「メルカリ物販で月◯万円」から高額スクールへ——“無在庫転売”の型を、お金の流れと規約で確かめる
「メルカリ物販で月◯万円」という入口の言葉を、最近またよく見かける。スマホひとつで、在庫も持たず、初心者でも——という売り文句だ。今号はこの件を洗いました。個別の業者名は名指ししない。私が見ているのは、案件ごとに名前を変えながら繰り返し出てくる「型」のほうである。入口は気軽な物販に見せて、出口で高額なスクールに着地する。その流れを、お金の出どころと規約と、他人の写真の扱い、という3点から淡々とほどいていきたい。
入口は「物販」、出口は「スクール」という二段構え
この型は、最初の広告と最終的に売られるものが、たいてい一致しない。入口では「メルカリで稼ぐ」と気軽に見せておいて、面談やチャットに進むと、そこで初めて高額な物販スクールが出てくる。しかもスクールの中身は、メルカリではなく別のプラットフォームでの「無在庫転売」だった、という入れ替わりが起きやすい。つまり広告で見た景色と、最後に渡される請求書は、別物になりがちだ。
消費者庁も、令和7年6月の注意喚起で、SNSの副業広告から「月50万が当たり前になる」などと勧誘され、高額なサポートプランを契約したが報酬が得られなかったという相談が各地の消費生活センターに数多く寄せられていると公表している。入口の数字と、出口の契約。両者がずれていないか——まずそこを見てほしい。
で、その利益の出どころは?
ここが一番大事なところだ。「物販で稼げる」と言いながら、その業者の収益は、本当に物販から出ているのか。それとも、参加者が払うスクール費から出ているのか。配当や利益の話と同じで、お金がどこから湧いているのかを一度たどってみたい。
仕入れの先払いがいらない「無在庫」を売りにする以上、参加者側に大きな初期費用は本来かからないはずだ。にもかかわらず、数十万円のスクール費が先に出ていく。だとすると、その業者にとって一番確実な売上は、商品が売れることではなく、スクールの席が売れることになる。実際、消費者庁が令和3年に出した無在庫転売をめぐる注意喚起では、「80万円のサポートコースなら月に80万円稼げる」などと勧誘していた事業者の例が示されている。要するに、稼げる根拠として語られる数字が、そのまま参加費の金額に化けている構図だ。
「規約で禁止」を、当事者ではなく運営元の言葉で確かめる
無在庫転売は、在庫を持たずに先に出品し、注文が入ってから他のサイトで仕入れて発送する。仕組みとしては成立しうるが、問題はそれを「どこで」やるかだ。多くの大手プラットフォームは、こうした無在庫の転売を規約で認めていない。消費者庁も先の注意喚起の中で、大手通販サイトの規約では無在庫での転売は禁止されており、アカウント停止などの措置がとられることもあると明記している。
つまり、せっかくスクール費を払って手法を身につけても、その手法自体が出品先の規約に触れていれば、アカウントは止まる。止まれば、稼ぐ場所そのものが消える。スクールを勧める側がどれだけ「大丈夫」と言っても、それは当事者の言葉にすぎない。判断材料は、勧める人ではなく、出品先の運営が出している規約のほうで確かめてほしい。
他人の商品写真を「借りる」と、別のリスクが乗る
無在庫だと、手元に商品がない。商品がなければ、出品用の写真も撮れない。そこで、よその出品ページにある写真をそのまま使う、というやり方が紹介されることがある。これは便利に見えて、他人が撮った写真を許可なく使う行為であり、著作権の問題に踏み込む。手法として教わったことが、いつのまにか権利侵害になっている、という落とし穴だ。
稼ぐ技術として渡されたものが、実は誰かの権利を踏んでいないか。これも「で、その出どころは?」と同じ問いだと思う。写真の出どころ、手法の根拠、稼ぎの源泉——どれも、渡された言葉を鵜呑みにせず、一拍おいて確かめたい部分である。
もし契約してしまったら:20日と、188
すでに高額なスクールを契約してしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。追加の教材やコース変更を勧められても、そこで止めてほしい。
こうした「仕事を提供するので収入が得られる」と誘って金銭負担を負わせる取引は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」にあたることがある。その場合、法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、書面または電磁的記録で契約を解除(クーリング・オフ)できると消費者庁は説明している。事実と違う説明でクーリング・オフを妨げられた場合は、20日を過ぎても解除できる、とも書かれている。なお、消費者庁の事例集には、ドロップシッピングの契約で598,000円を振り込んだが1か月経っても収入はゼロだったという例も載っている。順序はこうなる。
- 追加で払わない(コース変更・追加教材の勧めは、そこで一度止める)
- やり取りの記録を残す(広告・チャット・契約書面・振込明細)
- 受け取った契約書面の日付を確認し、クーリング・オフの20日を数える
- 消費者ホットライン「188(局番なし)」で、最寄りの消費生活センターに相談する
この記事のまとめ
- 入口は「物販で月◯万」、出口は「高額スクール」——広告と最終契約がずれていないかを先に見る
- 無在庫転売は出品先の規約で禁止されていることが多く、アカウント停止で稼ぐ場所ごと消える
結局のところ、稼げる根拠・出品先の規約・写真の出どころを、勧める人の言葉ではなく一次情報で確かめる。契約してしまったら、追加で払わない・記録を残す・20日を数える・188へ。この順で十分だ。