「スマホ1台・在庫リスクなし」を謳う転売ビジネスの勧誘が、LINE登録の先で価格を伏せたまま有料サポート契約へ進み、実績も確かめられないまま費用が膨らむ型を、消費者庁・国民生活センターの一次情報で調べた
スマートフォン一台で、在庫を抱えるリスクもなく、利益が確定した商品を右から左に流すだけ——そう説明される転売の勧誘を見かけることがある。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで繰り返し現れるこの型を、消費者庁・国民生活センターの一次情報とお金の流れで調べた。
型を、お金の流れで分解する
個別の事業者名は伏せる。だが、寄せられた相談を並べてみると、流れはおおむね同じ順序をたどる。順を追って見ていく。
入口:「在庫リスクなし」「利益確定」という言葉
広告やSNSの投稿には、「スマホ一台で完結」「リサーチ不要」「利益が確定した商品を卸すだけ」といった言葉が並ぶ。消費者庁が2021年に公表した注意喚起には、「在庫を抱えることなく仕入価格と販売価格の差額で稼ぐ無在庫での転売ビジネスのノウハウを提供するなどとうたい、多額の金銭を消費者に支払わせる事業者に関する相談が、各地の消費生活センター等に数多く寄せられています」とある(消費者庁「無在庫での転売ビジネスのノウハウを提供するなどとうたい,多額の金銭を支払わせる事業者に関する注意喚起」2021年)。「リスクがない」という説明ほど、まず仕組みを疑ってみたい、というのが私の見方だ。
中継点:LINE登録と、中身のないマニュアル
興味を持つと、LINEの友だち登録へ案内される。同じ注意喚起には、案内された先のマニュアルについて「売れ筋の商品を探すための具体的なノウハウは何も表示されておらず、売れ筋の商品の紹介を受けるためには、『有料サポート』に加入する必要がある旨が説明されています」との記述がある(消費者庁、前掲)。無料または安価な入口の先に、具体的な中身のないまま次の費用が待っている——これが型の骨格だと私は見ている。
出口:価格を伏せたまま進む有料サポート
LINEでのやり取りの中では、サポート費用の総額がなかなか示されない。だが、通信販売の広告には、対価を事前に明示する義務がある。特定商取引法は、販売業者に対し「商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価」を広告に表示するよう定めている(消費者庁「特定商取引に関する法律」第11条・特定商取引法ガイド)。費用の総額をその場で示さない対応そのものが、確かめられる一点だ。
出口の先:確かめようのない「実績」
誘引の場面では、成功者の実績や体験談が示されることがある。だが、その実績を読者の側で確かめる手段はほとんどない。根拠を示せないまま実績を優良に見せる表示は、景品表示法が定める優良誤認表示(第5条第1号)に触れうる、という一般論がある(法務省「日本法令外国語訳データベースシステム」不当景品類及び不当表示防止法第5条)。個別の案件がこれに当たるかどうかを、私が判定することはできない。ただ、確かめられない実績は、実績として数えないでおきたい。
広告であることを隠したまま、体験談のような形で発信される情報にも注意したい。消費者庁は「広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことがいわゆる『ステルスマーケティング』です」として、2023年10月から景品表示法違反となる旨を周知している(消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」2023年)。誰の発信か分からない「成功者の声」は、まずその一点を確かめたい。
数字でほどく
副業をめぐる相談は、この型に限らず増えている。国民生活センターによれば、簡単に高額収入を得られるとうたう副業・投資に関する相談件数は、2013年度の872件から2017年度には6,593件まで増えた(国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」2018年)。割り算をすると、約7.6倍という計算になる。案件の名前や広告の見た目は年々変わっても、入口の言葉と出口の構造は同じ型に収まる、と私は見ている。
契約前に確かめておきたいこと
気合いで見抜こうとすると疲れるので、私はいつも「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。次の点を確かめてほしい。
- 「在庫リスクなし」「利益確定」という言葉が、価格の説明を後回しにしていないか確認する
- LINEの友だち登録を求められた時点で、次に何を求められるか一拍おいて考える
- 有料サポートに進む前に、費用の総額を書面かテキストで示してもらう
- 紹介された「成功者」の実績を、自分の手で確かめる方法があるか考える
- 少額の入口費用の先に、追加費用が用意されていないか、契約前に尋ねる
この記事のまとめ
- 「在庫リスクなし・利益確定」を謳う転売ビジネスが、LINE登録を経て価格を伏せたまま有料サポート契約へ進む型がある
- 特定商取引法は広告主に対価の事前明示を義務づけており、示されない時点で立ち止まる材料になる
- 確かめようのない実績・体験談は、景品表示法の優良誤認表示に触れうる。判断は正規窓口へ
対策は、価格が示されない場面で止まる・実績を自分で確かめる、この2つに尽きる。すでに費用を払ってしまった場合は、まず追加の支払いを止め、やり取りの記録を残したうえで、支払った決済元(クレジットカード会社・銀行)に確認し、消費者ホットライン「188」や最寄りの消費生活センターに相談してほしい。