SNS広告からLINEへ誘導され暗号資産投資で出金不能になる勧誘の型を、お金の流れで調べた
X・Instagram・ThreadsといったSNSで「儲け話」を見かけ、興味本位でLINE公式アカウントに登録する。そこから始まるのは商品の説明ではなく、世間話による信頼づくりだ。やがて暗号資産(仮想通貨)への投資を勧められ、日本円を仮想通貨に換えて指定のアドレスへ送金する。最初は少額の「利益」が画面に表示され、追加の投資を促される――そして出金しようとした段階で、初めて「手数料」「税金」名目の追加支払いを求められる。特定の業者・案件は名指しせず、この“SNS→LINE誘導→暗号資産送金→出金不能”の型を、お金の流れの側から調べた。
SNSのDMからLINEへ。最初の一歩は「投資の説明」ではない
警察庁はこの手口を「SNS型投資詐欺」と定義し、「SNS等を通じて対面することなく、交信を重ねるなどして関係を深めて信用させ、投資金名目やその利益の出金手数料名目で金銭等をだまし取る詐欺」と整理している。最初の段階で起きているのは投資の説明ではなく、関係を深めて信用させる作業だという点が重要だ。
警察庁が公表した最新の統計でも、SNSからの接触経路としてInstagramが目立つ。同庁の資料は「フォローすると、DM(ダイレクトメッセージ)が届き、LINE等に誘導され、株投資や暗号資産投資の名目で金銭をだまし取られる」という経路を図解しており、SNSでの最初の接触からLINEへ移されるところまでが、すでに手口の一部として組み込まれている。
少額の「成功体験」が、追加投資への入り口になる
LINEで関係ができたあと案内されるのは、暗号資産を使った投資だ。日本円を仮想通貨に換金し、指定されたウォレットアドレスへ送金する。ここで多くの型に共通するのが、最初に少額の「利益」を実際に見せる、あるいは口座へ振り込む段取りだ。警察庁の解説ページは「初期段階で偽の利益を掲載し、その一部(少額)を被害者口座へ振込」という流れがあると整理している。
少額でも実際に手元に戻ってくると、「ここまでは本物だった」という感覚が生まれ、次の追加投資への抵抗が下がる。だが、ここで動いた小さな金額は、その後に求められる本体の送金額に比べればごくわずかだ。表示される利益が増えるほど追加投資の金額も大きくなっていく構図そのものを、まず疑ってほしい。
出金しようとした瞬間に現れる「手数料」「税金」
暗号資産投資の型で最も被害が固定化しやすいのが、出金の場面だ。利益が出ているように見える画面のまま、まとまった額を出金しようとすると、追加の支払いを求められる。警察庁は「『監督当局によって資金が差し止めされている。』などと言われて出金できなくなった」「『保証金が必要です』『この手続きには税金として●%の額がかかります』などと言われ」る事例を挙げている。
金融庁も同様の整理をしており、「出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなることもあります」と注意喚起している。警察庁・金融庁という発表元の異なる2つの公的機関が、ほぼ同じ手口を独立に指摘している点は重い。一度送った暗号資産は、銀行振込のように後から止めることが難しい。「手数料を払えば出金できる」という言葉は、出金させない側の理屈にすぎない。
運営者情報が「不明」のまま、登録の有無を確かめる方法がある
この型の業者は、運営会社名・住所・電話番号・メールアドレスが利用者に開示されないまま投資が進むことが多い。暗号資産の取引や金融商品の取引を国内で適法に営むには、金融庁の登録が必要だ。金融庁は「無登録の海外所在業者による勧誘では、預けた資金を出金しようとしたときに出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりする」と注意を呼びかけている。
登録の有無は利用者側からも確認できる。金融庁は金融事業者一括検索機能を提供しており、名称や電話番号を入力するだけで登録業者かどうかを調べられる。送金の前に、相手の名称をこの検索にかけてみる。それだけで、運営の実態を確かめる最初の一歩になる。
件数も被害額も、年を追って増えている
この型がどれほど広がっているかは、統計にも表れている。警察庁の確定値資料によれば、令和7年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,523件、被害額1,288.0億円(前年比+47.9%)に達している。SNS型のロマンス詐欺と合算すると、認知件数15,168件・被害額1,834.3億円(前年比+44.2%)にまで膨らむ。一件あたりの被害額が大きく、件数・被害額ともに前年から大きく増えている点は、この型が一部の特殊な事例ではなく、繰り返し起きている構図であることを示している。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
身構えすぎなくていい。次の4つを、いつものクセにしておけば足りる。
- SNSの「儲け話」からLINEへ誘導された時点で、一度距離を取って考える
- 少額の「利益」や振込は、追加投資を誘うための入口かもしれないと疑う
- 送金前に、相手の名称を金融庁の金融事業者一括検索機能で確認する
- 出金時に「手数料」「税金」名目の追加支払いを求められたら、それ以上は一切払わない
この記事のまとめ
- SNSの「儲け話」からLINEへ誘導され信頼関係を築いたうえで暗号資産投資を勧められる型は、警察庁・金融庁が共通して注意喚起している
- 出金時に「手数料」「税金」名目の追加支払いを求められたら、それ以上は払わない。送金前に金融庁の登録業者検索を確認する
確かめるのは表示された利益の数字ではなく、実際に出金できるかどうかと、相手が登録業者かどうか。迷えば消費者ホットライン188へ。