SNS・マッチングアプリで築いた好意を足がかりに、無登録の海外FX口座へ誘い、出金時に手数料名目の追加入金を重ねさせる型を、警察庁・金融庁の一次情報で調べた
マッチングアプリで知り合い、しばらく他愛のないやり取りが続く。相手は誠実そうで、生活の悩みにも付き合ってくれる。そのうち「実は投資をしていて」という話が出て、勧められるまま海外のFX口座を開く。最初のうちは残高が増えて見える。だが出金しようとした瞬間、「手数料」「税金」名目の追加入金を求められ、払っても払っても出金されない――特定の相手・業者は名指しせず、この「恋愛感情や親近感を足がかりに、無登録の海外FX口座へ誘導し、出金時に名目を変えて追加入金を求める」という型を、お金の流れと制度の側から調べた。
なぜ「恋愛感情」がここまで有効に使われるのか
警察庁はこの手口を「SNS型ロマンス詐欺」と呼び、次のように定義している。「SNSやマッチングアプリなどを通じて出会った者と、実際に直接会うことなくやりとりを続けることで恋愛感情や親近感を抱いてしまい、金銭等をだまし取られてしまう詐欺」出典
直接会わないやり取りが長く続くほど、相手の言葉をそのまま信じやすくなる。そこに投資の話が混ざると、「この人が言うなら」という気持ちが、業者の実態を確かめる作業を後回しにさせる。恋愛感情そのものが悪いのではなく、それを利用して確認の手間を飛ばさせる設計になっている点が、この型の要だと私は見ている。
「海外FX口座」という選択が持つ意味
金融庁は、無登録の海外所在業者について長年こう注意を呼びかけている。「無登録の海外所在業者は、業務の実態等の把握が難しく、仮にトラブルが生じたとしても業者への追及は極めて困難ですので、無登録業者との契約は行わないようにしてください。」出典
つまり、口座の中で数字がどれだけ増えて見えても、その業者が日本の登録を受けていなければ、出金トラブルが起きたときに頼れる公的な追及の手段がほとんどない。海外という距離そのものが、そのまま交渉力の弱さに直結する。
数字でほどく:この型はどのくらい広がっているのか
警察庁が2026年6月に公表した確定値によると、「SNS型投資詐欺の認知件数は9,523件(+3,110件、+48.5%)、被害額は1,288.0億円(+416.9億円、+47.9%)」、「SNS型ロマンス詐欺の認知件数は5,645件(+1,821件、+47.6%)、被害額は546.4億円(+145.5億円、+36.3%)」となっている(前年比)。出典
どちらの類型も件数・被害額とも前年から4割以上増えている。恋愛感情を使う手口と投資勧誘の手口は別々に集計されているが、実際にはこの記事のように両方が重なるケースが少なくない。統計の伸び方を見る限り、「もう出尽くした古い手口」ではなく、いまも広がり続けている型だと考えたほうがいい。
で、その利益の出どころは? 海外の口座に表示される「増えた残高」は、業者側が自由に書き換えられる画面上の数字にすぎない。実際に動いているお金があるとすれば、それは新しく振り込まれる入金と、出金の段になって求められる手数料・税金名目の追加送金だ。運用で増えているように見えて、実際は入金でしか成立していない仕組みではないか――そこを疑うのが最初の一歩になる。
巻き込まれないための、確認の手順
好意を持った相手を疑うのは気力がいる。だからこそ、判断の基準はあらかじめ機械的に決めておくのがいいと思っている。具体的には、次のところで一度立ち止まってほしい。
- 直接会ったことがない相手からの投資の誘いは、それだけで一段慎重になる
- 案件の運用元が金融庁の登録業者一覧に載っているか、名前で検索して確かめる
- 「出金には手数料・税金が必要」と言われた時点で、それ以上の入金は止める
- 口座の残高表示は、出金できて初めて実在すると考える
- 一人で抱え込まず、家族や友人、警察相談専用窓口「#9110」、消費者ホットライン「188」に相談する
この記事のまとめ
- 恋愛感情・親近感は、業者の実態を確かめる手間を飛ばさせるために使われやすい
- 無登録の海外FX口座は、出金トラブルが起きても公的な追及がほとんど及ばない
「手数料を払えば出金できる」と言われた時点で、それはすでに答えが出ている合図だと私は思う。