名前を変えて現れる海外無登録CFD業者への勧誘の型を、金融庁・国民生活センターの一次情報で調べた
広告の見た目もサービス名も違うのに、リンクをたどっていくと申込み先が同じ会社だった——という相談を、この数か月でいくつか見た。名前を変えれば、また新しい人が入口で警戒せずに入ってくる。特定のサービス名を名指しで「詐欺だ」と言うつもりはない。私が調べたいのは、名前を伏せても残るこの“型”を、お金の流れと登録の有無という一次情報の側から見るとどうなるか、という一点だ。
この勧誘は、どう動くのか
入口はSNSの広告やダイレクトメッセージであることが多い。金融庁は、詐欺的な投資勧誘の典型として「知り合いからの紹介やSNS等を通じて、暗号資産やコモディティ等で運用すると必ず儲かるとうたう高利回りな投資話に勧誘され」る例を挙げている(詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!(金融庁))。実際に確かめてみると、入り口の広告や紹介ページは複数あっても、最終的に口座を開いて入金する先の会社は同じ、というケースがある。運営側からすれば、看板を替えるだけで新しい入口をいくつも持てる。入口が違えば、こちらの警戒も一からやり直しになる——そこを突いてくる型だと私は見ている。
高レバレッジという「お得感」の作り方
個人向けの店頭FX・CFD取引(現物を保有せず、価格の上がり下がりの差額だけをやり取りする仕組み)は、国内の登録業者であれば投資家保護のためにレバレッジ(借りた資金を上乗せして取引量を増やし、勝っても負けても値動きの影響を大きくする仕組み)に上限が設けられている。ところが海外の無登録業者は、その規制の外にあることを逆手に取り、国内では認められない水準の高い倍率や「手数料実質無料」といった訴求を前面に出しやすい。うまい話ほど、まず「なぜ国内の登録業者はそこまでやらないのか」を考えてみてほしい。答えは、たいてい規制の中にある。
「無登録」は、何を意味するのか
金融庁は、日本の居住者を相手に金融商品取引行為を業として行う場合は、業者の所在地が海外であっても日本での登録が必要だと明示している。「業者の所在地が海外であっても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引行為を業として行う場合は、日本で金融商品取引業の登録が必要」(詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!(金融庁))。この登録を受けずに勧誘・広告を行っている業者について、金融庁は把握できた分の名称を公表している。「無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告書の発出を行った者の名称等を掲載しています」(無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(金融庁))。ただし、このリストは金融庁がその時点で把握できた業者に限られる。名前が載っていないからといって、無登録ではないと確認できたことにはならない——この留保は、リストを使うときにいつも頭に置いておきたい。
出金の段になって、何が起きるか
入金しているうちは、たいてい問題は起きない。数字が増えて見えることさえある。話が変わるのは、まとまった額を引き出そうとしたときだ。国民生活センターは、SNS上の投資グループを経由したFX取引の相談事例として、出金時に「海外取引税として約160万円を振り込まないと出金できない」と言われた例を記録している(SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル(国民生活センター))。国民生活センター・越境消費者センターも、海外事業者を相手にした投資トラブルについて「出資した後に出金しようとすると、手数料等さまざまな名目で追加の支払いを求められ、結局出金できなくなります」と注意を促している(海外事業者との投資トラブルに関する相談(国民生活センター・CCJ))。払っても、次の名目が出てくる。この繰り返しになりやすい、という点は覚えておいてほしい。
なぜ「取り戻す」が難しくなるのか
消費者庁は、無登録の海外FX業者との取引について「海外所在の無登録業者は、業務の実態等の把握が難しく、仮にトラブルが生じたとしても、業者への追及は極めて困難です」としている(無登録業者との外国為替証拠金取引(FX)にご注意ください!(消費者庁))。国民生活センター・越境消費者センターも、海外FX取引に関する相談で同様に、事業者の実体確認が難しくトラブル解決が困難になりやすい点を指摘している(海外FX取引に関する相談(国民生活センター・CCJ))。日本の消費者保護の枠組みが及びにくい相手だから、というのが実務上の理由だ。「あとで取り戻せばいい」という前提そのものが、この型には通用しにくいと考えておいたほうがいい。
数字で見る、相談の増え方
SNSをきっかけにした投資勧誘の消費者トラブルは、件数そのものが増えている。国民生活センターの集計では、この種の相談は2021年度52件、2022年度170件、2023年度1,629件、2024年度は4月30日時点で84件と推移し、2022年度比で約9.6倍に急増したと公表されている(SNSをきっかけとした投資勧誘トラブルの急増(国民生活センター))。入口の広告や紹介の形は少しずつ変わっても、SNS発・海外業者絡みという骨格自体は増え続けている、と読んでいいと思う。
- 広告の名前ではなく、口座開設・入金の同意画面に出てくる運営会社名を控える
- その会社名を金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者」リストで検索してみる(未掲載でも安心材料にはしない)
- 「手数料無料」「高レバレッジ」がなぜ可能なのか、自分で説明できるか確かめる
- 出金の条件・手数料の記載を、入金前に読んでおく
- 「今だけ」「限定」に急かされたら、その場で決めない
この記事のまとめ
- 広告の見た目や名前が違っても、申込み先の会社が同じという型がある
- 海外の無登録業者は、トラブル時の追及・解決が極めて困難とされている(消費者庁・国民生活センター)
- 出金の段になって、手数料等の名目で追加の支払いを求められる相談が公的機関に多数寄せられている
対策は結局のところ、入金前に運営会社名と登録の有無を確かめる・その場で決めない、この2つに尽きる。すでに入金してしまった場合は、追加の支払いをまず止め、消費者ホットライン「188」や警察相談専用電話「#9110」、金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)など正規窓口に相談してほしい。