無料の注目株記事からLINE配信へ誘う入口が、実績を強調する言葉とともに有償の投資助言へ進む型を、国民生活センターの急増データと金商法の一次情報で調べた
今号はこの件を洗いました。個別の銘柄名を挙げて解説する体裁の無料記事を読んでいたら、末尾に無料のLINE配信サービスへの登録を勧める文言が続いていた、という相談を最近続けて目にする。記事そのものに書かれている株価や会社概要はもっともらしく、間違いを指摘できるような内容でもない。ただ、その先で何が起きるのかは、記事だけでは分からない。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。
無料の株情報記事、その先にあるもの
この型の入口は、投資の勧誘には見えない。「注目銘柄」「短期急騰銘柄」といった見出しの、ごく普通の株式情報記事の体裁を取っている。本文は個別銘柄の株価や事業内容の紹介で埋まっており、末尾に小さく「特定の銘柄の売買を推奨するものではありません」という断り書きが添えられていることも多い。
問題は、その断り書きの直後に現れる文言のほうだ。こうした記事の末尾やリンク先では、「口コミで高評価」「利用者が実際に利益を手にしている」「無料で騰がる銘柄を教えてもらえる」といった言葉が並び、無料のLINE配信サービスへの登録を促す。記事本体が"無料の読み物"であるのに対し、登録した先に何が待っているかは、記事のどこにも書かれていない。
なぜ、この種の相談が急増しているのか
国民生活センターは、SNSをきっかけに著名人を名乗る相手や、投資関連の情報発信をきっかけに接触してくる相手からの勧誘トラブルについて、「こういった相談が、全国の消費生活センター等に寄せられており、2022年度と比べて約9.6倍と急増しています」と報告している(国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」、令和6年5月29日)。
消費者庁も同様に、「投資や副業といった儲け話をきっかけにした消費者トラブルが年齢を問わず依然として続いています」と、SNS発の"もうけ話"への注意を継続的に呼びかけている(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」)。無料の株情報記事も、この"もうけ話"の入口の一形態として扱われていると私は見ている。
「無料」「実績」という言葉が意味すること
「無料で注目株を教える」という誘い文句そのものが、実は行政の注意喚起の対象になっている。金融庁は、SNS上の投資勧誘の典型的な手口として「無料で注目株や利益確定銘柄の情報を提供すると偽る」ことを挙げている(金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください」)。無料という言葉自体が、すでに一つの手口の型として記録されている、ということになる。
「利用者が実際に利益を手にしている」といった実績の強調も、無条件に信じていい表現ではない。景品表示法は、実際よりも著しく優良だと示す表示を「優良誤認表示」として禁じている(e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法」第5条第1号)。掲げられている実績の数字を、自分の手で裏取りできるかどうかを、まず基準にしたい。
さらに「必ず儲かる」「確実に利益が出る」に近い言い切りが混じっている場合は、もう一段注意したい。消費者契約法は、将来の価額や利益といった不確実な事項について断定的な判断を示して勧誘した場合、その契約を取り消せると定めている(消費者庁「逐条解説 消費者契約法」第4条第1項第2号)。言い切って誤解させることは、この規定でいう断定的判断の提供にあたりうる、という制度がすでに用意されている。で、その"利用者が実際に利益を手にしている"という数字の出どころは、自分で確かめられるものだろうか。
無料の先に、有償の助言が来たとき
無料のLINE配信に登録したあと、有償のプランや個別サポートの案内が来る段になったら、もう一つ確かめたい制度がある。相手に報酬を支払う形で株の投資判断について助言を受ける契約は、金融商品取引法上の投資顧問契約にあたり、これを業として行うには投資助言・代理業の登録が必要と定められている(金融庁「投資運用業等登録手続ガイドブック」)。
登録を受けていない業者について、金融庁は「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず」と説明している(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。無登録で営業していたとして警告書が発出された業者の名称は、金融庁のサイトで公表されている(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。有償の話が出た時点で、案内してきた相手の名称を、この登録業者の一覧で確かめる。それだけで、この型の入口をかなりの割合で見分けられる。
- 記事末尾やリンク先で「無料」「限定」を強調する言葉が出た時点で、一拍置く
- 「利用者が実際に利益を手にしている」といった実績表示を、自分で検証できるかを基準にする
- 登録後に有償のプランや個別サポートの案内が来たら、相手の名称を金融庁の登録業者一覧で確認する
- 「必ず」「確実に」という言い切りが出たら、それ自体を黄信号として扱う
- 契約や入金を急かされたら、その場で決めない
この記事のまとめ
- 無料の株情報記事から無料LINE配信へ誘い、実績を強調する言葉とともに有償の投資助言へ進む型がある
- この種の勧誘トラブルの相談は、国民生活センターに2022年度比で約9.6倍と急増している
- 有償の投資助言を業として行うには金融商品取引法上の登録が必要で、相手の名称は金融庁のサイトで確認できる
「無料」「実績」「必ず」という言葉が並んだら、その場で登録や契約を決めずに、まず相手の名称を確かめてほしい。