第415号黒岩検閲済 2026年7月29日 発行(不定期刊/前号:7月29日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|客観情報×振れ幅の大きい実績表示の型

決算・株価材料という客観情報の隣に、実績297%〜890%と振れ幅の大きい投資ツール広告を並べる型を、金融庁・消費者庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

その日の決算発表企業や、材料が出た銘柄をまとめて無料で伝えるコラムがある。相場のニュースとして読んでいるだけのつもりが、その並びの中に、公式LINEアカウントへの登録を勧めるバナーや、「利益率297%〜890%」といった数字を掲げる有料の投資ツール広告が挟まっている——そういう作りを、たまに見かける。特定のサイト・案件名は挙げず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。

なぜ「客観的なニュース」の形をとるのか

その日の決算発表企業を並べる一覧、材料が出た銘柄の解説。ここまでは事実の整理であって、投資判断そのものを煽る言葉は出てこない。読み手からすると、単なる相場ニュースの延長として受け取る。ニュース性の高いコンテンツで先に信頼を得てから、性格の違う広告を差し込む——これが入口の作り方だと私は見ている。

型を、お金の流れで分解する

個別の案件名は伏せる。だが、寄せられた話を並べると、流れはおおむね同じ順序をたどる。順を追って見ていく。

入口:決算・株価材料という無料コラム

その日の決算発表企業を並べる一覧、材料が出た銘柄の解説。客観的な事実の整理という体裁で、ここまでは無料であり、投資判断を煽る言葉もない。

一段目:公式LINEアカウントへの無料登録

コラムの途中に、公式LINEへの登録を促すバナーが挟まる。「急騰株を先読みする」といった文言で、無料であることを強調する。ここでもまだ金銭のやり取りは発生しない。

二段目:実績を掲げる有料の投資ツール

別の枠には、過去の実績として大きな利益率を掲げる有料の投資ツール広告が置かれている。ここで初めて「有料」という言葉が出てくる。

並走:AIが選ぶという無料配信

もう一つ、多数の銘柄をAIが分析して選ぶ、という触れ込みの無料配信サービスも同時に案内される。無料の入口が複数用意されている、という点も特徴だ。

客観情報とセットになった広告 この型の核は、ニュース性の高い無料コンテンツで信頼を先に積み、その隣に性格の違う複数の送り先(無料LINE・有料ツール・無料AI配信)を並べて置くことだ。淡々とした記事の中に、唐突に大きな数字の広告が挟まっていたら、それ自体を一度疑っていい。

「297%〜890%」を数字でほどく

うますぎる数字は、まず並べて比べてみたい。ある実績が297%、別の実績が890%だとする。890から297を引くと593、593ポイントもの差がある。同じツール・同じ手法の実績として並べるには、あまりに幅が広い。

本当に安定してこの水準の実績を出せる手法があるなら、なぜ結果にこれほどの振れ幅が出るのか。相場全体が同じように動いた局面でも、銘柄によって結果は当然変わる。だが、都合のいい一部の結果だけを選んで並べれば、レンジはいくらでも広く、また高く見せられる。で、その実績の選び方は?——そこが説明されない数字は、参考にしづらいと私は思う。

もう一つ確かめたいのは、この配信自体の登録の有無だ。金融庁は投資助言・代理業の監督指針で、「不特定多数の者を対象にする場合でも、インターネット等の情報通信技術を利用することにより個別・相対性の高い投資情報等を提供する場合や、会員登録等を行わないと投資情報等を購入・利用できない……ような場合には登録が必要となる」としている(金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(金融庁))。つまり「無料だから登録は要らない」という理屈は、必ずしも成り立たない。LINE会員限定で個別性の高い銘柄情報を渡す形になっていれば、登録の対象になりうる。

迷ったとき用の一言 実績の数字は、幅が広いほど「どれか当たる」ように見えてしまう。だが振れ幅の大きさそのものが、選び方の疑わしさを示していることもある。その場で登録せず、まず数字の出どころをたずねてみてほしい。

断定的な言い切りと、実績表示の考え方

将来の利益をめぐる言い切りには、法律上の歯止めがある。消費者契約法(e-Gov法令検索)第4条第1項第2号は、将来における価額など「変動が不確実な事項」について、事業者が「断定的判断を提供」し、消費者がその内容を確実だと誤認して契約した場合、その契約を取り消せると定めている。「必ず儲かる」「着実に増える」といった言葉が出てきたら、それ自体が一つのサインになる。

実績数値の見せ方にも、別の法律が関わってくる。消費者庁は、実際のものより「著しく優良であると示す」表示を優良誤認表示(消費者庁)として景品表示法で禁止しており、事業者が表示の根拠を示せない場合は「不実証広告規制」の対象になりうるとしている。実績◯%という数字を見せる以上、その裏付けを事業者側が示せるかどうかが、一つの分かれ目になる。

SNS・LINE経由の投資勧誘トラブルは、実際に増えている

国民生活センターによれば、SNSをきっかけにした金融商品・サービスの相談は、2021年度の52件から2023年度には1,629件へと急増している(「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」(国民生活センター・2024年5月29日))。

無料を入口に高額なサービスへ誘導する型そのものも、以前から指摘されてきた。国民生活センターは2018年の時点で、副業・投資の儲け話に関する相談が2013年度の872件から2017年度には6,593件へ増えたと報告している(「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」(国民生活センター・2018年8月2日))。無料の入口から始まる勧誘は、決して新しい型ではない、ということだと思う。

すでに登録し、有料のツールに申し込んでしまった方へ。まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。

  • 追加の入金・プランのアップグレードをいったん止める
  • 掲げられていた実績の根拠(期間・銘柄・条件)を確認できるか確かめる
  • クレジットカードなど、決済元に状況を連絡する
  • 消費者ホットライン「188」や最寄りの消費生活センターに相談する

この記事のまとめ

  • 決算・株価材料という客観情報の隣に、無料LINE・有料ツール・AI無料配信という複数の送り先を並べる型がある
  • 実績297%〜890%のような大きな振れ幅は、都合のいい結果だけを選んでいる可能性を疑っていい
  • 無料の会員限定配信でも、個別性の高い情報提供は投資助言・代理業の登録対象になりうる

実績の数字は、幅の広さそのものが一つの手がかりになる。登録の前に、その出どころと根拠を確かめる習慣を持ちたい。