第439号黒岩検閲済 2026年8月8日 発行(不定期刊/前号:8月7日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|銘柄紹介記事×倍率実績×実行者不明指導の型

円高メリット銘柄を紹介する無料記事に、実行者不明のまま「半年で資金7.7倍」を掲げる無料マンツーマン指導リンクが挟み込まれる型を、景品表示法・金融商品取引法の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

「円高になると、どの会社の株が上がるんだろう」——素朴な疑問に答える無料記事を読んでいたら、実在する上場企業を8社ほど並べた、ごく真面目な体裁の解説だった。特定の記事は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れと表示の作りで調べた。本文の合間には何度か、別のブログへの外部リンクが挟まっている。そこに書かれているのは「億り人がマンツーマンで教えてくれる方法を試したら、約半年で資金7.7倍超えを達成した」という一文だ。教えてくれた人の名前も、実在するかどうかも、記事のどこにも出てこない。今号はこの件を洗いました。

まず、記事そのものは素直に見える

輸入コストの低下で業績が伸びやすいとされる、円高メリットが語られやすい業種の企業が8社ほど並ぶ。「輸入コストが下がるから円高で業績が伸びやすい」という説明も、教科書的で無理がない。この「まっとうさ」自体が、読み手の警戒をゆるめる働きをしている。怪しい話に見えない記事だからこそ、途中に挟まる誘導リンクも、同じ筆致の延長として読まれてしまう。

本文の合間に挟まる「資金7.7倍」

銘柄の解説が一段落するたびに、同じ趣旨の一文が繰り返し差し込まれる。「億り人が資産の増やし方を無料で教えてくれる」「マンツーマンレッスンを受けたら、半年で資金7.7倍」。誰が、どういう根拠で、どうやって指導しているのか。再現できる条件は何も書かれていない。景品表示法は、実際より著しく優れているように見せる表示を、次のように定めている。「実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して……著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し……選択を阻害するおそれがあると認められるもの」(不当景品類及び不当表示防止法第5条・e-Gov法令検索)。

「個人の感想です」という注記を添えれば済む話でもない。消費者庁は体験談を使った広告について、「商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある」と整理している(「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」消費者庁・2018年)。再現性を確かめられない体験談を前面に出す時点で、打消し表示があっても解消されない問題だということになる。

で、その利益の出どころは?——「無料」の先にあるもの

私が引っかかるのは倍率の数字そのものより、「無料」という言葉のほうだ。個人が投資手法を報酬を取って教えるなら、本来は投資助言業の登録が要る。金融庁のガイドブックは「投資助言に関する業務を行う場合」について、「投資判断に関し助言を行い、かかる投資助言業務に関し報酬の支払を受ける場合……投資助言・代理業の登録が必要となります」と説明する一方、「助言の内容がマーケット等に係る一般的な情報提供にとどまる場合や、投資助言業務に対する実質的な報酬も支払われないなどの場合は、投資助言・代理業の登録が不要となる可能性もあります」とも記す(「投資運用業等 登録手続ガイドブック」金融庁・2025年)。つまり「無料」を掲げること自体が、登録の要否をあいまいにする入口になり得る。この型が判で押したように「無料」を強調するのは、偶然ではないと私は見ている。

利益を断定的に示すことについても、金融商品取引法は業者に対し「顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」を禁じている(金融商品取引法第38条・e-Gov法令検索)。無登録の個人には直接は及ばない条文だが、金融庁自身、断定的な儲け話を無登録業者の危険サインとして名指しで挙げている(「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」金融庁)。「半年で資金7.7倍」という一文は、条文の建前を無登録者側にすり抜けて使っている、という見方もできる。

教えてくれる人の名前も、連絡先も出てこない

もう一つ確かめたいのは、この「億り人」を名乗る人物の氏名・所在地・連絡先だ。特定商取引法は、無料の入口の先で商売として役務を提供する場合、事業者に表示義務を課している。「販売業者又は役務提供事業者は……当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない」(「特定商取引法ガイド」通信販売のルール・消費者庁)とされ、具体的には「販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号」の表示が求められる(同法施行規則第8条第1号)。指導者が実在する事業者であるなら、本来ここまで確かめられるはずだ。名前すら出てこない時点で、私はまだ「調べようがない」段階だと考えている。

この型で確かめておきたいこと 銘柄解説そのものの正誤ではなく、そこに挟まれた「実績」を出している主体が誰なのか。氏名・所在地・連絡先・登録の有無——ここが空欄のまま先へ進む話には、いったん近づかないでおきたい。

数字で見る、同じ構造の相談

この型そのものを名指しした公的資料は見当たらないが、近い構造の相談は繰り返し報告されている。国民生活センターは「近年みられる手口では、初めから高額契約を勧誘するのではなく、無料や少額の情報商材を販売してから高額契約を勧誘する事例があります」と報告し、情報商材に関する相談件数が2017年度に6,593件と、2013年度の7倍超に増えたことを示している(「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」国民生活センター・2018年)。オンラインサロンを入口にした相談事例でも、「SNSでDMが届き、無料通話アプリで連絡……情報商材の内容をオンラインサロンで勉強できると勧誘され約30万円で入会」という経過が記録されており、「無料の入口→有償の指導」という骨格は共通している(「新たな“もうけ話トラブル”に注意」国民生活センター・2021年)。

  • 「実績」を出している人物の氏名・所在地・連絡先を確かめられるか
  • 投資助言として報酬を取る場合、投資助言・代理業の登録が確認できるか
  • 倍率・金額の実績が、自分で再現・検証できる条件つきで示されているか
  • 「無料」の先で、いつ・いくらの費用が発生するのか事前に明示されているか
  • その場で申し込まず、いったん持ち帰って調べる時間を取れているか
迷ったとき用の一言 銘柄解説が丁寧なことと、その先の「無料指導」が健全であることは、別の話だ。本体の記事がまともなら、隣に挟まる話もまともだろう——その思い込みが、一番効く仕掛けかもしれない。

この記事のまとめ

  • まっとうな銘柄解説の合間に、実行者不明の倍率実績を掲げる無料指導リンクが挟まる型がある
  • 「無料」を強調すること自体が、投資助言登録の要否をあいまいにする入口になり得る
  • 指導者の氏名・所在地・連絡先が示されない時点で、まだ確かめようがない段階

すでに個人情報を渡してしまった、費用を求められている、という場合は、これ以上進めないことを先に。消費者ホットライン「188」、金融庁の金融サービス利用者相談室など、正規の窓口に一度話してほしい。(黒)