第383号黒岩検閲済 2026年7月24日 発行(不定期刊/前号:7月24日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|LINE二段階誘導×無登録海外FXの型

SNSの個人アカウントから運営の公式LINEへ、二段階で誘導される無登録海外FX勧誘の型を、警察庁・金融庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

SNSで知り合った相手とLINEでやり取りを続けていたら、ある日「こちらが運営の公式アカウントです、登録をお願いします」と、もう一つのLINEアカウントへ案内される——という相談をいくつか見た。個人とのやり取りだけで完結せず、わざわざ「運営」という一枚を挟んでくる。なぜそんな遠回りをするのか。今号はこの件を洗いました。(黒)

個別の企業名・アプリ名は挙げない。案件をまたいで現れる、勧誘の一つの型として見ていく。

なぜ「個人アカウント→運営の公式LINE」と、わざわざ二段階にするのか

最初に声をかけてくるのは、投資に詳しそうな個人のアカウントであることが多い。世間話や日常の投稿を挟みながら関係を築き、ある程度の信頼ができたころに「本格的にやるなら、こちらの公式アカウントで」と、運営名義の別アカウントへ橋渡しする。個人の顔が見える段階で警戒を解かせ、実際の金銭のやり取りは顔の見えない「運営」が引き取る——役割を分けている、というのが私の見立てだ。

金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」は、「LINEのグループへの参加や詐欺サイトへのアクセスを誘導されます。また、個人のLINEアカウントやSMSに突然連絡が来るケースも確認されています」と注意を促している。個人のアカウントから公式アカウントへ、という二段構えは、金融庁が指摘する型そのものに近い。

最初の接触は、広告かダイレクトメッセージから

警察庁「SNS型投資詐欺」によれば、当初の接触手段は「バナー等広告が45.6%、ダイレクトメッセージが30.9%」を占めるという。つまり大半は、こちらが検索したわけでも、知人から紹介されたわけでもなく、向こうから広告か個別メッセージで近づいてくる。その時点で、こちらの興味や不安に合わせて言葉を選んでいる、という前提で見た方がいい。

見せられる「利益」の中身

運営の公式LINEに移った後、専用アプリやサイトの画面に「利益が出ている」ことを示す数字や残高が表示される、という報告がある。金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」は、「虚偽の成功談をもとに投資話を持ち掛ける。架空の口座で取引させ、しばらくは利益が出て出金もできるかのように装う」手口を明確に指摘している。

個別の相談事例の中には、この「利益実績」として見せられる金額が、実際には取引で得た利益ではなく、口座開設時などに付与されたボーナスやクレジットの数字だったという声もある。この部分は公的機関が名指しで解説しているわけではないが、「取引実態のない画面上の数字で利益が出ているように装う」という金融庁の指摘の延長線上にある話として、注意しておいて損はないと私は考えている。

画面の数字は、出金できて初めて「利益」 アプリの画面に出ている数字は、それ自体では何の証拠にもならない。実際に自分の銀行口座へ出金できたかどうか——それだけが、利益が本当に存在するかの唯一の確認方法だ。

その口座、日本の金融庁には登録されていない

誘導先の取引アプリが、海外の会社を名乗るFX・投資業者であるケースは多い。金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」は、「海外所在業者であったとしても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引を業として行う場合は、金融商品取引業の登録が必要です。日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは、禁止されています」と明記している。海外の会社名が書いてあること自体は、合法性の裏付けには一切ならない。

そして、その先で起きることについても、金融庁は具体的に書いている。金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」によれば、「預けた資金を出金しようとしたときに、これまで出金ができていたにもかかわらず、出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるなどといったトラブルに遭ったという声が多く寄せられています」。「これまで出金できていた」という一文が重い。序盤で一度でも出金できると、その業者への警戒は大きく下がってしまうからだ。

「利益の一部を運営に払う」という報酬の形

この種の勧誘の中には、含み益が出た段階で「成果報酬として、利益の一定割合(例として1割程度)を毎月運営側に支払うルールです」と説明されるものがある、という報告もある。この具体的な割合や支払いの仕組みそのものを名指しで扱った公的資料は見当たらなかったため、この部分は個別の観測情報として留めておきたい。

ただし、方向性は覚えておいた方がいい。まっとうな金融商品取引業者であれば、報酬体系は登録業者としての契約書・約款に明記され、投資家側が「成果報酬」の名目で運営へ追加送金するような形はまず取らない。「儲かった分の一部を、こちらから運営に振り込む」という流れが出てきた時点で、前段で見た「出金拒否・連絡不通」の土台の上に、もう一段の入金要求が乗っている状態だと考えた方がいい。

迷ったとき用の一言 「利益が出たら、こちらからも払ってください」——普通の取引所は、そんな請求をしてこない。請求された時点で、もう出金する気がない相手だと考えていい。

運営者の名前も、法律上の表示も見えない

この型の勧誘サイトには、事業者の氏名・住所・確実に連絡が取れる電話番号が見当たらないことが多い。通信販売の広告表示については、特定商取引に関する法律 第11条が、主務省令で定める事項の表示を事業者に義務づけている。消費者庁「通信販売広告について」の解説によれば、個人事業者なら氏名・住所・電話番号、法人なら名称・住所・電話番号(代表者名等)の表示が必要で、電話番号は「確実に連絡を取れる番号」でなければならず、「販売業者等が意図的に、常に電話を取らない状態にしている場合等は、確実に連絡が取れる番号を表示していることにはならない」とされている。

もっとも、投資助言やファンドの勧誘そのものは金融商品取引法の規制対象であり、特定商取引法の射程とは別の話になる場合もある。「特商法の表示がないから即アウト」と単純化はできないが、まっとうな事業者ほど、法律の要不要にかかわらず自分の名前・住所・連絡先をきちんと出す。名前も所在地も見えない相手に、大きなお金を預ける理由はない。

入る前に確認したいこと

  • 誘われた業者の名前を、金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確認したか
  • 「利益」として見せられている数字を、実際に自分の銀行口座へ出金できたか
  • 運営会社の氏名・住所・確実に連絡が取れる電話番号が、どこかに明記されているか
  • 「儲かった分の一部を運営に払う」といった、こちらから追加で振り込む名目が出ていないか

すでに入金してしまった方へ

すでに入金してしまった方へ。まず一つだけ言っておきたい。お金を取り戻すこと以上に、これ以上の追加入金や「出金のための手数料」「成果報酬」に応じないことが先だ。

  • 「出金には手数料や成果報酬が必要」と言われても、その場で払わない
  • LINEのやり取り・アプリの画面・振込明細のスクリーンショットを保存する
  • 相手の会社名・LINE ID・振込先口座を、わかる範囲で記録しておく
  • 消費者ホットライン「188」・最寄りの消費生活センターに相談する

私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • 「個人アカウント→運営の公式LINE」という二段階誘導は、金融庁・警察庁が指摘するSNS型投資詐欺の典型的な型であること
  • 画面上の「利益」は、実際に自分の口座へ出金できて初めて意味を持つこと
  • 海外業者でも日本居住者向けなら金融商品取引業の登録が必要で、無登録業者は出金拒否・連絡不通のトラブルが多いこと

で、その利益の出どころは? 画面の数字でもなく、運営の言葉でもない。自分の口座に着金するかどうか、それだけがすべてだ。(黒)