海外FX業者の「入金ボーナス」を入口に、SNS投資グループの指示通り送金させ出金不能にする型を、金融庁・警察庁・国民生活センターの一次情報で調べた
「入金額に応じてボーナスが証拠金に上乗せされます」——海外のFX業者から、そんな案内を受けたという相談をいくつか見た。最初はキャンペーンの話だったはずが、いつのまにかSNSで知り合った「投資グループ」の担当者から、次はここへいくら振り込んでください、と指示されるようになる。入口のボーナスと、出口の投資グループ。今号はこの二つを洗いました。(黒)
個別の業者名・グループ名は挙げない。案件をまたいで現れる、勧誘の一つの型として見ていく。
「入金するほど増える」という入口の見せ方
「今月末までに入金すれば、入金額に応じたボーナスが証拠金に上乗せされます」。海外FX業者の広告でよく見る文言だ。数字だけ見れば単純な販促に見える。ただ、確認できる範囲では、キャンペーン商法そのものを主題にした公的機関の注意喚起は見当たらなかったものの、海外FX個別の相談では近い構図が報告されている。国民生活センター越境消費者センター「海外FX取引やバイナリーオプション等の外国為替取引に関する相談」には、「キャンペーン期間内に申込みをし、五万円を入金したのですが、一向にキャッシュバックされません」という相談が記録されている。ボーナスという言葉は、入金を後押しする理由づけとして機能しているだけで、実行を保証するものではない、とまずは見ておきたい。
そもそも、その業者は日本の登録を受けているか
誘導される先の取引プラットフォームが、海外の会社を名乗るFX業者であるケースは多い。金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」は、「海外所在業者であったとしても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引を業として行う場合は、金融商品取引業の登録(日本の『金融商品取引法』に基づく登録)が必要です」と明記する。海外の名称やそれらしいウェブサイトが整っていることと、登録の有無はまったく別の話だ。そのうえで金融庁「無登録業者との取引は要注意!!~無登録業者との取引は高リスク~」は、無登録業者との取引について「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるなどといったトラブルに遭ったという声が多く寄せられています」と注意を促す。ボーナスの多寡より先に、まず確かめるべきはここだと私は見ている。
SNSの「投資グループ」で、担当者の指示通りに振り込む
この型でよく見る流れがもう一つある。SNSで知り合った相手からグループチャットに招かれ、そこにいる「担当者」の指示に従って、証拠金や追加費用を振り込んでいく、というものだ。警察庁「SNS型投資詐欺」は、「SNSのダイレクトメッセージで接触後、被害者をLINEなどの他のSNSに誘導し、『株や暗号資産に投資すれば利益が得られる』などと言葉巧みに被害者を信用させ」と、その典型的な流れを説明している。国民生活センター「SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル」には、「消費者は投資グループ内での指示通りに、指定された個人名義の口座に次々とお金を振り込みますが、最後はお金を一切引き出せなくなるという詐欺的な手口です」とある。担当者に取引の判断をゆだねているような形になっていながら、実際に振り込んでいるのは業者の口座ではなく個人名義の口座だという点は、覚えておいてほしい。
数字でほどく:相談件数と被害額はどう動いているか
感覚ではなく数字で見ておきたい。同資料の参考資料によれば、FX取引に関する相談件数は2020年度1,584件→2021年度3,021件→2022年度2,536件→2023年度2,204件(同時期比較)という推移で、高い水準が続いている。SNSを起点とした投資詐欺全体で見ても、警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」(確定値)は認知件数9,523件・被害額1,288.0億円(前年比+48.5%/+47.9%)としており、警察庁「令和8年5月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」(暫定値)でも、SNS型投資詐欺は5,099件(+2,843件)・700.4億円(+426.3億円)と、前年同期からさらに積み上がっている。件数も金額も、減る気配はない。そう見ておいた方がいい。
入る前に確認したいこと
- 案内された業者名を、金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」などで照らしたか
- ボーナス・キャッシュバックの実行条件が、契約書面など確かめられる形で示されているか
- 振込先が、業者名義ではなく個人名義の口座になっていないか
- 「グループの担当者の指示通りに」を、自分で検証せず振り込む理由にしていないか
すでに入金してしまった方へ
すでに振り込んでしまった方へ。まず一つだけ言っておきたい。お金を取り戻すこと以上に、これ以上の追加入金に応じないことが先だ。
- 「ボーナスを受け取るには追加入金が必要」などと言われても、その場で払わない
- グループのやり取り・広告の文言・振込明細を保存する
- 振込先の名義・口座番号、担当者のIDをわかる範囲で記録する
- 消費者ホットライン「188」、緊急でない相談は警察相談専用電話「#9110」に相談する
私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。
この記事のまとめ
- 「入金額に応じたボーナス」は入口の数字にすぎず、こちらの権利を保証するものではないこと
- SNSの投資グループで担当者の指示通りに個人名義口座へ振り込む型は、最後に出金できなくなる報告が国民生活センターに寄せられていること
- SNS型投資詐欺は件数・被害額とも増加が続いており、令和7年確定値で認知件数9,523件・被害額1,288.0億円に達すること
で、そのボーナスの原資はどこから出ているのか。広告の数字でも、担当者の口約束でもなく、契約と登録の有無でしか確かめられない。そう考えておいた方がいい。(黒)