「初心者でも初月から1日10分」の無料副業広告が13万円〜1200万円の10段階プランへ進み、特商法表示に実在の海外法人名が使われていた型を、消費者庁の一次情報で調べた
「初心者でも、初月から1日10分」。そんな言葉で始まるスマホ副業の広告が、SNSで流れてくることがある。入口は完全無料をうたうが、その先に用意されているプランを数えていくと10段階に分かれ、いちばん高いものは1200万円に達していた。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。
今号で気になったのは、金額の大きさそのものより、プランが1段階ではなく10段階に分けて用意されている点と、事業者名を示す表示に、実際に存在する海外の法人の名前が使われていた、という指摘があった点だった。
なぜ入口を「1日10分」にするのか
広告に興味を持った人がタップすると、まず案内されるのはLINEの友だち登録である。消費者庁の注意喚起(2025年6月26日付)は、この種の副業勧誘の入口についてこう記録している。「広告に興味を持った消費者が、広告をタップして読み進めていくと、LINEアカウントの友だち登録を要求されるので、友だち追加をします。」――ここまでは金銭のやり取りは一切ない。「1日10分」「初心者でも」という軽さで、まず多くの人に最初の一歩を踏ませる。それが入口の役割だと私は見ている。
実際、この型について消費者庁は「簡単に契約金額以上の報酬を得ることができるなどと勧誘を受け、高額なサポートプランの契約をしたが、報酬が得られなかったなどの相談が各地の消費生活センター等に数多く寄せられています」とも記している。無料の入口と、その先の高額な契約は、すでに公的機関が把握している一つながりの型だということになる。
型を、お金の流れで分解する——10段階、13万円から1200万円まで
登録後にプランの一覧が示される。今回の型では、最も安いプランが13万円(示された目標収益は30万円)で、そこから段階が上がるごとに金額は増え、最も高いプランは1200万円(目標収益2900万円)に達していた。あいだに8段階が並び、全部で10段階になる。
ここで、割り算をしてみてほしい。13万円のプランは、示された目標収益30万円で割ると、およそ2.3倍。最も高い1200万円のプランも、目標収益2900万円で割ると、およそ2.4倍。段階がいくつ上がっても、示される倍率はほとんど変わらない。つまり、上のプランに進むほど、狙われている金額の絶対値も大きくなる計算になっている。
手元の資金だけで足りない場合にどうするか、という点についても、公的機関には関連する記録がある。消費者庁が2024年2月29日付で出した別件の注意喚起には、「副業サポート事業者から、高額なサポートプランの契約を勧誘され、当該事業者と遠隔操作アプリでスマホの画面共有をしつつ、消費者金融業者から高額な借入れをしてその利用金額を支払った」という記録が残っている。段階を上げるための不足分を、借入れで埋めるという発想そのものが、この型では珍しくない。
数字でほどく——「契約金額を上回る報酬」は確認されたか
で、その利益の出どころは? この問いに対して、行政の側にはすでに一つの答えがある。同じ消費者庁の注意喚起は、こう記している。「消費者庁が行った調査では、副業に係る報酬において、サポートプランの契約金額を上回る報酬を得た消費者は確認できませんでした。」――行政が調べた範囲では、である。13万円を払って30万円が戻ってきた人も、1200万円を払って2900万円が戻ってきた人も、確認されていない、ということになる。示された目標収益は、あくまで示された数字にすぎない。
事業者名の表示について——特定商取引法が求めるもの
今回確認した型では、特定商取引法に基づく表示に記された運営者の名称が、実際に存在する海外の法人の名称と一致していた、という指摘があった。私が確認できた範囲では、実在する企業名をそのまま特商法の表示に用いる手口そのものを名指しした政府の注意喚起は見当たらなかった。ただし、一般的な制度として押さえておきたい点はある。
消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、「特定商取引法は、事業者に対して、勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であることなどを消費者に告げるように義務付けています」。そして、この義務を含む違反行為は「業務改善の指示や業務停止命令・業務禁止命令の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります」とも記されている。事業者名の表示は単なる形式ではなく法律上の義務であり、そこに虚偽があれば行政処分・罰則の対象になり得る、という位置づけになる。表示された会社名は、自分でも検索し、実在の会社と別物でないかを確かめる価値がある。
すでに申し込んでしまった方へ
この型に触れたとき、あるいはすでに一段階でも契約してしまったときに、確かめてほしいのは次の点である。
- 今のプランより上の段階へ、追加で入金しない
- LINEのやり取り・プラン一覧・契約書面を保存しておく
- 契約書面を受け取った日を基準に、クーリング・オフ(一定期間内なら契約を白紙に戻せる仕組み)の期間内かどうかを確認する
- 特定商取引法の表示に書かれた事業者名・住所・電話番号が、実在するか自分でも確かめる
この記事のまとめ
- 「1日10分」の無料副業広告が、13万円から1200万円まで10段階のプランへ進む型がある
- 段階が上がっても目標収益との倍率はほぼ一定で、消費者庁の調査でも契約金額を上回る報酬は確認されていない
- 特定商取引法は事業者名の明示を義務づけており、表示に実在する法人名が使われていた場合も、まず事業者名・住所を自分で確かめたい
段階が10個あっても、狙われている倍率はいつも同じだった。まず割り算をしてから、次の一歩を決めてほしい。(黒)