させる事業者に関する注意喚起」2025年)。振り込んだあと、担当者からの返信が途絶える、あるいは案内されていたサイト自体につながらなくなる、という相談も見られる。払った時点から先は、こちらが確認できることがほとんどなくなる――それが、この型の一番厄介なところだと思う。
危険信号を並べる
すべてが同じ言葉で来るわけではないが、共通する部品はある。警察庁は、正規の求人サイトに実態の不明な求人が紛れ込む問題について、「応募又は契約時に匿名性の高い通信アプリをインストールするように指示される」「本人だけでなく、家族、友人等の個人情報を執拗に要求される」といった特徴を挙げ、心当たりがあれば「連絡を続けることなく、警察に相談してください」としている(警察庁「正規の求人サイトに掲載されている有害求人情報に注意!!」)。想定されている被害の中身は別の犯罪だが、LINE等への早い誘導や個人情報を執拗に求める姿勢という部品は、今回の型とも重なる、と私は見ている。
数字でほどく
この種の副業トラブルの相談件数と既払額の伸びは、前々号(第450号)で詳しく調べた。ここでは続きだけ触れておく。国民生活センターの集計では、2024年度は7月31日の時点ですでに950件の相談が寄せられている(国民生活センター、前掲)。単純に月割りで計算すると、通年では前年度の3,694件を超えるペースになる。件数だけでなく、増え方そのものが速くなっている、ということだと私は読んでいる。
すでに払ってしまった方へ
先渡し金を受け取り、研修タスクの費用を振り込んだあと連絡が取れなくなった――その状態になったら、まず振込先の金融機関へ連絡してほしい。金融庁は、「振り込め詐欺等の被害にあってしまった場合は、警察と振込先の金融機関に連絡してください」と案内している(金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」)。振り込め詐欺救済法という制度があり、振込先の口座が犯罪に利用されたと金融機関が認めれば、口座の名義人の権利を消滅させたうえで、被害者に分配金が支払われる仕組みになっている。ただし支払いまでは、少なくとも半年以上かかるのが一般的だという。すぐには戻らないという前提で、まずは記録を残し、相談窓口につないでほしい。
申し込み前に確かめておきたいこと
気合いで見抜こうとすると疲れるので、私はいつも「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。次の点を確かめてほしい。
- 担当者から先に振り込まれた報酬があっても、それを信用の証拠にしない
- 「研修」「本採用」を理由に、こちらが先に振り込む場面が出た時点で進めない
- LINEで匿名性の高いアプリへの誘導や、家族・友人の個人情報を執拗に求められたら距離を取る
- 振り込んだあと連絡が途絶えたら、まず振込先の金融機関と警察に連絡する
- 消費者ホットライン「188」、警察相談専用電話「#9110」を控えておく