マッチングアプリ経由の投資勧誘アプリが、登録国と電話番号の国番号がかみ合わないまま出金時に追加送金を求める型を、警察庁・金融庁の一次情報で調べた
今号もマッチングアプリ発の投資勧誘を洗った。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べる。今回、資料を読みながら手が止まったのは「運営会社の名前は出ている」という点だった。会社名も、登録している国も、連絡先の電話番号も、ちゃんと書いてある。ただ、その登録国と、電話番号の国番号が合わない。名乗ってはいるが、名乗った情報同士が食い違う——この一点を軸に、型を追ってみた。
型の流れ ── 接触から出金拒否まで
特定の名称は挙げない。案件ごとにサービス名や運営会社名は違っても、お金の流れと接触の順序を抜き出すと、同じ3段階に収まる。
①接触 ── マッチングアプリやSNSのDMから始まる
入口はマッチングアプリやX・Instagramのダイレクトメッセージが多い。警察庁の資料では、この型の当初接触ツールは「マッチングアプリが全体の32.6%を占め、次いでInstagram(22.6%)、Facebook(18.4%)が多い」とされ、接触手段は「ダイレクトメッセージが全体の91.8%を占める」とある。警察庁「SNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」。しばらくやり取りを重ねて関係を作ってから、投資の話が出てくる。順番が逆になることはまずない。
②運用画面 ── 数字は増えるが、それは表示にすぎない
相手に勧められるまま専用アプリやサイトに入金すると、画面上の残高は日々増えていく。ただ、この数字は運営側が書き込める表示であって、引き出せて初めて利益と言える。国民生活センターは、恋愛感情を持たせたうえで実態のわからない海外投資サイトへ誘導する手口を「①出会い→②勧誘→③投資サイト案内→④送金指示→⑤少額投資で利益提示→⑥高額投資勧誘→⑦出金要求時の追加送金→⑧連絡途絶」という8段階で整理している。国民生活センター「ロマンス投資詐欺が増加しています!」。⑤で少額の出金にだけは一度応じ、信用させてから⑥へ進める設計だ。
③出金 ── 名目を変えながら、追加送金だけが続く
まとまった金額を出金しようとした瞬間に、話が変わる。国民生活センターの相談事例には「出金しようとすると、さまざまな名目で送金を要求され、結局出金できない」とあり、実際には「マネーロンダリングの嫌疑があるため、納入保証金を支払う必要がある」という名目まで登場した例もある(同資料)。金融庁も「出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなることもあります」と注意を出している。金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」。手数料、税金、保証金――名目は変わっても、求められるのは常に追加の送金だけだ。
数字で見る規模
この型の被害は小さくない。令和7年のSNS型ロマンス詐欺は認知件数5,604件・被害総額552.2億円で、前年比37.8%増と警察庁は公表している。年代別では40〜60代の被害が全体の75.5%を占め、暗号資産で送らせる被害は前年比173.3%に伸びた。警察庁・SOS47「令和7年におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」。件数の伸び方を見る限り、入口のパターンが分かっていても被害は減っていない。だからこそ、入口より先の「確かめ方」を持っておく意味があると私は思う。
確かめ方 ── 名乗られた情報を、自分でも照合できる
で、その利益の出どころは?――投資である以上、答えられて当然の問いのはずだが、この型ではまず答えが返ってこない。答えの代わりに、読者自身で照合できる公的な手段がある。まず、日本の居住者を相手に金融商品取引を勧める以上、業者は登録が必要だ。金融庁は「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」と無登録業者のリスクを説明している。金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」。金融庁は無登録で警告書を出した業者の名称も一覧で公表しており、「無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告書の発出を行った者の名称等を掲載しています」としている。金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」。ただし同ページは「掲載されていない者でも、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得ます」とも注記している。載っていないから安全、とは言えない。
この記事のまとめ
- マッチングアプリ・SNSのDM経由で関係を作り、投資アプリの偽の運用画面を見せ、出金時に名目を変えて追加送金を求める型がある
- 運営会社は名乗っていても、登録国と電話番号の国番号が食い違っているなど、自己申告の情報自体に矛盾がないかを確かめられる
- 金融庁の無登録業者リストは「載っていない=安全」の証明にはならない点に注意
その場で決めず、出どころが説明できない話には近づかない。もう入金してしまった方は、これ以上払わないことを先に。
- 登録している国と、書かれている電話番号の国番号が対応しているか確かめる
- 金融庁の無登録業者一覧・登録業者検索で名前を照合する(載っていなくても安全の保証にはならない)
- 出金時に「手数料」「税金」「保証金」等の名目で追加送金を求められたら、そこで止める
- 海外業者とのトラブルは国民生活センター越境消費者センター(CCJ)にも相談窓口がある
- すでに払ってしまった場合は、取り戻すことより先に、これ以上払わないことを優先する
すでに関わってしまった方は、警察相談専用電話「#9110」が全国共通の窓口になる。警察庁「警察相談専用電話#9110」案内。緊急でない相談はこちらへ、消費生活の相談は消費者ホットライン「188」へ。消費者庁「消費者ホットライン」。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。