「AIで毎月自動収入」をうたう副業商材の型を、特商法の連絡先表記とお金の流れで調べた
「AIに作業を任せるだけで、毎月自動で収入が入ります」「期間限定で無料公開中」——SNSや検索広告から、そんな一枚のページに行き着く。並んでいるのは、月収数百万円という明細風の画像と、どこかで見た有名人の推薦名。今号で扱いたいのは、その特定の商材そのものや、名前を出された人物ではない。「AIが自動で稼ぐ」の看板で憧れを作り、派手な数字と有名人の名前で信用させ、中身と運営者を最後まで見せないまま高額な契約へ運ぶ——この、情報商材・副業ビジネスの型である。
「AIで自動収入」という看板と、開けられない中身——この型の骨格
入口は、たいてい「無料」と「簡単」だ。無料の動画やPDFを受け取るところから始まり、AIに任せれば手間をかけずに稼げると繰り返される。だが、その稼ぎ方の中身は、お金を払うまで開いて確かめられない。国民生活センターは情報商材について「『簡単に高額収入を得られる』などとうたって販売されているが、実際にはそのような内容ではなく、購入者は高額な情報商材の代金を支払っている」と注意を促し、契約前に中身を確認できないまま購入させられる構造を問題視している。看板は「AIで自動収入」、中身は「開けてからのお楽しみ」。この落差そのものが、型の骨格だ。
そして、うたわれる金額は現実離れしている。同センターには「1日数分の作業で月に数百万円を稼ぐ」といった誇大な表示で勧誘されたという相談が寄せられ、情報商材に関する相談件数は2013年度の872件から2017年度の6,593件へと、約7倍に増えた(国民生活センター)。手間なく・短時間で・大金が、と条件がそろうほど、疑いの目を持っていい。
で、その利益の出どころは?——数字でほどく
ページに躍る言葉は、たいてい「月50万が当たり前」「AIが自動で稼ぐから失敗しない」と言い切る形をとる。まず、この言い切り方に目を留めてほしい。消費者庁は、簡単な副業をうたって高額なサポートプランを契約させる事業者について「高額なサポートプランの契約をしたが、報酬が得られなかったなどの相談が各地の消費生活センター等に数多く寄せられています」とし、断定的な収入の約束を問題として挙げている。副業に「当たり前」も「自動で」もなじまない。迷いなく言い切れること自体が、正規の枠の外を疑う目印だ。
次に、勧める側の動機を考えてみる。本当にAIに任せるだけで毎月自動で稼げる仕組みを持っているなら、その人はなぜ、見ず知らずのあなたにわざわざ「無料公開」するのか。黙って自分でAIに稼がせ続けるほうが、はるかに得なはずである。他人に配るという行動そのものが、「その仕組みでは自分の金を張り切れない」ことの裏返しに近い。私はそう見ている。稼いでいるのはAIではなく、商材とサポートプランを売る側だ、という見方すらできる。
実際、被害の中心はその「サポートプラン」にある。無料や少額で入口を開けたあと、本番として数十万円のプランを勧める。国民生活センターは、簡単に稼げるとうたう副業について「もうけるためにお金を支払うことに疑問を持ちましょう」と呼びかけている。稼ぐための副業のはずが、先に大きく払わされる。その順序が逆になっていないかを、まず見てほしい。
お金の流れと表記に出る、3つの目印
収入画像の派手さや、有名人の名前の重みは、いくらでも借りて演出できる。だが、運営者の素性とお金の通り道には型が出る。私が見るのは次の3点だ。
目印1:特商法の「事業者名・住所・電話番号」が、欠けているかフリーメールだけ
これがこの型の一番の急所だ。ネット通販で何かを売る事業者には、法律で連絡先の表示が義務づけられている。特定商取引法にもとづき、通信販売の広告には「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号」を表示しなければならない(消費者庁)。ところが、この種のページの「特定商取引法に基づく表記」は、電話番号がなくフリーメールだけ、あるいは記載された責任者の名前と連絡先の名義が食い違っている、ということが起きる。お金を集める看板は堂々と大きいのに、責任を引き受ける連絡先だけが小さく空いている。「何かあったとき、どこの誰に連絡できるのか」——その一点が曖昧なら、話は半分ついている。
目印2:派手な収入画像と「有名人が推薦」で信用させるが、裏が取れない
月収の明細風スクリーンショット、振込画面、そして「あの有名人も推薦」。どれも信用の“借り物”で、こちらからは真偽を確かめられない。とくに有名人や第三者の推薦は要注意だ。消費者庁は、広告であることを隠す表示について「広告であることが分からないと、企業ではない第三者の感想であると誤って認識し、表示の内容をそのまま受け取ってしまい、消費者が自主的かつ合理的に商品・サービスを選ぶことが出来なくなるおそれ」があるとし、2023年10月からステルスマーケティングを景品表示法違反と位置づけた。名前を勝手に借りている場合もある。推薦している“はず”の本人が、その商材について公に語っているかを確かめられないなら、その推薦は数字と同じで、根拠にはならない。
目印3:無料・少額の入口から、本番の高額プランへ段差がある
この型の出口には、共通のふるまいがある。無料や数千円で成功体験を持たせ、信頼が育ったころに数十万円のサポートプランや上位講座を勧める。消費者庁の注意喚起でも、対象は簡単な副業をうたって高額なサポートプランを契約させる事業者だった。最初の「無料」は、この段差にたどり着かせるための入口だと考えたほうがいい。「話が進むほど、無料だったはずの金額が大きくなっていく」と感じたら、その勾配自体が目印だ。
立ち止まる手順と、すでに払ってしまった方へ
予防の側は、難しいことをしなくていい。並んでいる「稼げた証拠」ではなく、それを売っている「相手が誰か」を見る。それだけで大半は判別できる。
- ページ下部の「特定商取引法に基づく表記」を開き、事業者名・住所・電話番号がそろっているかを確かめる。フリーメールだけ、責任者と名義が食い違うなら、それ自体が答え
- 収入画像や「有名人の推薦」は、自分の手で裏が取れないかぎり根拠にしない。推薦者本人が公に語っているかを確認する
- 「無料」「数千円」でも、その先に高額なサポート契約の入口があると意識しておく
- 「今だけ」「先着」と急かされたら、その場で決めない。いったん持ち帰って調べる
そして、契約後でも引き返せる場合がある。訪問販売や電話勧誘、通信販売などで契約したときは、取引類型ごとの表示・ルールが特定商取引法で定められている。おかしいと感じたら、契約書面や広告の画面、やり取りの記録を残したうえで、早めに相談窓口へつなぐことだ。
すでにお金を払ってしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「上位プランに入れば元が取れる」「あと少し払えば稼げる」は、追加で取るための言葉だと考えてほしい。順序はこうなる。①追加で払わない ②広告・特商法表記・決済やチャットの画面を保存する ③カード会社や銀行など決済元にすぐ連絡する ④消費者ホットライン「188」、または警察相談専用電話「#9110」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。
この記事のまとめ
- 「AIで自動収入」の看板と派手な数字・有名人の名前で信用させ、中身と運営者を見せないまま高額契約へ運ぶのがこの型の骨格
- 特商法の連絡先表記の欠け・裏の取れない推薦・無料から高額プランへの段差が、お金の流れと表記に出る3つの目印
確かめる相手は、画面の中の「稼げた証拠」ではない。それを売っている相手が誰で、連絡のつく事業者かどうかだ。迷えば188へ。それが一番確かだ。