「勝率9割」と断定して見せる投資サービスのバナー広告が、株主優待解説記事に並ぶ型を、金融商品取引法・景品表示法の一次情報で調べた
株主優待や権利確定日の解説記事を読んでいたら、ページの上と下に「勝率9割、騰落率6割」という文字が置かれていた。本文の株主優待の話とは関係のない広告だが、数字だけは妙にはっきりしている。こういう並びを何度か見かけたので、今号はこの「情報記事の脇に、断定的な実績を謳うバナー広告が置かれる」型を調べてみた。特定の記事・サービス名は出さない。案件をまたいで繰り返し現れる組み合わせとして読んでほしい。
なぜ情報記事に、この手のバナーが並ぶのか
株主優待や権利確定日というテーマは、投資を始めたばかりの人がよく検索する言葉だ。調べ物のついでに投資関連の広告を目にすること自体は、珍しくない。問題はそこではなく、広告に添えられた数字の性質にあると私は見ている。
「勝率9割」「騰落率6割」と言われると、直前まで読んでいた解説記事の落ち着いた書き口ごと、その数字も信頼してしまいやすい。情報記事の側が積み上げた信頼感が、隣にある広告へそのまま横流しされる。そういう作りになっている。
「勝率9割」を、まず割り算で確かめる
勝率という言葉だけでは、実は何もわからない。仮に10回のうち9回勝って1回負けたとする。1回の利益が100円、1回の負けが1,000円だったらどうなるか。100円×9勝から1,000円×1敗を引くと、答えはマイナス100円になる。勝率9割でも、トータルでは負けている計算になりうる。
つまり勝率という数字は、1回あたりの損益の大きさとセットで見ないと意味を持たない。「勝率」だけを取り出して信頼するのは危うい、というのがまず確かめておきたい一点だ。騰落率6割も同じで、何を分母に置いた6割なのかが説明されなければ、検証のしようがない。
断定的な実績表示は、法律上どう扱われるか
「必ず儲かる」に近い断定表示には、法律の側にも歯止めがある。証券取引等監視委員会は「有価証券の価格等が必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘することを禁止」していると説明する(金融商品取引法38条)。この規定は登録を受けた金融商品取引業者への行為規制だが、断定的な言い切りそのものが法の目から警戒されている、という点は変わらない。
表示の中身についても、消費者庁は景品表示法の優良誤認について「実際のものよりも著しく優良であると示すもの」を禁じるとしている。「勝率9割」がこの一般原則に照らして問題となり得るかどうかは、裏付けとなる検証期間・母数が示されているかにかかっている。で、その9割は、何回のうちの9割なのか。
広告の作られ方そのものにも、型がある
この種のバナー広告は、多くが成果報酬型(アフィリエイト)の仕組みで動いている。消費者庁の検討会報告書は「アフィリエイターが成果報酬を求めて虚偽誇大広告を行うインセンティブが働きやすい」という特性を指摘している。クリックや登録の数だけ報酬が発生する仕組みなので、数字を控えめに書く動機がそもそも働きにくい。
誘導先が投資助言サービスであれば、運営元が登録業者かどうかも確かめておきたい。金融庁は無登録業者は投資者保護の態勢が当局側で確認できず、登録業者と同等の態勢が整っていない可能性が高いと注意を促している。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
「勝率」「必ず」という言葉を見た瞬間に、いったん距離を取る。私はそれをクセにしてしまうのがいいと思っている。そのうえで、
- 勝率だけでなく、1回あたりの利益と損失の大きさもセットで確認する
- 実績の検証期間・母数・元データが公開されているか調べる
- 誘導先の運営会社が投資助言・代理業として登録されているか、金融庁の登録業者一覧で確かめる
- バナーはその場でクリックせず、一晩置いてから判断する
この記事のまとめ
- 情報記事の脇に「勝率○割」と断定的な実績を謳うバナー広告が並ぶ型を調べた
- 勝率は1回あたりの損益とセットで見ないと意味を持たない
- 断定的な実績表示は金商法38条・景品表示法の一般原則に照らして検証の対象になり得る
確かめる手順は結局、数字の裏(検証期間・母数)を聞く、登録状況を調べる、その場で決めない。この3つに尽きる。