「出金には税金が必要」と追加費用を重ねて請求する投資勧誘の型を、お金の流れで調べた
「アプリの画面では利益が出ているのに、出金しようとすると、今度は税金がかかると言われた」――入口の話はそれぞれ違うのに、つまずく場所がここで重なる相談がある。特定の業者やサービスは名指ししない。私が調べたいのは、この“出金しようとした瞬間に、出金のためと称してさらにお金を払わされる”型を、語られる説明ではなくお金の流れの側から見るとどうなるか、という一点だ。結論を先に置くと、ここで追加で払うお金は、たいてい戻らない。
なぜ「出金するために、もっと払う」という話になるのか
流れはおおむね決まっている。最初に支援型クラウドファンディングや高利回りの運用をうたって、高額の初期投資を入れさせる。しばらくは画面上で資産が増えていくように見える。そして、いざ出金を申し込んだところで、「税金」「手数料」「保証金」といった名目の追加費用を求められる。国民生活センターは、この構図を端的に記録している――出金のための税金・手数料・保証金などと称して金銭を要求され、応じてしまう(2022年)。出金のためにまた払う。その時点で、お金の向きが一方通行になっていることに気づきにくいのが、この型の厄介なところだ。
入口は「支援型クラウドファンディング」や「高利回り運用」
最初の声かけでよく使われるのが、確実さを連想させる言葉だ。金融庁は注意喚起の中で、勧誘の典型例として「必ず儲かります! 元本も保証します!」といった文句を挙げている(2026年)。そして、相手が海外の事業者をうたっていても話は変わらない。同庁は所在地が海外であっても、日本の居住者を相手に金融商品取引行為を業として行う場合は日本での登録が必要だとしている。登録の有無は、金融庁が公表する無登録業者の名称一覧で読者自身が照合できる。で、その利益の出どころは?――入口の言葉ではなく、ここをまず確かめたい。
画面の数字は、出金できて初めて「本物」になる
含み益が日々増えていく表示は、見ていて気持ちのいいものだ。けれど、その数字は事業者側が見せている画面であって、こちらからは裏が取れない。金融庁は無登録業者との取引のリスクとして、これまで出金ができていたにもかかわらず、出金の拒否や法外な出金手数料を請求される例を挙げている(2023年・2024年更新)。つまり、一度や二度の少額出金ができたことは、安全の証明にはならない。資産は、自分の口座に現金として戻って初めて自分のものだと考えておいたほうがいい。
「あと一回払えば戻る」が止まらない理由
追加の請求は、たいてい一度では終わらない。税金を払えば次は保証金、保証金を払えば次は手数料、というように名目を変えて続く。国民生活センターは、ロマンス投資詐欺の事例としてファンドの評価額が上がったことを理由に、税金がかかると言われ、無断で振込をされたケースを報告している(2022年)。すでに大きな額を入れていると、「ここでやめたら今までのお金が無駄になる」という気持ちが働いて、止まりにくくなる。その心理に乗って、もう一回、もう一回と重ねさせるのが、この型のかたちだ。
数字で見ると、「戻ってくる前提」のほうが崩れている
規模も小さくない。警察庁の暫定値によると、SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は1,274.7億円に上る(令和7年・2026年発表)。そして、いったん相手に渡したお金を取り戻すのは容易ではない。クラウドファンディングの枠組みでも、国民生活センターは成立後のトラブルは原則として当事者間で解決することが求められると説明している。つまり「出金できないなら、追加費用を払って取り返す」という発想は、回収の見込みがほとんどない側に賭けていることになる。
もし「出金のために払って」と言われたら(初動)
大事なのは、追加で払う前に手を止めることだ。一度振り込むと取り戻しは難しくなるので、判断を急がせる声には乗らない。確かめる順番はこうだ。
- 相手が無登録業者の一覧に載っていないか、名称で照合する
- 「出金のための税金・保証金・手数料」を別途振り込むよう求められていないか確認する
- 少額出金ができた実績を「安全の証明」と受け取っていないか、いったん疑う
- 振込先の名義が、契約相手の会社名と一致しているかを見る
相談先は無料で用意されている。消費生活全般のことなら消費者ホットライン188(局番なし)。金融商品や無登録業者のトラブルなら、金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811/平日10時00分〜17時00分)。被害かもしれないと感じたら、警察の警察相談専用電話#9110もある。一人で抱えず、外の目を一度通すことをすすめたい。
この記事のまとめ
- 「高額の初期投資 → 画面上は利益 → 出金時に税金・保証金・手数料を追加請求」が型の流れ
- 自分の資産を引き出すのに、追加で払う理屈はない。求められた時点が赤信号
確かめるのは画面の数字ではなく、登録の有無・振込先の名義・「出金のための追加費用」が出ていないか。迷ったら、払う前に消費者ホットライン188へ。