第136号黒岩検閲済 2026年6月15日 発行(不定期刊/前号:6月15日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|無料情報→有料助言

「無料で当たる銘柄」から有料の投資助言契約へ——AI投資ツールの謳い文句を、お金の流れと登録の有無で確かめる

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黒岩警戒度

「AIが選んだ銘柄を、まずは無料で教えます」。最近、こういう入口の話をよく見かけるようになった。無料で渡された銘柄が値上がりした、という声も流れてくる。今号で洗いたいのは、特定のサービスが良いか悪いかではない。「無料の情報」から「有料の契約」へ進んでいく、その流れの型だ。出どころをひとつずつたどれば、立ち止まる場所はだいたい同じところに来る。私はそう見ている。

なぜ、入口が「無料」なのか

まず押さえておきたい。無料で何かをくれる相手には、後で回収する当てがある。これは意地悪な見方ではなく、商売の当たり前の話だ。無料の銘柄情報も同じで、たいていは次の段階——月額や年額の有料プラン、いわゆる投資助言の契約——への通路として置かれている。

つまり、入口の「当たった・当たらない」は、本題ではない。本題は、有料に進んだあと、こちらが払う金がどこへ行き、向こうの利益がどこから出ているのか、である。で、その利益の出どころは? ここが説明されない話には、いったん近づかないでおきたい。

「無料で当たった」という実績の、確かめにくさ

無料で渡された一銘柄が上がった、という話そのものは起こりうる。ただ、上がった例だけが手元に残り、外れた分は流れていく、ということも起こりうる。多くの人に別々の銘柄を配れば、誰かのところでは当たる。見せられた「当たり」を、こちらの手で検証できないかぎり、根拠としてはかなり弱い。そう考えておくほうが安全だと思う。

数字でほどく:無料の銘柄が「当たる」のはなぜか 仮に1,000人へ、それぞれ別の銘柄を「無料」で配ったとする。短期で上がるか下がるかが五分なら、単純計算で約500人のところでは「当たった」ことになる。当たった人にだけ「次は有料で」と声をかければ、受け取る側からは“よく当てる相手”に見える。これは予言の的中ではなく、配った母数の問題にすぎない。割り算でほどける話だ。

制度から見る:その助言に「登録」はあるか

感心している場合ではなく、一拍おいて制度の側から見たい。日本で、有価証券の価値などの分析にもとづいて投資の判断を助言し、その対価を受け取る業務(投資助言・代理業)を行うには、金融庁・財務局への登録が要る。登録のない相手による投資助言は、法令に反する。金融庁は「日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法です。」と明記している(金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」)。

では、登録があるかどうかを、こちらでどう確かめるか。金融庁は、免許・許可・登録を受けている事業者の一覧と検索機能を公開している。金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で、名称などを入れて検索できる。有料の契約を勧められたら、その前に、相手の正式名称をここで一度引いてみてほしい。「AI」「自動」といった名前の派手さと、登録の有無は別の話だ。

登録のない相手と取引した場合のリスクについても、当局ははっきり書いている。金融庁は無登録業者との取引について、「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるなどといったトラブルに遭ったという声が多く寄せられています」と注意喚起している(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。預けた金を引き出させてもらえない、相手と連絡が取れなくなる——その先で起きやすいのは、こういう局面だ。

「必ず」「元本保証」という言い回しについて 勧誘で「必ず儲かる」「元本も保証する」と言い切られたら、そこは赤信号だと思っていい。金融庁は詐欺的な投資勧誘の例として「上場確実ですので、必ず儲かります!元本も保証します!」といった言い回しを挙げて注意を促している。価格が上がるか下がるかは、本来だれにも言い切れない。それを言い切る言葉が出てきた時点で、話の確からしさより、こちらを急がせる目的のほうを疑いたい。

数字で見る、相談の増え方

「自分のまわりでは聞かない」と思うかもしれない。だが、件数は増えている。警察庁によれば、令和7年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は1,274.7億円(暫定値)とされる(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」)。暫定の数字ではあるが、規模の大きさは見ておきたい。

刑事事件の認知だけでなく、消費生活相談の側でも増えている。国民生活センターは、SNSをきっかけに著名人をかたる・つながりがあると持ちかけられる金融商品・サービスの相談が急増しているとして、「いったん振込してしまうと、被害回復が困難です!」と注意を呼びかけている(国民生活センター、2024年5月29日公表)。入口が「無料」でも、いざ金を入れたあとの取り戻しは難しい。順番として、入れる前に止まるほうがずっと確かだ。

立ち止まるための、ゆるい確認

気合いで見抜こうとすると疲れる。私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにしておけば、それだけで大半は防げる。そのうえで、次の点を確かめてほしい。

  • 有料を勧められたら、相手の正式名称を金融庁の登録一覧で先に引く
  • 「無料で当たった」実績を、自分の手で検証できるかどうかを基準にする
  • 「必ず」「元本保証」「今日中の人だけ」が出たら、それ自体を黄信号と見る
  • 有料プランの金額・解約条件・返金の可否を、契約前に文章で確認する
  • 利害のない誰かに、一度だけでも話してみる
迷ったとき用の一言 いい話なら、急がなくても明日も残っているはずだ。本当に健全な機会なら、こちらが登録を調べたり持ち帰って考えたりする時間を、相手は嫌がらない。嫌がられたら、それはそれで一つの答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 「無料の銘柄情報・AI投資ツール」は、有料の投資助言契約への入口になりやすい。本題は入口の的中ではなく、進んだ先のお金の出どころ
  • 投資助言の業務には金融庁・財務局への登録が要る。有料を勧められたら、契約前に金融庁の登録一覧で相手を引く
  • 「必ず」「元本保証」は当局も注意喚起する言い回し。SNS型投資詐欺は令和7年で被害額1,274.7億円(暫定値)と規模が大きい

対策は結局のところ、その場で決めない・登録を確かめる・第三者に話す。この3つに尽きる。