「1日15分で月収50万円」――好条件すぎる投資アプリの勧誘の型を、お金の流れで調べた
「1日15分のスマホ操作で、月収50万円」。SNSやLINEで、こういう投資アプリの誘いを見かける。今号で扱いたいのは、特定のアプリ名ではない。名前を伏せても残る一点、つまり「その利益は、誰の・どんなお金から来ているのか」を、こちらから確かめられるかどうかだ。最初に断っておくと、私はどのサービスも名指しで「詐欺だ」とは言わない。調べるのは、案件をまたいで繰り返し現れる勧誘の“型”のほうである。
入口は「少ない手間で、大きく増える」という約束
この型は、入口の文句がよく似ている。「知識はいらない」「1日15分」「初心者でも月50万」。労力はとても小さく、見返りはとても大きい。その不釣り合いこそが、誘いの核になっている。考えてみれば、本当にそんな手段があるなら、わざわざ知らない相手に教えて回る理由は薄い。
こうした誘いの多くは、SNSやマッチングアプリでの出会いから始まり、LINEへ場所を移して進む。警察庁によれば、令和6年のSNS型投資・ロマンス詐欺の被害は認知件数1万件超・被害総額1,200億円超とされる。入口の「うまい話」と、出口の「お金が戻らない」。その落差そのものが、この型の特徴だと私は見ている。
増えていく数字は、誰が書いているのか
案内されるのは、たいてい専用のアプリや取引サイトだ。入金すると、画面の残高に利益が積み上がっていく。グラフが伸び、「含み益」が増える。だが、ここで一度立ち止まりたい。自分が振り込んだお金は本物の送金だが、画面に映る利益は、相手のサーバーに置かれた“表示”にすぎない。増えて見えることと、引き出せることは、まったく別の話だ。
国民生活センターは、SNSで勧誘される暗号資産の投資話について、「出金しようとすると手数料や税金等の名目で追加の入金を求められ、出金できない」手口を挙げ、被害回復は困難だと注意喚起している(2025年)。画面の数字がどれだけ増えても、その数字を書いているのが相手である以上、こちらからは裏が取れない。
「少額なら出金できた」が、信用の入口になる
この型がやっかいなのは、最初の小さな出金が通ることがある点だ。少額を試しに引き出すと、すんなり振り込まれる。「ちゃんと出せるんだ」と安心したころに、増額を促される。そして金額が大きくなってから引き出そうとすると、今度は「システムエラー」「口座凍結の解除費」「税金を先に」と、次々に追加の入金を求められる。払っても、出金できる日は来ない。
最初の出金は、いわば呼び水だ。少額を返すことで信用を作り、より大きなお金を入れさせる。金融庁も、SNSやマッチングアプリ発の投資勧誘について「出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなることもあります」と注意している。「一度は出せた」という体験を、サービス全体の信頼の証だと受け取らないことが大事だと思う。
確かめられるのは「登録の有無」
当たり外れや画面の数字より先に、こちらで確かめられる事実がある。登録の有無だ。日本で暗号資産の交換や、投資の助言・運用を業として行うには、登録が要る。金融庁はSNS発の投資勧誘について、「登録を受けていない違法な業者であったり、詐欺等をしているおそれもあります」と注意し(2023年)、無登録業者との取引では「出金の拒否や法外な出金手数料を請求される」リスクがあると挙げている。
暗号資産交換業は登録が必要で、金融庁は無登録で暗号資産交換業を行う者の一覧を公表している。すすめられた運営者名やアプリの名称が、この一覧に載っていないか。あるいは、登録業者として確認できるか。お金を入れる前に、一度たどって確かめたい。立派なアプリの見た目は、登録の裏付けを意味しない。
入れる前に、立ち止まるための確認
気合いで見抜くのは疲れる。だから、いくつかを「いつものクセ」にしておくのがいい。一番効くのは、その場で決めないことだ。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、急かしの大半はかわせる。そのうえで、
- 「少ない手間で大きく稼げる」という不釣り合いな約束は、それ自体を黄信号として扱う
- アプリ画面の「利益」は相手が書ける数字だと意識し、増額を急かされたら一拍おく
- 「一度は出金できた」一回の成功を、サービス全体の信頼だと受け取らない
- 運営者の名称・所在地・連絡先と、暗号資産交換業などの登録の有無を、自分でたどって確かめる
- 出金時に「手数料・税金・保証金を先に」と求められたら、それ以上は払わず相談先に連絡する