第294号黒岩検閲済 2026年7月5日 発行(不定期刊/前号:7月5日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|知人紹介×リボ払い分散の型

「知人の紹介だから、まず安心していい」──物販ビジネスの勧誘が、利益の出どころを示さないまま複数枚のクレジットカードのリボ払いへ進ませる型を、割賦販売法の調査義務で調べた

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「知人の紹介だから、まず安心していい」。物販ビジネスへの誘いは、たいてい広告ではなく人づてで届く。同僚や取引先、古い友人といった、日ごろから顔を合わせている相手からの声がけだ。話を聞いてみると、中身は物販、いわゆる「せどり」や輸入転売の教育・仕組み提供だという。参加を決めたあとになって、ようやく金額の話が出てくる。数十万円から、時には百万円を超える初期費用だ。手元にそこまでの現金がない、と伝えると、「クレジットカードで大丈夫です」という案内が続く。今号で扱うのは、特定の企業や人物ではない。知人という信頼を最初の与信に使い、参加を決めたあとで初めて費用を示し、足りない分を複数枚のクレジットカードのリボ払いで工面させる――この、物販ビジネス勧誘の型である。

この型の骨格──「紹介」が最初の与信になる

広告経由の勧誘であれば、多くの人はまず身構える。ところが、声をかけてくるのが知人や仕事の関係者だと、その身構えがそもそも働きにくい。「この人が変な話を持ってくるはずがない」という信頼が、審査や与信の代わりを果たしてしまう。紹介者自身も、悪意より先に「いい話だと思ったから伝えた」という善意で動いていることが多い。ここが、広告型の勧誘とは違う難しさだと私は見ている。金額の提示も、この信頼を利用する形で遅れてくる。説明の場で仕組みへの納得感を積み上げ、「参加します」という意思を先に固めさせてから、初めて入会金や仕入れ資金の総額が出てくる。決めたあとに金額を知る、という順序そのものが、この型の骨格だ。

足りない分は、複数枚のカードのリボ払いへ

提示される総額に、その場で払える現金を用意している人はそう多くない。ここで案内されるのが、複数枚のクレジットカードに分けての支払いだ。1枚のカードで足りなければ、もう1枚。それでも足りなければ、さらにもう1枚。分割払いやリボ払いを選べば、月々の負担は小さく見える。ただ、リボ払いの実態について、消費者庁は次のように説明している。「分割払いやリボ払いの手数料は、年間だいたい債務残高の十数パーセントです。」(消費者庁・経済産業省「クレジットをうまく利用するために」2022年)。同資料はさらに、「リボ払いは、債務がいつまで残るか、つまり、いつになったら支払いが終わるか、調べたり計算したりしないとわかりません。」とも述べる。複数枚に分けたこと自体への公的な注意喚起の文言は、確認できる範囲では見当たらなかった。ただ、同資料は「借り換えているうちに、あちこちに支払う義務を負って、『多重債務』という状態になった人もいます。」とも記しており、支払先が複数に増えるほど、総額を自分で把握しづらくなる方向に働くことは、少なくとも読み取れる。

そもそも、クレジット会社にも歯止めの制度はある。割賦販売法は、個別信用購入あっせん業者に対し、契約の前に支払可能見込額を調査する義務を課している(割賦販売法第35条の3の3)。消費者庁の解説を借りれば、「クレジット会社は、信用情報機関に登録されている消費者の、クレジット契約の内容や支払い状況に関する情報を確認し、払えそうな金額の枠内でクレジットを提供することになっています。」という制度だ(同「クレジットをうまく利用するために」)。1枚ごとの審査ではこの調査が働いても、複数枚に分けて申し込むことで、結果として総額としては見えにくくなる余地が生まれる。で、その利益の出どころは?――そう問う前に、まず総支払額を自分で紙に書き出してみてほしい。

で、その利益の出どころは?──「稼げた」の確認できる報告

費用を工面してまで参加する以上、当然その先には「稼げる」という説明がある。ただ、この手の物販ビジネスをめぐって、消費者庁が過去に注意喚起した事例では、次のような仕組みが指摘されている。「サポートに応じた『売上予想』(30万円~900万円)が設定されており、高額な有料サポートほど『売上予想』の金額も高くなる旨が説明されています。」(消費者庁「無在庫での転売ビジネスのノウハウを提供するなどとうたい、多額の金銭を支払わせる事業者に関する注意喚起」2021年)。払った額に応じて、約束される数字のほうが大きくなる。これは、実際に売れた結果として金額が決まる仕組みとは、順序が逆だ。将来の利益を確実であるかのように語る行為は、消費者契約法が定める「断定的判断の提供」に触れうる。同法第4条第1項第2号は、将来における変動が不確実な事項について断定的判断を提供し、それにより消費者が誤認して契約した場合、取り消せると定めている(消費者契約法第4条第1項第2号)。確かめるのは体験談の熱量ではなく、示された数字が「払った額」から逆算されていないかどうかだ。

この契約はどの枠に入るのか──業務提供誘引販売取引という制度

物品の再販売や業務の提供を条件に、金銭の負担を求める取引には、特定商取引法上の「業務提供誘引販売取引」という枠組みが用意されている場合がある。同法は業務提供誘引販売取引を「物品の販売又は役務の提供の事業であって業務提供利益が得られると相手方を誘引しその者と特定負担を伴う取引をするもの」と定義する(特定商取引法ガイド・業務提供誘引販売取引)。該当すれば、「法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば……契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。」という保護も働く(同ガイド)。ただし、目の前の契約がこの枠に当てはまるかどうかは、個別の事実関係次第だ。私が断定できることではない。少なくとも、契約書面に事業者名・事業内容・特定負担の内容が明記されているか、そして書面を受け取った日がいつかは、記録しておいて損はない。

知人・友人からの誘いというトラブルの型

知人・友人を入口にする勧誘は、この物販ビジネスに限った話ではない。国民生活センターは、暗号資産のトラブルについて次のように注意を呼びかけている。「友人や知人から『暗号資産でもうかる。人を紹介すれば紹介料も入る』と勧誘されお金を預けたが、出金できない、返金されないといったケースもみられます。」(国民生活センター「SNSやマッチングアプリ、友人・知人からの誘いをきっかけとした暗号資産のトラブル」2022年)。題材は違っても、信頼を先に借りて金銭負担へ運ぶ、という骨格は同じだ。手持ち資金が足りない場面での工面のさせ方についても、消費者庁は「副業を行うために必要であるとして、高額なサポートプランの契約を勧誘し、その利用金額に充てるため、遠隔操作アプリを用いて消費者のスマホの画面共有をしつつ、消費者金融業者から借入れをさせていました。」という事例を公表している(消費者庁「遠隔操作アプリを用いて、消費者金融業者から高額な借入れをさせる副業サポート事業者に関する注意喚起」2024年)。借入先が消費者金融かクレジットカードかの違いはあっても、「手元にないなら、別の形で用意させる」という発想は共通している。国民生活センターは別の資料で、「儲かるかどうかは不確実であるにも関わらず『借金はすぐに返済できる』と説明するなどの問題勧誘が見られます。」とも記す(国民生活センター「『お金がない』では断れない!きっぱり断りましょう」2019年)。

副業トラブルの相談は、金額とともに膨らんでいる 国民生活センターの集計では、副業に関するトラブル相談は2020年度1,341件から2023年度3,694件へ増加し、平均契約購入金額も27万9,519円から76万3,117円へ拡大している(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル」2024年9月4日)。値の多くは「タスク型」副業の集計だが、副業契約が高額化しながら相談も増えている傾向としては、物販ビジネスにも共通する材料だと私は見ている。

巻き込まれないための確認ポイント

予防の側でやることは、紹介者の善意を疑うことではない。金額と、その根拠がいつ・どんな形で示されるかを確かめることだ。

  • 参加や契約の意思を固める前に、総額(入会金・仕入れ資金など全項目の合計)を書面で確認する
  • 複数枚のクレジットカードでの支払いを勧められたら、1枚あたりではなく合計の返済額と完済時期を自分で計算する
  • 「売上予想」「達成率」の数字を見たら、支払った額に応じて数字が変わる仕組みになっていないか確認する
  • 契約書面に事業者名・事業内容・特定負担の内容が明記されているか、書面を受け取った日を記録しておく
  • その場では決めず、家族や利害のない第三者に一度話してから判断する

すでに契約し、複数のカードで支払ってしまった方へ。まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上支払いを増やさないことが先だ。順序はこうなる。①追加の支払い・増額に応じない ②各カードの利用明細とやり取りの記録を残す ③勧誘のされ方(誰から、どこで)を確認しクーリング・オフの可否を調べる ④消費者ホットライン「188」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

迷ったとき用の一言 「総額と、返済にかかる期間を、契約前に一枚の紙にまとめてください」。この一言に淀みなく答えられる相手とだけ、次の話をすればいい。話をはぐらかされたら、それはそれで答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 知人という信頼を最初の与信に使い、参加を決めたあとで金額を示し、複数枚のクレジットカードのリボ払いで工面させるのが、この型の骨格である
  • リボ払いの残高把握のしづらさは消費者庁が明言し、支払可能見込額の調査義務は割賦販売法に定めがある。断定的な利益の提示は消費者契約法の断定的判断の提供に触れうる

確かめるのは紹介者の善意ではなく、総額・返済期間・利益の根拠が契約前に書面で出てくるかどうかだ。迷えば188へ。それが一番確かだ。