第279号黒岩検閲済 2026年7月3日 発行(不定期刊/前号:7月3日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|運営元不明・SNS投資勧誘の型

SNSの“キラキラ生活”からDM投資へ——運営元が最後まで不明な勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

高級車、ブランド品、旅先のプール——タイムラインに流れてくる「自由な暮らし」の写真。フォローしていると、ある日DMが届く。「私も昔は普通の会社員でした」「よかったら、やり方を教えます」。今号で扱いたいのは、そのDMを送ってきた特定のアカウントや、名前を出された投資サービスそのものではない。豊かな暮らしの写真で憧れを作り、DMで距離を縮め、最後まで“誰がやっているのか”を明かさないまま金だけを集める——この、運営元を空欄にしたまま進む勧誘の型である。

“憧れの暮らし”という看板と、名乗らない運営者——この型の骨格

入口は一枚の写真だ。札束、時計、海外のホテル。本人の顔は写さず「成功した先輩」の雰囲気だけを見せる。金融庁は、この種のアカウントについて「政府要人や著名人の画像を利用したフェイクニュースを作成し、特定の投資プログラムへの投資を呼び掛けている」手口があると指摘し、SNSの投稿をフォローするとDMが届き、最終的にクローズドチャットへ誘導される流れを記している。写真がどれだけ豪華でも、その暮らしが本物である裏づけは、こちらからは何一つ取れない。

やり取りが進むと、勧められるのはたいてい海外業者風のFXや暗号資産だ。だが会社名を聞いても要領を得ない。所在地も、固定の連絡先も、公式サイトも、最後まで出てこない。金融庁は、こうした勧誘の一部が「無登録の海外FX業者(無登録業者として当局が警告を行っているものを含む)を紹介している」と明記している。看板は「憧れの暮らし」、中身は「名乗らない相手」。この落差そのものが、型の骨格だ。

で、その利益の出どころは?——数字でほどく

DMの先で語られるのは、たいてい「私についてくれば増える」「元本は保証する」「まず少額から」という言葉だ。まず、言い切り方そのものに目を留めてほしい。金融庁は詐欺的な投資勧誘の典型的な誘い文句として「上場確実ですので、必ず儲かります!元本も保証します!」を名指しで例示している。投資に「必ず」も「保証」も本来なじまない。迷いなく言い切れること自体が、正規の枠の外を疑う目印だ。

次に、勧める側の動機を考えてみる。本当に高い確率で増やせる仕組みを持っているなら、その人はなぜ、見ず知らずのあなたにそれを配るのか。黙って自分の金で回し続けるほうが、はるかに儲かるはずである。他人に勧めるという行動そのものが、「その仕組みでは自分の金を張り切れない」ことの裏返しに近い。私はそう見ている。ましてや、名乗りもせずに勧めてくるのなら、なおさらだ。

この型が生む被害は、もう小さな話ではない。警察庁の確定値によれば、令和7年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,523件・被害額は約1,288.0億円にのぼる。当初の接触手段としてはダイレクトメッセージが最も伸びており、入口がDMであること自体は、もはや珍しくない。

お金の流れに出る、3つの目印

写真の豪華さや、やり取りの丁寧さは、いくらでも作れる。だが、相手の素性とお金の通り道には型が出る。私が見るのは次の3点だ。

目印1:運営者の会社名・所在地・連絡先が、最後まで空欄のまま

これがこの型の一番の特徴だ。個人アカウントが相手で、正式な事業者名も、所在地も、固定の連絡先も出てこない。「なぜ名乗らないのか」——それだけで、話は半分ついている。金融庁は無登録業者について「登録を受けていない『無登録業者』は、投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」と注意を促している。誰がやっているかを確かめられない相手に金を預けるのは、態勢のない場所に金を置くのと同じだ。加えて振込先が個人名義の口座なら、そこで結論はほぼ出る。消費者庁は「投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺です」と明言している。

目印2:公開の投稿で釣り、本番は閉じたDM・グループに移る

キラキラした写真は不特定多数に見せるのに、肝心の勧誘は一対一のDMや、限られた人だけのチャットグループの中で進む。公開の場で比較させず、第三者に相談させないために、話を閉じた場所へ移す。前掲の金融庁資料も、フォロー後にDMが届き、最終的にクローズドチャットへ誘導される流れを手口として挙げている。「憧れの投稿から入ったのに、気づけば個人のDMだけで話が進んでいる」と感じたら、その導線自体が目印だ。

目印3:最初は出金でき、大きく出そうとした瞬間に止まる

この型の出口には、共通のふるまいがある。少額なら出金でき、成功体験を持たせる。ところが、まとまった額を引き出そうとすると理由をつけて止められる。金融庁の資料も「最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られ、その後出金できなくなる」と記す。国民生活センターにも「投資名目で振込をしたものの、『追加費用を支払わないと出金できないと言われた』『相手と連絡が取れなくなった』などといった被害が発生しています」という相談が寄せられている。名乗らない相手ほど、いざとなれば連絡ごと消せる。そこまで含めて、一つの型だ。

「出金の手前」で追加を求められたら、いったん止まる 国民生活センターの相談事例では、運用画面上は6,000万円の利益が出ているとされ、いざ引き出そうとすると出金手数料900万円と税金1,300万円を先に払わなければ出金できないと言われた、という被害が記録されている。SNSをきっかけに著名人を名乗る・つながりがあるなどと勧誘される金融商品トラブルの相談は、2021年度52件、2022年度170件、2023年度1,629件と2年で約9.6倍に増えた。同センターは「いったん振込してしまうと、被害回復が困難です」と釘を刺している。看板の見せ方は変わっても、名乗らない相手が個人の口座へ流し込む道筋は、ほとんど変わっていない。

立ち止まる手順と、すでに払ってしまった方へ

予防の側は、難しいことをしなくていい。見せられた「暮らし」ではなく、勧誘している「相手が誰か」を見る。それだけで大半は判別できる。

  • 相手の正式な事業者名・所在地・連絡先を確かめる。答えられない、はぐらかすなら、それ自体が答え
  • 勧誘してきた相手が日本の登録を受けた事業者かを調べる。名前が出てこないなら金を入れない
  • 話が個人のDMや限定グループに移ったら、そこで一拍おく。その場で入金を決めない
  • 振込先が個人名義の口座、あるいは暗号資産での送金を求められたら、その時点で降りる

他人の資金を運用・助言する商売には登録が要り、金融庁は「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です」としている。相手が正規の業者かは無登録業者の名称一覧や登録業者の検索で照らせる。写真の暮らしぶりと、事業者としての登録の有無は、まったく別の話だ。

すでにお金を入れてしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「手数料を払えば出金できる」「税金を払えば戻る」は、追加で取るための言葉だと考えてほしい。順序はこうなる。①追加で払わない ②DM・やり取りの画面・振込記録を残す ③カード会社や銀行など決済元にすぐ連絡する ④消費者ホットライン「188」、警察相談専用電話「#9110」、または金融庁の詐欺的な投資に関する相談ダイヤルに相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。

迷ったとき用の一言 「あなたは、どこの誰ですか」。この一問に、正式な事業者名と連絡先で答えが返ってこないなら、それはそれで答えだと思う。本当にまっとうな相手なら、名乗らない理由のほうが説明できない。

この記事のまとめ

  • 豪華な暮らしの写真で憧れを作り、DMで距離を縮め、運営者情報を空欄にしたまま金を集めるのがこの型の骨格
  • 運営元の不在・閉じたDMへの移動・出金しようとした瞬間の停止が、お金の流れに出る3つの目印

確かめる相手は、投稿の中の暮らしではない。勧誘してきた相手が誰で、登録を受けた事業者かどうかだ。迷えば188へ。それが一番確かだ。