第305号黒岩検閲済 2026年7月6日 発行(不定期刊/前号:7月6日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|勧誘再燃×行政注意喚起の型

「サポートすれば必ず売上は上がる」という物販ビジネスの勧誘文句が、消費者庁の注意喚起をまたいで何年も同じ中身で繰り返される型を、地方消費生活センターの相談事例で調べた

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黒岩警戒度

物販ビジネスへの勧誘についての相談が編集部に届くと、驚くほど同じ言葉が並んでいることがある。「サポートも行いますので、売上は必ず上がります」。この言い回しに見覚えがある、という方は、おそらく一人ではない。調べてみると、消費者庁は2021年にも、ほぼ同じ骨格の勧誘について注意喚起を出している。今号で扱うのは、特定の企業や人物ではない。「サポートすれば必ず稼げる」という勧誘文句が、行政の注意喚起をまたいでも中身をほとんど変えないまま、何年も生き残り続けている――この、型そのものの持続の仕方である。

2021年の注意喚起と、2025年の注意喚起は、ほぼ同じことを言っている

消費者庁は2021年4月、無在庫転売のノウハウ提供をうたう事業者について、こう説明していた。「サポートに応じた『売上予想』(30万円~900万円)が設定されており、高額な有料サポートほど『売上予想』の金額も高くなる旨が説明されています。」(消費者庁「無在庫での転売ビジネスのノウハウを提供するなどとうたい、多額の金銭を支払わせる事業者に関する注意喚起」2021年)。約4年半後の2025年12月にも、同庁は在宅ワーク・高額コンサル契約をめぐる事案で、こう記している。「早い人だと数ヶ月で元が取れますし、数ヶ月経てば相殺されて、案件やっていけばそれ以上いけます」「我々がサポートするので、指導に従っていればこれ以上確実に稼げます」。同庁はこの種の勧誘に対し、「『うまい話』はありません。簡単に稼げるというような勧誘をうのみにしないようにしましょう」と呼びかけている(消費者庁「在宅ワークの求人情報をきっかけに、高額なコンサルティング契約をさせる事業者に関する注意喚起」2025年12月19日)。払った額に応じて数字が大きくなる「売上予想」と、「サポートに従えば確実に稼げる」という言い切り。4年半の間を置いても、骨格は変わっていない。今、目の前でこの言葉を聞いている人にとっては「新しい話」でも、行政の記録の上ではすでに何年も前から繰り返されている型だ、ということになる。

「サポートすれば必ず売上は上がる」と言われた人は、実際どうなったか

この文句をそのまま裏づける相談事例が、地方の消費生活センターにも記録されている。アフィリエイト・ドロップシッピングの勧誘を受けた相談者は、「ウェブサイト作成費用などの約135万円を分割で支払った」。その際の説明は「普通にブログを書いたりお客からの質問などにしっかり対応していれば売上は間違いなく上がるし、サポートも行うので必ず売上は上がる」というものだった。結果はどうだったか。「利益は合計1万円にもならなかった」(滋賀県「アフィリエイトやドロップシッピングに関する相談」)。135万円を分割で払い、約束された「必ず上がる」売上は、1万円にも届かなかった。「サポートすれば必ず」という言葉と、実際に得られた金額の落差そのものが、この型の実態だと私は見ている。

「売上予想」も「必ず上がる」も、支払う前には確かめようがない 「30万円~900万円」という予想も、「必ず売上は上がる」という約束も、いずれも契約前の口頭説明にすぎない。滋賀県の事例が示すとおり、契約後に確認できる数字は、約束された金額とはまったく別物になり得る。示された数字ではなく、その数字がどこから来たのかを聞いてほしい。

足りない分の工面は、結局いつも同じ形になる

135万円、あるいはそれ以上の初期費用を、その場で現金で用意できる人は多くない。この局面で案内されるのが、複数の金融機関からの借入れだ。知るぽると(金融広報中央委員会)は、高額な契約をめぐる強引な勧誘の実務についてこう解説している。「貸金業者の借入れ上限額より高額な契約の場合は、複数の貸金業者から同日に借入れさせることもよくある手法です。」(知るぽると「第56話 借金をさせて強引に契約を結ばせる!若者を狙うクレ・サラ強要商法」)。1件の貸金業者・1枚のクレジットカードでは審査の上限に引っかかる金額でも、複数に分ければ、その場では通ってしまう。この資金繰りの型そのものは、複数枚のクレジットカードのリボ払いという形で前号(「知人の紹介だから、まず安心していい」──物販ビジネスの勧誘が、利益の出どころを示さないまま複数枚のクレジットカードのリボ払いへ進ませる型を、割賦販売法の調査義務で調べた)で詳しく調べた。今号であらためて確認したいのは、貸金業者側の視点から見ても「複数に分けて借りさせる」ことがすでに一つの定型手法として解説されている、という点だ。

声をかけてくるのは、たいてい知人という経路

この型が何年も生き残っている背景には、勧誘の経路そのものも関係していると私は見ている。国民生活センターは2019年、友人・知人からの誘いをきっかけとする「モノなしマルチ商法」について注意を呼びかけた。2018年度のマルチ取引に関する相談は総数10,526件、うち商品を伴わない「モノなし」の役務提供が5,490件、29歳以下からの相談が2,481件にのぼる(国民生活センター「友だちから誘われても断れますか?若者に広がる『モノなしマルチ商法』に注意!」2019年)。広告であれば比較や検索がしやすいが、知人からの声がけには、その一手間が働きにくい。この経路の詳しい構造は、実在する法人が公式には勧誘内容を一切開示しない型として前号(「会社は実在するのに、検索しても副業の中身が出てこない」──知人にだけ明かされる物販ビジネス勧誘の型を、お金の流れと検証可能性で調べた)で調べている。今号で見ておきたいのは、この経路を通じて、行政の注意喚起をまたいでも同じ勧誘文句がそのまま使われ続けている、という時間軸の面だ。

特定商取引法施行規則には、訪問販売について「老人その他の者の判断力の不足に乗じ、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結させること」を禁止行為とする定めがある(特定商取引に関する法律施行規則第七条第二号)。この条文自体は訪問販売を対象にしたものであり、業務提供誘引販売取引など他の類型に同じ文言がそのまま当てはまるかどうかは、個別の事実関係次第だ。ただ、判断力や情報の非対称につけ込んで契約を結ばせる行為を問題視する考え方そのものは、取引の類型を超えて共通していると私は見ている。「サポートすれば必ず」という言葉を、契約を急ぐ理由にしていないか。そこは自分で一度立ち止まって確かめたい。

  • 「サポートすれば必ず売上は上がる」という言葉を、契約前に検索し、同じ文言の注意喚起や相談事例が出てこないか確認する
  • 示された「売上予想」の金額が、支払う金額に応じて変わる仕組みになっていないか確認する
  • 複数の金融機関・複数枚のクレジットカードでの支払いを勧められたら、合計の借入額と返済総額を自分で計算する
  • 知人からの紹介であっても、契約書面に事業者名・事業内容・特定負担の内容が明記されているかを確認する
  • その場では決めず、家族や利害のない第三者に一度話してから判断する

すでに契約し、複数の借入れで支払ってしまった方へ。まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上支払いを増やさないことが先だ。順序はこうなる。①追加の支払い・増額に応じない ②契約書・借入れの記録・やり取りの履歴を残す ③勧誘のされ方(誰から、どこで、どんな文句で)を書き出しておく ④消費者ホットライン「188」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

迷ったとき用の一言 「その『売上予想』は、何を根拠にした数字ですか」。この一言に、支払う金額と関係なく答えられる相手とだけ、次の話をすればいい。答えが支払う額に連動していたら、それはそれで答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 「サポートすれば必ず売上は上がる」という勧誘文句は、消費者庁が2021年・2025年と、4年半の間を置いてもほぼ同じ中身で注意喚起してきた型と一致する
  • 実際に支払った相談事例では約束された売上は実現せず、複数の金融機関・複数枚のクレジットカードでの資金繰りと、知人経由の勧誘経路も、繰り返し確認されている型の一部だ

確かめるのは、その場の熱意ではなく、同じ文句がすでに何年も注意喚起されてきた型に当てはまっていないかどうかだ。迷えば188へ。それが一番確かだ。