「スマホ1台で始められる」副業がLINE個別説明で高額サポートに変わり、借入まで促す型を、お金の流れで調べた
「スマホ1台で始められる」「未経験でも高収入」。そんな副業の広告からLINEへ登録すると、しばらくして個別の説明の場が用意される。そこで初めて具体的な金額が提示され、「手持ちがない」と答えると、今度は借りてでも契約するよう促される——今号は特定の名称は挙げず、この副業サポート勧誘の型を、いつもどおりお金の流れで調べた。
型の流れ——広告に金額はなく、個別説明の場で初めて出てくる
各案件で細部は違うが、骨格はおおむね次の順序に収まる。
①SNS広告で「スマホ1台」「未経験可」を訴求し、LINEへ登録させる。この時点で料金は一切出てこない。②登録後、電話やオンラインでの個別説明が案内される。③説明の場で、遠隔操作アプリを使ってこちらのスマホ画面を共有させ、相手主導で申込みの操作を進めさせる。④画面上にプラン表が示され、「初心者向け」とされる段階でも数十万〜数百万円という金額が、このタイミングで初めて明かされる。⑤「手持ちがない」と答えると、消費者金融からの借入れが勧められる。
気づいてほしいのは、広告からLINE登録までの間、金額の話は一切出てこない、という点だ。総額を知らないまま個別説明の場に着き、しかも申込みの操作は自分の指ではなく相手の指示で進んでいく。これでは、契約の前に立ち止まって考える余地がほとんど残らない——私はそう見ている。
数字でほどく——「借りてでも払わせる」のは、なぜ成立するのか
で、その利益の出どころは? 実際に、この骨格に極めて近い事案について消費者庁が2025年6月26日付で注意喚起を出している。そこに記録された勧誘の文言はこうだ。「初心者なら一番スタンダードであるNo.6パックがおすすめです。60日間の250万円のサポートプランに参加すれば、それ以上の報酬が得られます」。そして手持ちがないと答えた相手には、「消費者金融から借入申請をしてください。簡単にお金を借りることができます。借りられた分だけでプランを進めましょう」という説明があったと記されている。
この事案で消費者庁が確認した事実がもう一つある。「副業に係る報酬において、サポートプランの契約金額を上回る報酬を得た消費者は確認できませんでした」。つまり、行政が調べた範囲では、この型でプラン料金を上回る収入を得た人は一人も確認されていない。借りてまで払った先に、それを上回る回収があった形跡はない。
この型は今回が初めてではない。同種の注意喚起は2022年9月15日(簡単な作業をうたい副業ガイドブックを購入させ、電話勧誘で高額サポートを契約させる事業者)、2024年2月29日(遠隔操作アプリで画面共有をしつつ、消費者金融から高額な借入れをさせる副業サポート事業者)、そして今回の2025年6月と、少なくとも3年にわたって形を変えながら繰り返されている。看板の商材(動画・AI・投資など)は毎回違っても、「無料か低額の入口」「個別接触での高額提示」「借入の後押し」という骨格は同じままだ。
背景の数字も見ておきたい。国民生活センターの集計によれば、副業トラブルの相談件数は2020年度1,341件から2023年度3,694件へ増え、SNSがきっかけとなった相談の割合は同期間で23%から63.4%へ上昇、平均契約購入金額も27万9,519円から76万3,117円へと膨らんでいる。入口が安く(または無料に)なるほど、後ろの契約額は大きくなる——この傾向は、今回の型ともよく重なる。
制度の側から見ておく——20日間のクーリング・オフと「断定的判断」の禁止
「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で誘い、仕事に必要だとして商品や役務の代金を負担させる取引は、特定商取引法上「業務提供誘引販売取引」に区分されうる。消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、この類型に該当する契約は、法律で定められた書面を受け取った日から20日以内であれば、書面または電磁的記録によりクーリング・オフができる(法第58条)。訪問販売や電話勧誘販売の8日間より長い期間が用意されている点は、覚えておく価値がある。ただし、契約の実態がこの類型に当たるかどうかは案件ごとに異なるため、個別の該当性はここでは断定しない。
「それ以上の報酬が得られます」のように、将来の受取額を断定して勧誘する行為にも法律の線がある。消費者契約法第4条は、「将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」によって契約させた場合、その契約を取り消せると定めている。もらえる金額を言い切られたときは、この条文を思い出してほしい。
立ち止まるためのチェック
この型に触れたとき、確かめてほしいのは次の点である。
- 広告やLINE登録の時点になかった金額が、個別説明で初めて出てきていないか
- 画面共有アプリでの操作を、相手の指示のまま進めていないか
- 「手持ちがない」と答えたときに、借入れや分割払いを勧められていないか
- 受け取れる金額を、断定的な言い方で約束されていないか
- 契約書面・総額・クーリング・オフの説明を、その場で書面として受け取れているか
この記事のまとめ
- 「スマホ1台」型の副業広告は、LINE登録→個別説明→画面共有アプリでの契約進行→借入誘導、の順で進みやすい
- 消費者庁の確認では、この型でプラン契約金額を上回る報酬を得た消費者は確認されていない
- 業務提供誘引販売取引に当たれば20日間のクーリング・オフがあり、断定的な受取額の約束は消費者契約法で取消しの対象になりうる
金額を知らされないまま個別説明に呼ばれ、画面共有と借入れを同時に勧められたら、そこでいったん手を止める。それだけで、この型の大半は入口で止められる。(黒)