第132号黒岩検閲済 2026年6月15日 発行(不定期刊/前号:6月15日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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「無料の個別相談」から始まる高額講座の勧誘——相手は誰で、いくらで、返せるのかを先に確かめる

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黒岩警戒度

「無料の個別相談」「無料診断」という入口がある。広告では費用の話がほとんど出てこない。けれど面談まで進むと、そこで初めて講座やサポートの金額を示される——という型の相談を、最近よく見かける。今号はこの「無料から始まる」流れを、お金の出どころと、相手の素性という二つの角度から洗ってみた。

なぜ「無料」から入るのか

はじめに大きな金額を見せると、人は身構える。だから入口は無料にして、まず相談の席に着かせる。席に着いた人だけを次へ通す——たぶんこの順番が効率的なのだと思う。マニュアルがあるのだろう。問題は、入口が無料であることそのものではない。無料なのは入口だけで、その先の金額が、面談に進むまで分からないという点である。

国民生活センターは、副業に関するトラブル相談が増えていると注意を促している。同センターによれば、副業の相談1件あたりの平均契約購入金額は、2020年末の約28万円から、2024年7月末時点で約106万円(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!」2024年9月4日)まで上がっている。SNSをきっかけにした割合も、同じ集計で2020年末の23%から70.1%へと変わった。入口の言葉は軽くなり、出口で動く金額は重くなっている、という形である。

この型でつまずきやすい三点

一.金額を、面談の場で初めて知らされる

広告やLP(誘導先のページ)に、講座の値段が書かれていないことがある。書いていないから比べようがない。比べられないまま、相談の席で「あなたには本気のプランを」と背中を押される。冷静に並べられると都合が悪いので、その場で決めさせたい——という流れに見える。

二.「無料」と「高額契約」が地続きになっている

消費者庁は2025年6月、簡単な副業をうたって高額なサポートプランを契約させる事業者について注意喚起を出している(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」2025年6月26日、消費者安全法第38条に基づく公表)。「初心者でも簡単に稼げる」「儲けが出なければ返金保証がある」といった言葉のあとに高額契約が続き、報酬が得られなかった、という相談が各地の消費生活センターに数多く寄せられている、という内容だ。無料セミナーや無料相談から高額契約へつながる流れは、副業に限らず就活サポートの分野でも報告されている(国民生活センター「“無料”セミナーだけのつもりが…高額な就活サポート契約にご注意!」2025年3月11日)。

三.相手が誰なのかが、はっきりしない

運営者の住所や代表者名、連絡先がどこにも見当たらない。あるいは、書いてある住所と登記が違う、代表者の名前の字が違う、電話番号がない——そういう食い違いに、後から気づくことがある。ここは感覚ではなく、ルールで確かめられる。次の章で見ていく。

この型に共通する狙い 入口を軽くして席に着かせ、金額は最後に、面談という断りにくい場で出す。狙いは「考える時間と、外に相談する余地を、契約の瞬間まで持たせない」ことだと見ている。急かされている、その場で答えを求められている——そう感じたら、それ自体が黄信号だと思っていい。

「で、その講座はいくらなのか」——表示義務で確かめる

うまい話かどうかを、印象で決めなくていい。法律が、事業者に「先に出しておきなさい」と求めている項目がある。特定商取引法は、インターネットで広告して申込みを受ける通信販売について、広告に表示すべき事項を定めている。消費者庁の特定商取引法ガイド(通信販売広告)によれば、表示が必要なのは、おおむね次のようなものだ。

  • 販売価格(役務の対価。送料が要る場合は送料も)
  • 代金の支払時期と方法
  • 役務の提供時期
  • 事業者の氏名(名称)・住所・電話番号。インターネット広告では、加えて代表者または業務責任者の氏名
  • 申込みの撤回・解除(返品・キャンセル)に関する事項

つまり、まっとうな事業者なら、誰が・いくらで・どう返せるのかを、面談を待たずに広告の段階で示しているはずだ、というのが法律の建て付けである。同ガイドは、電話番号について「確実に連絡を取れる番号」を表示するよう求めてもいる。だから、こう問い直してほしい。値段が書いていないのはなぜか。住所や代表者名が見当たらないのはなぜか。解約の条件がどこにも無いのはなぜか。——表示すべきものが表示されていない、という事実そのものが、ひとつの手がかりになる。

もうひとつ、解約のしやすさは取引の種類で変わる。通信販売には、法律上のクーリング・オフ(無条件での申込み撤回)の定めがない。返品できるかどうかは、事業者が広告にあらかじめ示した特約(返品の可否や条件)次第になる。「返金不可」と先に書かれていれば、その枠組みでは取り戻しにくい。一方、相手から電話で勧誘されて契約に至った場合などは、別の種類の取引として扱われ、書面を受け取った日から一定期間内の解除が認められることもある。どの種類に当たるかは契約の実態によるので、ここは断定しない。迷ったら、契約の前に窓口で確かめてほしい。

迷ったとき用の一言 「無料相談」と言われたら、相談の前に一つだけ聞いておきたい。「この先、有料の案内はありますか。あるなら、いくらですか」。健全な相手なら、ここで金額を濁さない。濁されたら、それはそれで一つの答えだと思っている。

席に着く前に、手元でできる確認

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、

  • 広告やページに、値段・事業者名・住所・電話番号・返金条件が書いてあるかを先に探す
  • 「無料」の先に有料の案内があるか、面談の前に文章で確認しておく
  • 住所・代表者名・電話番号が、検索や登記とずれていないかを一度照らす
  • 面談で初めて金額が出てきたら、その日は契約せず、いったん退く

この記事のまとめ

  • 「無料の個別相談・無料診断」は、金額を最後に・断りにくい場で出すための入口になりうる
  • 特商法は「誰が・いくらで・返せるか」の表示を事業者に求めている。書かれていないこと自体が手がかり

対策は結局、その場で決めない・相手の素性と金額を先に確かめる・第三者や窓口に話す。この三つに尽きる。困ったときは、消費者ホットライン「188(いやや)」で、最寄りの消費生活センターにつながる。