第442号黒岩検閲済 2026年8月8日 発行(不定期刊/前号:8月8日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|投資顧問の好成績抜粋表示の型

無料の相場ニュース末尾に並ぶ投資顧問広告が、好成績の事例だけを並べて母数を示さない型を、金融商品取引法・消費者庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

その日の株価材料や決算の要点を、淡々と並べるだけの無料コラムがある。読み終えた末尾に、「投資顧問」を名乗る窓口への案内が置かれていることがある。獲得した利益の金額と、株価が何倍になったかという数字が、うまくいった例だけ数件、並んでいる。

特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、肩書きの重さと数字の見せ方から調べた。

「投資顧問」という肩書きには、法律上の裏がある

「投資顧問」という名乗りは、誰でも自由に使えるわけではない。個別の銘柄について報酬を得て助言する業務は、金融商品取引法で「投資助言・代理業」として位置づけられており、原則として金融庁の登録が要る。

法律の条文はこう定める。「金融商品取引業を行おうとする者は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければならない。」(金融商品取引法第29条)出典。金融庁も無登録業者への注意喚起でこう述べている。「日本で登録を受けずに金融商品取引業…を行うことは違法です。」(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)出典

肩書きに「顧問」と付けるかどうかは名乗った者の自由でも、中身が個別の投資判断への助言なら、登録の有無という論点が生じる。私はまず、案内された窓口の名前を、金融庁の登録一覧で照合してみることを勧めている。

「良い数件」だけを並べる、という見せ方

案内の中身を見ると、獲得利益の金額と株価の上昇倍率が、うまくいった例だけ3件ほど並んでいることが多い。全体で何件のうち何件が成功したのか、平均はいくらなのか、という母数はどこにも書かれていない。

消費者庁は、健康食品等の体験談表示についてこう指摘している。「実際には、商品を使用しても効果、性能等を全く得られない者が相当数存在するにもかかわらず、商品の効果、性能等があったという体験談を表示した場合……一般消費者は大体の人が何らかの効果、性能等を得られるという認識を抱くと考えられるので……一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。」(消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書(概要)」、2017年9月)出典。金融商品の広告そのものを対象にした指摘ではないが、好成績の投資事例だけを抜粋する表示にも、同じ考え方があてはまりうると私は見ている。

良い数件だけを見せられても、それが100件中の3件なのか、10件中の3件なのか、読んでいる側には区別がつかない。母数を示さない好成績は、確かめようのない数字だ。

隣に並ぶ、もう一つの窓口

同じ末尾に、性格の違う窓口が並んでいることもある。AIが銘柄を選ぶという触れ込みで、過去データに当てはめたシミュレーション、いわゆるバックテストの成績を掲げる窓口だ。

バックテストは、あくまで過去の値動きに当てはめた再現であって、これからの相場を保証するものではない。将来の利益を確実であるかのように示す勧誘は、法律で禁じられている。「不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」(金融商品取引法第38条第2号)出典は、禁止行為として明記されている。

助言型の窓口と、自動売買型の窓口。性格の異なる二つが同じ面に並ぶと、一方の確からしさが、もう一方にも移って見えやすくなる。で、その利益の出どころは? 無料で案内する側が、紹介料や成約時の報酬を得ている以外に、ここまで手厚く案内する理由を、私は思いつかない。

「良い数件」の裏にある母数 獲得利益や倍率の数字を見たら、その裏に何件の外れがあるのかを、まず考えてみてほしい。件数も割合も示されない好成績は、良い部分だけを切り取った可能性を疑っていい。

相談は、静かに増えている

SNSや広告を経由した投資の勧誘トラブルは、公的な統計でも増えている。国民生活センターはこう報告している。「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」。相談件数は「2021年度52件、2022年度170件、2023年度1,629件」(国民生活センター、2024年5月)出典と、前年度の約9.6倍にのぼる。

これは投資顧問を名乗る広告そのものの統計ではなく、SNS経由の投資勧誘トラブル全体の数字だ。ただ、同じ「無料の案内から個別の窓口へ」という土壌で増えている話として、頭の片隅に置いておきたい。

  • 実績の金額・倍率を見たら、対象件数と母数が示されているか確かめる
  • 「投資顧問」を名乗る窓口の名前を、金融庁の登録一覧で照合してみる
  • 「バックテスト」の成績が、将来の保証のように書かれていないか確かめる
  • 無料の案内がどこで収益を得ているのか、一度考えてみる
迷ったとき用の一言 「本当に確かな実績なら、母数を隠す理由はないはずだ」。全体の件数を尋ねて、はぐらかされたり、良い例だけが繰り返し置かれていたりしたら、その作り自体が一つの答えだと思っている。

この記事のまとめ

  • 「投資顧問」を名乗り個別助言を行う業務には、原則として金融庁の登録が要る
  • 好成績の事例だけを抜粋し母数を示さない表示は、優良誤認表示の考え方に触れうる
  • バックテスト成績を将来の保証のように示す勧誘は、断定的判断の提供として禁じられている

確かめるべきは獲得利益の金額の大きさではなく、その裏にある母数と、登録の有無だ。