投資顧問とAI投資ツールが並べる「値上がり銘柄」の実績表に、共通する銘柄が一つもない型を、金融庁・国民生活センターの一次情報で調べた
相場ニュースの体裁をした記事を、今号も読んだ。日経平均や為替の動きを解説する部分は、ごく普通の市況記事だった。ただ本文の途中と末尾に、「投資顧問」を名乗るサービスと「AI投資ツール」を名乗るサービスが、それぞれ別の"値上がり銘柄"の実績表を掲げていた。片方は円建ての獲得利益、もう片方はパーセントの利益率。見た目には二重の裏付けがあるように映るが、両方の表に載っている銘柄を突き合わせてみると、共通するものが一つもない。特定のサイト・サービス名は挙げず、案件をまたいで現れる一つの型として、今号はこの"二つの実績表"の中身を調べた。
「投資顧問」と「AIツール」、二つの実績表
記事の中ほどには「投資顧問」を名乗るサービスが、個別銘柄について円建ての「獲得利益」を三つ並べていた。末尾には「AI投資ツール」を名乗るサービスが、同じく個別銘柄について利益率をパーセントで四つ並べていた。どちらの表にも、抽出した年月日・当時の株価・その後の高値・利益率(または利益額)が細かく書き込まれている。桁数の多い端数の金額や、290%を超えるような利益率が並ぶと、それだけで精度の高い実績記録のように見えてしまう。
銘柄を突き合わせてみると、重なるものがない
二つの表に載っている銘柄名を、そのまま突き合わせてみた。投資顧問側の三銘柄と、AIツール側の四銘柄。重なるものは一つもなかった。名乗りが違うだけでなく、扱っている銘柄そのものが別だ。つまりこの二つの表は、同じ相場の同じ値動きを別の角度から裏づけているわけではない。まったく別々の推奨リストが、たまたま同じ記事の中で隣り合っているだけ、というのが実態に近い。
で、その利益の出どころは?――実績表が二つ並んでいることは、信頼性の掛け算にはならない。むしろ、どちらの表も相手の実績を裏づけていない、という点にこそ注意しておきたい。
「投資顧問」を名乗るなら、まず登録の有無
「投資顧問」という肩書きは、誰でも自由に名乗れる言葉ではない。有価証券や金融商品の価値について、報酬を受け取って助言する事業は、投資助言・代理業として内閣総理大臣(財務局)の登録を受ける必要がある。金融庁のガイドブックは、投資判断に関する助言を報酬を受けて行う場合、投資助言会社は「投資助言・代理業の登録が必要となります」と説明している(投資運用業等 登録手続ガイドブック(金融庁))。登録の有無は、記事の中の紹介文だけでは確認しようがない。無登録のまま金融商品取引業を行っていた業者について、金融庁は「無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告書の発出を行った者の名称等を掲載しています」として、一覧を公表している(無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(金融庁))。
「AI」がついても、断定的な数字の扱いは変わらない
もう一方の「AI投資ツール」についても、考え方は変わらない。判断を下しているのが人間かAIかは、法律上の位置づけを左右する理由にはならない。金融庁の監督指針は「有価証券等の価格、数値、対価の額の動向を断定的に表現したり、確実に利益を得られるように誤解させて、投資意欲を不当に刺激するような表示をしていないか」を監督上の評価項目として挙げている(金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(金融庁))。「勝率」や「利益率」を極端な数字で見せる表示は、この着眼点の範囲に入りうる。また、実際のものより著しく優良であるかのように見せる表示は、消費者庁が定める景品表示法の優良誤認表示にも触れうる。消費者庁は「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています」と説明している(優良誤認とは(消費者庁))。
実は、この記事にはもう一つ別の"無料銘柄"窓口もあった
数えてみると、この記事には三つ目の窓口もあった。「LINEで友だち追加すると、急騰銘柄を無料で教えてもらえる」という案内だ。投資顧問の実績表、AIツールの実績表、そしてLINEの無料銘柄配信。名乗りも見せ方も違う三つの窓口が、一本の記事の中に並んでいる。読者からすると、複数の情報源が同じ結論(この相場は狙い目)を裏づけているように感じやすい。ただ、それぞれの窓口が独立して検証された実績を持っているのか、確かめる手段は記事の中には用意されていない。
数字で見る、この型に注意したい理由
印象だけの話ではないことを、数字でも見ておく。国民生活センターは、SNSをきっかけとして著名人を名乗る、つながりを示すなどして勧誘される金融商品・サービスのトラブルについて「こういった相談が、全国の消費生活センター等に寄せられており、2022年度と比べて約9.6倍と急増しています」と発表している(国民生活センター報道発表(2024年5月))。同資料はさらに、「金融コンサルティング(投資顧問、投資セミナーなど)」がこの種の相談の中でも件数の多い区分の一つであり、契約購入金額の平均が「約644万円と高額になっています」とも報告している。今回見た型は「無料の実績配信」を入口にする点で、この統計が扱う手口と地続きだと私は見ている。
- 複数の実績表が並んでいても、掲げられている銘柄が重なっているかを突き合わせる
- 「投資顧問」「AI」を名乗るリンク先が、金融庁の登録業者一覧に載っているかを確認する
- 利益率・獲得利益に、母数(全体の何件中か)と期間が示されているかを見る
- 「無料で銘柄がもらえる」窓口が、同じ記事の中にいくつあるか数えてみる
- その場で友だち追加・登録をせず、いったん時間を置いてから確かめる
この記事のまとめ
- 投資顧問とAI投資ツール、二つの実績表を並べても、掲げる銘柄が一つも重ならないことがある
- 実績表が複数あることは、相互の裏付けにはならない
- 確かめるべきは、登録の有無と、実績の母数・期間だ
看板の数や表の見た目に気を取られず、まず銘柄そのものを突き合わせてみてほしい。