「仕入れも撮影も発送も丸ごとおまかせ」の物販副業広告が、価格と社名を伏せたまま実績数字だけを掲げる型を、特定商取引法・景品表示法の一次情報で調べた
今号はこの件を洗いました。(黒)と言いたいところだが、今回はいつもと少し毛色が違う。見た広告に、攻撃的な言葉はほとんどなかった。むしろ静かだった。「商品のリサーチも、撮影も、発送も、丸ごとおまかせください」。Instagram広告からの無料動画で、そう説明される。楽そうだ、と思う人がいてもおかしくない。ただ、話を聞き進めるうちに、いくつか聞こえてこない言葉があることに気づいた。今回はその、聞こえてこない言葉のほうを調べてみた。
「丸ごとおまかせ」で、誰が何を負っているのか
流れはこうだ。Instagram広告から無料動画へ。動画を見るとLINE登録を求められる。登録すると個別の面談に案内され、そこで初めて、物販(せどり・転売)の仕入れ・撮影・発送を代行するという、数十万円規模の有料サポートの話になる。ここまでは、よくある副業勧誘の型の一つと言っていい。
気になったのは「丸ごとおまかせ」という言葉の中身だ。商品を仕入れる元手は誰が出すのか。売れ残った在庫を抱えることになったとき、その損を負うのは誰なのか。動画や個別面談の説明だけでは、ここがはっきりしない。で、その利益の出どころは?——毎回同じ問いになるが、今回も、まずここから確かめたい。
実績数字の出どころを確かめる
広告では「平均利益率40%」「累計売上3億円」といった数字が掲げられていた。目を引く数字ではあるが、これも一度、割り算と同じやり方で見てみたい。誰が、いつ、どうやって計測した数字なのか。自分の手で裏を取れるだろうか。
景品表示法には、根拠のない実績表示を測るための仕組みがある。「事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ」るというものだ(消費者庁「不実証広告規制」)。つまり「実績があります」と言うだけでは足りず、求められれば示せる根拠が要る、という考え方である。ただし、これは一般的な法の考え方の説明であって、今回見た広告そのものが措置命令を受けたという事実は、私の手元では確認できていない。そこは分けて書いておく。
価格と事業者名が、なぜ最初に出てこないのか
無料動画の時点では、価格も、正式な会社名も出てこなかった。個別面談まで進んで、ようやく金額の話になる。これは単なる営業の順番の問題ではなく、法律上の建てつけとして、本来は先に示すべきものだと私は理解している。
この手の有料サポート契約は、業務提供誘引販売取引という区分に当てはまり得る。特定商取引法は「業務提供誘引販売業を行う者は、その業務提供誘引販売業に係る業務提供誘引販売取引について広告をするときは…当該広告に…次の事項を表示しなければならない」と定め、事業者の氏名(名称)・住所・電話番号の表示を義務付けている(消費者庁「特定商取引法ガイド 逐条解説(業務提供誘引販売取引)」、第53条・省令第40条)。同法にはさらに、勧誘に先立って事業者名を明らかにする義務も別に定められている。無料動画・LINE登録の段階で社名がぼかされたまま話が進む、という今回の構造には、そもそも根拠が薄いということになる。
それでも契約してしまったら
すでに契約してしまった場合でも、業務提供誘引販売取引に当たるなら、クーリングオフの制度が使える。「相手方は…書面によりその業務提供誘引販売契約の解除を行うことができる。この場合において、その業務提供誘引販売業を行う者は、その業務提供誘引販売契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない」(消費者庁「特定商取引法ガイド 逐条解説(業務提供誘引販売取引)」、第58条)。書面を受け取った日から20日間、事業者側は違約金も請求できない、という規定である。まずはこれ以上支払わないこと、そのうえで書面と契約日を確かめること。この順番で、正規窓口に相談してほしい。
- 「丸ごとおまかせ」の中身のうち、仕入れ費用と売れ残りの負担を先に確認する
- 「平均利益率」「累計売上」といった数字は、自分で裏を取れるかどうかで判断する
- 無料動画・LINEの段階で、価格と正式な会社名(屋号ではなく登記上の名称)を聞いてみる
- 契約後でも、業務提供誘引販売取引であれば20日間のクーリングオフが使える
この記事のまとめ
- 「丸ごとおまかせ」という言葉は、在庫の仕入れ・売れ残りの負担を曖昧にしたまま使われることがある
- 実績数字は、裏付けを示せて初めて意味を持つ。示せない数字は、まだ「主張」の段階にすぎない
- 価格と事業者名は、本来は無料動画の段階で示されるべきもの。契約後でもクーリングオフの余地は残っている
結局のところ、確かめる順番は同じだ。誰が金を出し、誰がリスクを負うのか。数字の裏は取れるのか。名乗る相手は、正式な社名を名乗っているか。この3つを、その場で聞いてみてほしい。