第277号黒岩検閲済 2026年7月2日 発行(不定期刊/前号:7月2日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|無料AI副業→高額プランの型

「登録無料のAI副業」が数十万円のサポートプランに変わる勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「AIが競馬の買い目を教えてくれる。あなたは買うだけ。登録は完全無料」——スマホの広告やSNSで、この種の副業の話が流れてくる。名前や電話番号を入れる無料フォームがあり、その先にLINEの友だち登録が待っている。今号で扱いたいのは特定のサービス名ではない。「無料」で始まった話が、いつの間にか数十万円の契約に変わっている——この、料金の変わり身の型だ。

「無料」の看板と、あとから来る請求——この型の骨格

この型の入口は、たしかに無料である。登録にお金はかからないし、最初のうちは「AIの予想」らしきものが無料で届いたりもする。ここで嘘はついていない。だから、入った側は「無料だから損はない」と感じる。

変わり身はその後に来る。LINEや電話で担当者がつき、「本気で稼ぐなら」「上位のAIプランなら精度が違う」と、サポートプランの案内が始まる。提示される金額は10万円台から、上は200万円を超える段階制。無料の入口と、本番の請求とで、桁が二つ三つ違う。

これは架空の想定ではなく、行政が実際に確認している流れだ。消費者庁は令和7年6月、「LINEアカウントの友だち登録を要求され…サポートプラン契約をすれば、簡単に契約金額以上の報酬を得ることができるなどと勧誘を受け、高額なサポートプランの契約をしたが、報酬が得られなかった」という手口について、事業者名を挙げた注意喚起を出している。つまり「無料」は商品ではない。こちらの連絡先と、話を聞く姿勢を取るための、入口の仕掛けである。

で、その利益の出どころは?——数字でほどく

この型の宣伝には、たいてい「回収率130%〜180%」といった数字が添えられている。回収率130%とは、10万円を賭けたら13万円になって戻る、という意味の数字だ。まず、割り算と掛け算をしてみてほしい。1.3を10回かけると、約13.8倍。本当にその回収率が安定して続くなら、10万円は10回の繰り返しで約138万円になる計算だ。

それだけの仕組みを持っている人が、なぜ他人に売るのか。予想を売って得る数十万円より、黙って自分の金で回し続けるほうがはるかに儲かるはずである。売るという行動そのものが、「その数字では自分の金を張れない」ことの証明に近い。私はそう見ている。

公営競技の予想を売る商売への注意は、以前から公的窓口が繰り返してきた。埼玉県の消費生活支援センターは競馬予想情報サービスのトラブルについて「『絶対に当たる』『絶対にもうかる』などの文言には惑わされないようにしましょう。お金を支払ってしまうとその返金の可能性は極めて低いです」と呼びかけている。看板がAIに掛け替わっても、売っているものは同じ「外から確かめようのない予想」だ。では、この商売の利益はどこから出ているのか。的中からではない。会員が払うプラン料金からである。

お金の流れに出る、3つの目印

AIという言葉や画面の見た目は、いくらでも立派に作れる。だが、お金の通り道には型が出る。私が見るのは次の3点だ。

目印1:「無料」の次に、桁の違うプラン提示が来る

無料登録の直後から、担当者とのやり取りが個別のLINEや電話に移り、そこで初めて高額プランの話が出る——上に引いた消費者庁の注意喚起と同じ順序だ。金額を公開ページに書かず、閉じたやり取りの中でだけ提示するのは、比較と相談をさせないためだと考えていい。「無料と聞いて来たのに、話が数十万円になっている」と感じた時点で、その違和感が一番正確な計器になる。

目印2:実績が「回収率○○%」の自己申告しかない

回収率や的中実績が、運営者自身の作った表や画像でしか示されない。第三者の検算にひも付かない数字は、極端に言えばいくらでも書ける。過去の予想の全件がさかのぼって確認できるか、外れた回も含めて記録が残っているか。確かめられないなら、その数字は判断材料から外してほしい。

目印3:「報酬で元が取れる」と、支払いを仕事の投資に見せる

「このプラン代は、稼げるからすぐ回収できる」という説明が出たら、法律の型を思い出してほしい。仕事で収入を得られるとうたって誘い、その仕事のために金銭の負担をさせる取引は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」という類型に当たりうる。この類型に該当する契約なら、消費者庁の解説どおり「法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば…契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます」。裏を返せば、書面も解約条件の説明もないまま「今日中に決めて」と迫る相手は、この枠組みの外で商売をしようとしている。解約手順の説明がないまま毎月の課金だけが続く、という形もこの型の出口でよく見る。

相談は「型」のまま積み上がっている 国民生活センターによれば、副業や投資のノウハウと称して売られる「情報商材」の相談件数は2022年度7,000件、2023年度6,256件、2024年度4,118件と、高い水準が続いている。看板の流行はAIへ移ったが、無料の入口から高額契約へつなぐお金の流れは、ほとんど変わっていない。

立ち止まる手順と、すでに払ってしまった方へ

予防の側は、難しいことをしなくていい。無料かどうかではなく、その先の料金表を先に見る。それだけで大半は判別できる。

  • 「無料」の登録でも、電話番号とLINEを渡す価値がある相手かを先に考える
  • 回収率や実績は、自分の手でさかのぼって確かめられるかを基準にする
  • プランを勧められたら、その場で決めない。「いったん持ち帰って調べます」と返す
  • 「報酬で元が取れる」と言われたら、契約書面とクーリング・オフの説明を求める

すでにプラン料金を払ってしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「上位プランに変えれば取り返せる」は、追加で取るための言葉だと考えてほしい。順序はこうなる。①追加で払わない ②やり取りの画面・契約書面・決済記録を残す ③カード会社など決済元に連絡する ④消費者ホットライン「188」か警察相談専用電話「#9110」に相談する。書面の受け取りから日が浅ければ、先に書いた20日間のクーリング・オフが使える場合もある。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。

迷ったとき用の一言 「その回収率は、どこの誰が検算した数字ですか」。自分の外側で確かめられる答えが返ってこないなら、それはそれで答えだと思う。本当に稼げる仕組みなら、無料で配る理由のほうが説明できない。

この記事のまとめ

  • 「登録無料」は商品ではなく、連絡先を取るための入口。本番の請求は閉じたやり取りの中で桁を変えて来る
  • 自己申告の回収率は判断材料にならない。「報酬で元が取れる」が出たら、特商法の類型とクーリング・オフを思い出す

確かめる相手は、勧誘してきた担当者ではない。数字の出どころと、契約の書面だ。迷えば188へ。それが一番確かだ。