第272号黒岩検閲済 2026年7月1日 発行(不定期刊/前号:7月1日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > “AI投資”偽装・ギャンブル予想販売の型
調査報告|“AI投資”偽装・ギャンブル予想販売の型

「AIで最先端の投資」とうたいながら、中身は公営ギャンブルの予想販売だった勧誘の型を、お金の流れで調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「AIが自動で運用する、最先端の投資」。そう誘われて話を進めると、渡されたのは株でもFXでもなく、競艇など公営ギャンブルの“予想ツール”だった――そういう型の勧誘がある。今号で扱いたいのは特定のサービス名ではない。名前を伏せても残る一点、つまり「その掛け金は、当たっても外れても、どこの・誰のお金として動くのか」を、こちらから確かめられるかどうかだ。看板の新しさより、その先で何を買わされ、いくら払わされるか。そこを、お金の流れでたどってみたい。

その「AI投資」、中身が“予想を当てる遊び”なら、胴元の取り分は最初から決まっている

まず、呼び名を一枚はがしたい。「投資」と言われても、掛けているのがレースの結果なら、それは公営ギャンブルだ。そして公営ギャンブルには、参加者全体の取り分があらかじめ引かれる仕組みがある。

国土交通省は、ボートレースの売上金額は舟券の的中者に約75%払い戻された後、残りの25%が交付金等に充てられると説明している(国土交通省「モーターボート競走」)。裏を返せば、参加者に戻るのは掛け金全体の約75%で、残る約25%は最初から差し引かれている。この割合は運営の気分で決まるものではなく、モーターボート競走法という法律の枠組みの中にある。

つまり、どれだけ精度の高い予想を買おうと、賭ける全員の合計では、掛け金の約25%はあらかじめ胴元に引かれている。AIと名乗ろうと、この控除は動かない。当たり外れの前に取り分が決まっている以上、これは値上がりを狙う「投資」ではなく、控除つきの賭けだ。しかもこの型では、その賭けに乗るためのツール代を、掛け金とは別に上乗せで払わされる。

で、その「最先端の投資」の利益の出どころは?――ツールがいくら当てても、胴元の取り分は減らない。増えるのは、ツールを売る側の売上のほうだ。

「月利900%」「勝率100%」を、数字と法律でほどく

この型は、入口で強い数字を見せる。「1か月で資産10倍」「月利900%」「勝率100%」。どれも心を動かすが、順にほどくと足元が見える。

まず勝率は、儲けとイコールではない。何回当たったかと、手元にいくら残ったかは別の話だ。控除が引かれ続ける以上、当たりを重ねても合計はすり減っていきやすい。見せられた数字は勝ち負けの「回数」であって「損益」ではない、と切り分けたい。

そして「必ず」「確実」という言い切りは、法律の側から見ると要注意の合図になる。将来の変動が不確実なことを断定して契約させる勧誘について、消費者契約法(第4条)は、事業者が「将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供」して結ばせた契約は取り消せると定めている。金融庁も、「必ず儲かる」「安心・安全」と思わせるフレーズを並べて投資したい気持ちを煽る手口に注意を促す(金融庁「“オイシイ投資話”にご注意」)。断定の強さは、安心材料ではなく注意の合図として読みたい。

それに、本当に高い確率で勝てる方法なら、他人に売って回る理由がない。黙って自分で賭ければいいだけだ。人を募ってまで配るのは、配ること自体に別の利益があるからではないか。私はそう見ている。

入口は「無料モニター」、出口は高額な“システム利用料”だ この型は、たいてい入口が無料で始まる。SNSやLINEで無料の情報配信に登録させ、数日の動画などで期待をふくらませたところで「本格的に稼ぐにはシステム利用料を」と、数十万円の契約へ進ませていく。国民生活センターによると、こうした副業トラブルで平均契約購入金額は2020年度の約28万円から2024年度は約106万円へと上がり、SNS広告がきっかけの割合は7割にのぼる(国民生活センター、2024年)。無料で始まったはずが、気づけば高額の請求になっている。

なぜ「払えない人」にまで契約させ、借金まで勧めるのか

もう一つ、この型で重く見ておきたいのが、支払い方法の勧め方だ。手元にお金がないと伝えても、話が止まらないことがある。

金融庁は、投資勧誘のなかには借金をさせてでも投資させようとするものがあると注意している。国民生活センターも、「お金がない」と断っても借金するよう指示し、強引に契約を迫る手口に注意を呼びかける(国民生活センター、2021年)。消費者庁も、消費者金融業者から高額な借入れをさせて副業サポート契約を結ばせる事業者への注意喚起を出している(消費者庁、2024年)。

ここに、この型の本音が透ける。相手が本当に利用者を勝たせたいなら、払えない人にまで借金をさせる必要はない。借りてでも払わせようとするのは、狙いが利用者の勝ちではなく、契約の代金そのものにあるからだ。負けても代金は戻らず、借金だけが残る。

手を出す前に、自分で確かめられること

難しい相場の知識はいらない。この型に対しては、入口で確かめられる項目のほうが効く。順に一拍おいて見てほしい。

  • 「投資」と言うが、中身は結局レースやくじの“予想”=ギャンブルではないか。だとすれば控除が引かれ、当てても取り分は動かない
  • 「必ず」「月利○%」「勝率100%」と、不確実なことを言い切っていないか(言い切りは消費者契約法で取消しの対象になりうる)
  • 販売サイトに事業者の名称・住所・電話番号(特商法の表記)があるか。通信販売ではこれらの表示が義務づけられ、商品到着から8日以内の返品ルールもある(消費者庁)
  • 「無料モニター」から、いつのまにか数十万円のシステム利用料に話が変わっていないか
  • 借入・分割・リボを勧められていないか。「借りてでも」と言われた時点で、いったん離れる
迷ったとき用の一言 「本当に勝てる方法なら、借金までさせて急がせる必要はない」。健全な案内なら、こちらが事業者表示や中身を調べる時間を嫌がったりしない。嫌がられたら、それはそれで答えだと思う。契約する前に迷ったら、消費者ホットライン188へ。緊急でない相談は警察の#9110でもいい。

この記事のまとめ

  • 「AI投資」と名乗っても、中身がレースの予想なら控除つきのギャンブルだ。ボートレースの払戻率は約75%で、当てても胴元の取り分は動かず、その上にツール代が上乗せされる
  • 確かめるのは予想の腕ではなく、事業者表示の有無・「必ず/月利○%」の言い切り・借金の勧め。無料モニターから高額なシステム利用料へ話が変わったら、契約の前に立ち止まる

看板が「最先端」でも、お金の流れをたどれば古い形が見える。控除で目減りする賭けに、別料金のツール代と借金が重なる。増えるのは、売る側の売上のほうだ。