「AIが選ぶ株に乗るだけで、利益は無税」という投資助言の型を、無登録業者への警告制度と課税原則の一次情報で調べた
「AIツールが教えてくれる銘柄を買うだけで、ほぼ何もせず稼げる。しかも利益には税金がかからない」——SNSで著名な投資家を名乗る人物が、こういう話を持ちかけてくる型がある。特定の人物・案件名は挙げず、「継続的な銘柄の指示」「無税利益」「メディア掲載実績」という3つの要素を、公的資料の数字と仕組みからほどいてみる。
「銘柄を教えるだけ」でも、継続すれば投資助言業にあたる
財務省関東財務局は投資助言・代理業を「顧客に対して投資顧問契約に基づき、有価証券の価値等又は金融商品の価値等(デリバティブ取引を含む)の分析に基づく投資判断に関し、助言を行うもの」と定義している(投資助言・代理業関係(財務省関東財務局))。AIが選んだ銘柄を継続的に案内し、その指示に乗って売買してもらう——これは形を変えた投資判断の助言に見える。同ページは「投資助言・代理業を業として開始しようと考えている方は、事前に法律に基づく登録が必要となります」ともしている。つまり、継続的に銘柄を指示する行為は、まず登録が前提になっている仕事だ、ということになる。
「利益は無税」という言葉を、まず割り算で確かめる
株の利益に税金がかからない、という話も検証してみたい。金融庁のNISA特設サイトは「通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります」としている(NISAを知る(金融庁))。つまり、株の利益は本来、5分の1近くが税金で持っていかれる計算になる。無税になるとすれば、それはNISAのような非課税制度を使った場合に限られるはずだ。
だが、その非課税枠にも上限がある。同サイトによれば「生涯を通じての非課税保有限度額が新たに設けられ、1,800万円が上限となりました」という。無条件・無制限の無税ではない。国税庁のタックスアンサーでも、株式等の譲渡益は原則「20%(所得税15%、住民税5%)」の申告分離課税だと明記されている。「無税利益」とだけ言われて、その根拠——NISA口座を使うのか、上限はどうなるのか——が説明されないなら、そこが一番聞きたいところだ。で、その利益の出どころは?
「メディアに掲載された」実績の中身
「メディアに掲載されている」という実績も、よく見かける信頼の演出だ。消費者庁は「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください」で、「著名人・有名人のなりすましと考えられる事例が令和5年度下半期以降、増加傾向にあります」としている。この文脈で語られる「メディア掲載」の多くは、対価を払えば複数の媒体に配信できるプレスリリースサービスであることが多い。編集部が取材して記事にした、というのとは意味が違う。
消費者庁は、広告であることを隠して第三者の評価であるかのように見せる表示について「広告・宣伝であることが分からないと、企業ではない第三者の感想であると誤って認識してしまい、その表示の内容をそのまま受けとってしまい」と、ステルスマーケティング規制の趣旨を説明している(ステルスマーケティングに関する景品表示法の考え方(消費者庁))。「掲載実績」が編集部の取材によるものなのか、お金を払って配信したものなのか——ここは分けて考えたい。
数字で見る、この型の広がり
警察庁によると、令和7年におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は9,538件、被害額は1,274.7億円で、前年同期に比べて認知件数は48.7%増えている(令和7年におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(警察庁))。接触の経路はバナー等広告が3,760件、ダイレクトメッセージが3,576件で、「著名人の画像や動画を無断で使用した広告が確認されており」ともされている。同庁はSNS型投資詐欺の手口紹介ページで「著名人が無料で投資教室を開催したり、確実に利益が出る投資話を無料で教えたりすることは基本的にありません」とも述べている。
- 「銘柄を教えるだけ」でも、継続的な助言であれば投資助言業の登録が前提になる
- 「利益は無税」と言われたら、非課税制度の種類と上限を具体的に確認する
- 「メディア掲載」が取材によるものか、有料の配信サービスかを見分ける
- 発信者の過去の活動歴は、名前や見た目が変わっていても一度検索してみる
- 迷ったら、金融庁の登録業者検索でその会社の名前を照らしてみる
この記事のまとめ
- 「AIが教える銘柄に乗るだけ」も、継続的な助言であれば投資助言業の登録が前提になる
- 「利益は無税」は非課税制度の条件次第であり、無条件の無税は存在しない
助言の登録、利益の課税、実績の出どころ——この3つを確かめる習慣が、結局いちばん確実な防御になると思う。