SNSで羽振りのいい暮らしを見せてDM・LINEへ誘い、海外の「AI運用ファンド」を騙る無登録業者につなげる型を、金融庁・警察庁の一次情報で調べた
高級車、札束、海外のリゾートホテル――そんな写真をSNSに並べたうえで、興味を持った相手にだけDMで個別に近づいてくるアカウントがある。時間をかけてやり取りを重ね、頃合いを見てLINEへ移り、案件の中身を明かす。運用元は海外に登記された「AIファンド」で、しかも「第一種金融商品取引業」を名乗っているという。特定の発信者・案件は名指しせず、この「SNSで羽振りの良さを演出→DM・LINEへ誘導→海外AI運用ファンドを騙る無登録業者につなげる」という型を、肩書きの中身とお金の流れの側から調べた。
なぜ「海外の法人」「AIファンド」という組み合わせが選ばれるのか
海外に登記された法人という設定は、それだけで調べる手間を一段重くする。登記情報を確認しようにも、言語も制度も違えば、専門でない人がその場で照合するのは難しい。そこに「AI」という言葉が重なると、運用の中身が見えないことも、いかにも先端的な技術ゆえ、という説明にすり替わってしまう。私はそう見ている。
遠い場所・見えない技術・聞き慣れない専門用語――この三つが揃うと、疑問を持つこと自体を諦めさせる効果がある。ただ、調べにくいことと、健全であることは、まったく別の話だ。
「金融商品取引業」を名乗ること自体が持つ意味
運用元が「第一種金融商品取引業」を名乗っていたとしても、それだけで信じていい理由にはならない。財務省の地方財務局は、こう注意を呼びかけている。「金融商品取引業者でない者は、『金融商品取引業者』という商号若しくは名称又はこれに紛らわしい商号若しくは名称を使用してはならないこととなっております。」出典
つまり、登録のない者が「金融商品取引業者」を名乗ること自体、すでに一線を越えている可能性がある。肩書きの立派さと、登録の有無は、別の軸で確かめる必要がある。
数字でほどく:出金できなくなるという型は、どのくらい広がっているのか
「無登録業者」が最終的にどうなりやすいか、金融庁はこう説明している。「登録を受けていない『無登録業者』は、投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高いと考えられます。」出典
続けて、こう注意を促している。「預けた資金を出金しようとしたときに、これまで出金ができていたにもかかわらず、出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるなどといったトラブルに遭ったという声が多く寄せられています。」出典
国民生活センターも、SNSを起点にした同種の相談が急増していると報告している。「SNSをきっかけとして、著名人を名乗ったり、つながりを示したりして投資を勧誘されたという消費者トラブルが急増しています。(中略)投資名目で振込をしたものの、『追加費用を支払わないと出金できないと言われた』『相手と連絡が取れなくなった』などといった被害が発生しています。」出典
警察庁の統計でも、SNSを起点にした投資詐欺は減っていない。「SNS型投資詐欺 認知件数9,523件(+3,110件、+48.5%) 被害額1,288.0億円(+416.9億円、+47.9%)」(令和7年確定値、前年比)出典
で、その利益の出どころは? 海外の運用会社を名乗るだけなら、費用はほとんどかからない。それでも「増えている」と見せ続けられるとすれば、どこかに新しく入ってくる資金があるか、指定された送金先に手数料が発生しているか。仕組みを説明できない「儲かっている」という言葉には、まずこの疑問を当ててみたい。
巻き込まれないための、確認の手順
気合いで見抜こうとすると疲れる。だから私は、写真の華やかさと、業者の登録の有無を、最初から別の引き出しに分けてしまうことを勧めている。具体的には、次のところで一度止まってほしい。
- SNSの写真や「AI運用」という言葉の説得力と、金融商品取引業の登録の有無は別の軸で確かめる
- 名乗っている肩書き(「第一種金融商品取引業」等)を、金融庁の登録業者一覧で照合する
- 海外の法人名・住所・ライセンス情報は、それ単体では日本での適法性を示さないと理解しておく
- 出金の遅れや連絡の途絶えが一度でもあれば、それ以上の追加入金は止める
- 困ったときはひとりで抱えず、消費者ホットライン「188」に相談する
この記事のまとめ
- 海外法人・AI運用という組み合わせは、調べにくさそのものが説得力に変わりやすい
- 「金融商品取引業」を名乗ること自体、無登録なら一線を越えている可能性がある
華やかな写真も、専門的な肩書きも、それ自体は登録の有無を証明しない。確かめるべきは、いつも同じところにあると私は思う。