第436号黒岩検閲済 2026年8月7日 発行(不定期刊/前号:8月6日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > 著名人AI合成広告×遠隔操作アプリ×プリペイド決済の型
調査報告|著名人AI合成広告×遠隔操作アプリ×プリペイド決済の型

著名人のAI合成広告と海外番号からの電話勧誘で進む、遠隔操作アプリとプリペイド決済を求める暗号資産自動売買サイトの型を、警察庁・金融庁・IPAの一次情報で調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

また一つ、広告のクリックから始まる話を調べた。特定の事業者や個人は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、公的資料の数字と仕組みで調べた。今回の入り口はSNSの広告だった。見覚えのある実業家の顔と声で、暗号資産の自動売買サイトへの投資を勧める動画が流れる。表情も口の動きも、本人が話しているようにしか見えない。たどっていくと、その先はいつもの型に収まっていた。

「本人の声」に見える広告は、なぜ見分けがつかないのか

消費者庁は、SNSを通じた「もうけ話」について「著名人・有名人のなりすましと考えられる事例が令和5年度下半期以降、増加傾向にあります」と注意を呼びかけている(消費者庁)。国民生活センターも、著名人を名乗る金融商品・サービスの相談件数が「2022年度170件から2023年度1,629件へ急増した」と報告している(国民生活センター(2024年))。顔や声が本物に見えることと、本人が関わっていることは、別の話だ。

フォーム送信のあと、海外番号から電話がかかってくる

広告の先には、氏名・メールアドレス・電話番号を入力するフォームが置かれている。送信すると、折り返しの電話がかかってくる型だった。電話口では、「もし過去に投資していたら、いまごろこれだけ増えていた」という仮の話で高い利益を示され、期待を膨らませてから本題に入る運びだったという。急かされている時点で、いったん持ち帰っていい。

ここまでの型に共通する狙い 著名人の顔と声で信頼を作る → フォーム送信 → 電話で期待値を上げる。ここまでの流れは、いずれも「考える時間と、外に相談する余地を奪う」ことを目的にしていると私は見ている。

「サポート」を名目に、遠隔操作アプリの導入を求められる

電話の先で、パソコンやスマートフォンに遠隔操作アプリを入れるよう求められる型がある。警察庁は、こうした手口について「この遠隔操作ソフトウェア等をインストールしてしまうと、アカウントを乗っ取られ、不正送金等の被害に遭うおそれがあります」と注意を呼びかけている(警察庁「サポート詐欺対策」)。IPA(情報処理推進機構)は、悪用される具体的なソフトとして「『AnyDesk』『LogMeIn Rescue』『TeamViewer』『UltraViewer』などの既製のものです」と挙げている(IPA(2024年))。遠隔操作アプリそのものは、正規の遠隔サポートにも使われる技術だ。だが、投資サイトへの登録の流れの中で導入を求められた時点で、それはもう「サポート」の範囲を超えている。

カード決済が通らないと、プリペイドカードの購入を求められる

入金の段になって、クレジットカード決済が「エラー」になり、代わりにコンビニなどでプリペイド型電子マネーを購入し、その番号を伝えるよう求められる型もある。金融庁は2015年の時点で、「プリペイドカードを消費者に購入させ、そのカードに記載された番号等をメールやファックスなどの方法で伝えさせる手口に移行してきています」と注意を呼びかけていた(金融庁(2015年))。国民生活センターも「コンビニ等で電子マネーカードを購入するよう指示し、番号を教えさせる方法は全て詐欺です」と言い切っている(国民生活センター(2024年))。カードの番号を、電話や画面の指示だけで誰かに伝える場面があったら、それ自体が答えだと思っていい。

そもそも、その「AI自動売買」は誰の登録を受けているのか

金融庁は「業者の所在地が海外であっても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引行為を業として行う場合は、日本で金融商品取引業の登録が必要です」としている(金融庁)。「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」という勧誘文句自体、金融庁が名指しで注意を呼びかけている型でもある(金融庁)。登録を受けていない業者について、金融庁は「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず」と説明する(金融庁「無登録業者との取引は要注意」)。表示された広告の派手さと、登録の有無は、まったく別の軸にある数字だ。

数字で見る、SNS型投資詐欺の広がり

警察庁の確定値によると、令和7年のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は15,168件だった(警察庁(2026年))。SNSの広告や動画から始まる話は、いまも件数として積み上がり続けている、ということでもある。

  • 顔や声が本物に見えても、本人の公式発表・所属先を通じて確認する
  • 電話で「過去に投資していたら」という仮の利益提示をされたら、その場で契約しない
  • パソコン・スマホへの遠隔操作アプリの導入は、求められた時点で一度切る
  • カードが通らずプリペイドカードの購入・番号連絡を求められたら、それ自体を答えだと考えて支払わない
  • 迷ったら消費者ホットライン「188」(消費者庁)へ相談する
迷ったとき用の一言 本当に登録を受けた事業者なら、こちらの端末を遠隔操作する必要も、プリペイドカードで支払わせる必要もない。求められた時点で、それ自体が答えだと私は思う。

この記事のまとめ

  • 著名人の顔・声を使ったAI合成広告から、フォーム送信→電話勧誘→遠隔操作アプリ導入という型がある
  • 決済が通らないと、プリペイド型電子マネーでの支払いを求められることがある
  • 遠隔操作アプリの導入・プリカ番号の伝達は、求められた時点でどちらも一度止めていい

急かされたら、まず自分の手で確かめる時間を取り戻したい。