SNS広告の「スタンプを送るだけ」から、メッセージアプリでの少額報酬受け取りを経て、名目を変え続ける出金前請求につながる型
「いいねを押すだけ」「スタンプを送るだけ」で稼げる、というSNS広告を見かけたという相談を、このところ続けて受けている。今号はこの件を洗いました。共通しているのは、最初の数百円が本当に振り込まれる、という点だ。だからこそ信じてしまう。その先で何が起きるのかを、国民生活センターの資料から数字と型で追ってみたい。(黒)
入口 ── SNS広告の「スタンプを送るだけ」から、メッセージアプリの友だち登録へ
国民生活センターが2024年9月に公表した資料は、この種の勧誘の入口をこう説明している。
「SNS広告等で「"いいね"を押すだけ」「スタンプを送るだけ」「スクリーンショットを撮るだけ」等と簡単なタスクであることを強調して副業へと誘引されます」(独立行政法人国民生活センター、2024年)。
導線も具体的に書かれている。「SNS広告をタップすると、別のウェブページに移動し、当該ウェブページ内のメッセージアプリの友だち追加のバナーをタップし、友だち登録を完了した後、メッセージアプリ内で簡単なタスクに関する説明がなされます」(同資料)。つまり、広告→別ページ→メッセージアプリの友だち登録→タスク説明、という4段階が型として固定されている。一つひとつは軽い操作に見えるが、この段階を踏むごとに、相手のやり取りできる場所(メッセージアプリ内)へ引き込まれていく。私はそこを見ておきたいと思っている。
信用形成 ── 数百円の報酬が、なぜ本当に振り込まれるのか
ここが、この型のいちばんよくできた部分だと思う。同資料はこう続ける。「始めに簡単なタスクをすると数百円程度の報酬を得られることがあり、そのために、今後も報酬を得られるだろうと信用してしまい、相手方から高額な費用負担を求められてもそれ以上の報酬が得られることを期待して金銭を支払ってしまいます」。
つまり最初の数百円は、後から求める金額に比べれば誤差でしかない。ここで実際にお金を払っておけば、次の要求への抵抗が大きく下がる。営業の先行投資と考えれば、筋は通っている。ただ、その筋の通り方こそが危ういと私は見ている。
国民生活センターの統計を見ると、この型に関する相談は近年増えている。同資料によれば、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に寄せられた関連相談は、2020年度の1,341件から2023年度には3,694件まで伸びた。加えて、相談のうちSNSがきっかけとなった割合は2020年度の23.0%から2024年度には70.1%まで上がっている。平均の契約購入金額も、2020年度の27万9,519円から2024年度には105万9,658円へと、およそ4倍近くに膨らんだ。「こうした相談は年々増加しており、特にSNSをきっかけにした割合が高まっています」と資料は記している。相談者は女性が79.9%、平均年齢33.7歳、20歳代が45.3%で最も多い。
請求 ── 名目を変えながら続く「出金前費用」の要求
信用が育ったところで、話は「引き出す」段階に移る。同資料は、この段階で費用を求めてくるパターンを大きく3つに整理している。
- タスクを実行する前に、参加費・登録料などの名目で振り込ませるパターン
- タスクを実行した後、「操作をミスしたので処理費用が必要」などの名目で振り込ませるパターン
- 報酬を引き出す段階になって、「報酬を引き出すためには費用がかかる」という名目で振り込ませるパターン
この3つ目、出金の直前で費用を求める型は、副業に限った話ではない。2022年に国民生活センターが公表した別の資料では、マッチングアプリ発の投資勧誘についてこう書かれている。「出金しようとすると、さまざまな名目で送金を要求され、結局出金できない」(独立行政法人国民生活センター、2022年)。案件の入口が副業でも恋愛でも投資話でも、出口の型はほぼ同じだ。「入りの言葉が同じなら、出口も同じ。」私はそう考えている。
すでにタスクをこなし、費用を払ってしまった方へ
この種の勧誘は、消費者庁が定める「業務提供誘引販売取引」という区分に近い性質を持つ場合がある。「「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと」(消費者庁 特定商取引法ガイド)と説明されている。ただし、目の前の話が実際にこの区分に当てはまるかどうかは、個別の事情によって変わる。私が断定できるところではない。
もし該当するなら、法律上の対抗手段も用意されている。「法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、消費者は業務提供誘引販売業を行う者に対して、書面又は電磁的記録により契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます」(同ガイド)。日数には期限があるので、心当たりのある方は早めに、消費生活センターなど正規の窓口に相談してほしい。
お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。追加の名目を出されても、そこで一度止めてほしい。①これ以上は払わない ②やり取りの記録(画面・振込明細)を残す ③振り込んだ決済元に連絡する ④消費生活センター・警察に相談する。この順番で、まずは止血からでいいと思う。
この記事のまとめ
- 入口は「SNS広告→別ページ→メッセージアプリ友だち登録→簡単なタスク」という型で固定化されている
- 最初の数百円は実際に振り込まれる。それが信用の土台になり、高額請求への抵抗を下げる
- 出金の直前で「登録料」「処理費用」「引き出し手数料」と名目を変えながら追加請求が続く型がある
相談件数もSNSきっかけの割合も、この数年で増えている。数百円の報酬に説明のつかない続きがあれば、そこで一度、持ち帰って調べてほしい。