SNS広告の著名人なりすましからLINEの個別チャットへ進み、無登録の海外FX業者で出金前に仮想通貨送金を求められる型を、警察庁・金融庁・消費者庁・国民生活センターの一次情報で調べた
また一つ、広告の顔から始まる話を調べた。特定の事業者や個人は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、公的資料の数字と仕組みで追った。今回の入口はSNSの広告に写る「著名人」だった。高級車やブランド品の写真とともに、投資での成功が語られている。裏を取ろうとしても、本人の公式な発表はどこにも見当たらない。たどっていくと、その先はいつもの型に収まっていた。
SNS広告に写る「著名人」は、本人の許可を得ているのか
消費者庁は、SNSを通じた「もうけ話」について「著名人・有名人のなりすましと考えられる事例が令和5年度下半期以降、増加傾向にあります」と注意を呼びかけている(消費者庁)。警察庁の資料でも「著名人の画像や動画を無断で使用した広告が確認されており、『必ずもうかる』、『元本保証』などの文言を含む広告も見られた」と記されている(警察庁(令和8年公表))。同じ資料によれば、令和7年のSNS型投資詐欺で最初の接触に使われたツールは「Instagramが1,934件」ともっとも多い。高級な暮らしぶりの画像も、本人が写っていることも、それだけでは信頼の根拠にならない。
フォロワーとのやり取りは、静かにLINEの個別チャットへ移される
国民生活センターは、SNS経由の投資勧誘について「SNSやインターネット上の広告、SNSで知り合った人からの紹介等をきっかけにSNSの投資グループに誘われ、そこでFX取引を持ち掛けられるという新たなパターンが目立つようになっています」と報告している(国民生活センター(2024年))。公開の場での華やかなやり取りから、個別のLINEチャットへ移されたところで、外から見えるやり取りは途絶える。第三者に相談しづらい状況が、そこで一つできあがる。
その海外FX業者は、日本で商売をしていいのか
個別チャットの先で勧められるのは、たいてい聞き慣れない海外のFXブローカーだ。消費者庁は「金融商品取引業の登録を受けていない業者(無登録業者)とのFX取引にかかるトラブルが多発しています。消費者保護の観点から、無登録業者との取引はしないでください」と注意を呼びかけている(消費者庁)。「海外の会社だから日本の法律は関係ない」という説明を見かけることもあるが、国民生活センターは「海外で金融商品取引のライセンスを持つ業者であっても、日本で登録を受けずに、日本に居住する者に対して金融商品取引を業として行うことは禁止されています」とはっきり述べている(国民生活センター(2024年))。海外のライセンスの有無と、日本での登録の有無は、別の軸にある話だ。
出金の段になって、請求の名目が変わっていく
画面の残高は増えているのに、出金しようとすると引き出せない。ここからが、今回の型の核心だと私は見ている。国民生活センターは、著名人がらみのSNS投資勧誘トラブルについて「こういった相談が、全国の消費生活センター等に寄せられており、2022年度と比べて約9.6倍と急増しています」と報告している(国民生活センター(2024年))。相談の中身は「追加費用を支払わないと出金できないと言われた」「相手と連絡が取れなくなった」というものだという(国民生活センター(同資料))。手数料、次に税金、と名目を変えながら、出金の一歩手前で足止めされる仕組みだ。
断ると、こんどは仮想通貨での送金を求められる
手数料名目の送金にも応じないでいると、今度は仮想通貨(暗号資産)での送金へ切り替わることがある。金融庁・消費者庁・警察庁は連名で、暗号資産がらみのトラブルについて「知人にもうかるからと暗号資産を勧められ振込んだが、出金するために追加の支払いが必要だといわれた」という相談例を挙げている(金融庁・消費者庁・警察庁)。警察庁の確定値では、令和7年の暗号資産送信型の認知件数は前年から927.3%増の1,243件、被害額は196.9億円にのぼる(警察庁(令和8年公表))。振込先が銀行口座から個人ウォレットへ変わるだけで、送った先を後から特定する難しさは、まったく別の水準になる。
数字で見る、SNS型投資詐欺の広がり
警察庁の確定値によると、令和7年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,523件、被害額は1,288.0億円で、いずれも前年より約48%増えている(警察庁(令和8年公表))。広告の顔から始まる話は、いまも件数として積み上がり続けている、ということでもある。
- 著名人が写る広告は、本人の公式発表・所属先を通じて確認する
- SNSの公開グループから個別のLINEへ移された時点で、いったん距離を取る
- 「海外でライセンス取得済み」という説明だけでは、日本での登録の有無は分からない
- 出金前の追加請求は、手数料でも税金でも、名目が変わっても支払わない
- 仮想通貨での送金を求められたら、それ自体を答えだと考えて送らない
- 迷ったら消費者ホットライン「188」(消費者庁)へ相談する
この記事のまとめ
- 広告の著名人は、SNS投資グループ・LINEの個別チャットへの入口として使われることがある
- 海外のFX業者でも、日本の居住者向けに無登録で営業していれば違法という点は変わらない
- 出金前の請求は、手数料→税金→仮想通貨と名目や手段を変えながら続くことがある
で、その利益の出どころは?――名目が変わっても、私が聞きたいことはいつも一つだけだ。