第263号黒岩検閲済 2026年6月30日 発行(不定期刊/前号:6月30日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > 暗号資産・出金拒否の型
調査報告|暗号資産・出金拒否の型

SNSからLINEへ誘い込み、実態の見えない暗号資産取引で“出金時に追加入金”を迫る勧誘の型を、お金の流れで調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

SNSやマッチングアプリで知り合った相手にLINEへ誘われ、すすめられた暗号資産(仮想通貨)の取引サービスに入金する。画面の残高は増えていく。ところが、いざ出金しようとすると「手数料を先に」「税金を払えば解除される」と、次々に追加入金を求められる――。こういう相談が届く。特定のサービス名を名指しで「詐欺だ」と言うつもりはない。私が調べたいのは、名前を伏せても残るこの“型”を、お金の流れの側から見るとどうなるか、という一点だ。

入口は、ほぼ決まった流れになる

まずSNSやマッチングアプリで接触し、世間話で距離を縮めてから、外からは見えにくいLINEへ移す。そこで「いい取引所がある」「自動で増える」と、特定のサービスへ案内する。これがこの型のほぼ共通の入口だ。

件数の伸びも記録されている。国民生活センターは、SNSをきっかけに著名人をかたる・つながりがあるなどと近づく金融商品の相談について、「いったん振込してしまうと、被害回復が困難です」と注意喚起している(2024年)。警察庁の統計でも、令和6年のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数が1万件を超え、被害総額は1,200億円を上回ったとされる。少ない件数の例外ではなく、いま広く起きている形だ、ということになる。

で、その「増えていく残高」の出どころは?

この型でいちばん人を信じさせるのは、入金後しばらく「儲かって見える」ことだ。画面の数字は増える。配当らしきものも、最初は届くことがある。だが、ここで一度立ち止まって考えたい。

その残高は、誰かが運用して生んだ利益なのか。それとも、ただ画面にそう表示されているだけなのか。専用アプリやサイトの中の数字は、運営側がいくらでも書き換えられる。つまり、自分の手元に引き出せて初めて「ある」と言える金で、画面の中の数字は、まだ何の保証にもならない。

「最初は儲かる」は、型の一部 最初に少し儲けさせ、信用させてから増額を促す――これは偶然ではなく、設計だと見ていい。国民生活センターも、SNSで勧誘される暗号資産の投資話について「被害回復は困難」と注意を呼びかけている(2024年)。儲かって見える段階こそ、いちばん冷静になりたいところだ。

“出金”の段で、お金の向きが逆になる

この型がいちばんはっきり姿を見せるのは、出金しようとした瞬間だ。これまで小さく出金できていたのに、まとまった額を引き出そうとすると、急に条件が増える。「保証金が必要」「税金として何%かかる」「先に手数料を入れれば解除される」。つまり、引き出すために、また入れさせる。お金の向きが、出る側から入る側へ逆になるわけだ。

金融庁も、無登録業者との取引で「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりする」リスクを挙げている。しかも、入金が暗号資産で求められていると、振込先をたどるのが難しく、後から取り戻すのは一段と厳しくなる。「出金するために、さらに払ってください」と言われたら、そこが型の正体が出る場所だ。そこからは、一円も追加しないことを先に決めてほしい。

確かめられるのは、まず「登録の有無」だ

相手の実態を一つずつ調べるのは難しい。だが、専門でない人でもその場で確かめられる入口がある。登録の有無だ。

金融庁は、国内で暗号資産と法定通貨の交換サービスを行うには「暗号資産交換業の登録が必要」だと示し、無登録業者には警告書を出して、その名称一覧(国内・海外)を公表している。すすめられたサービスの運営者名が、登録された業者の一覧に載っているか、逆に無登録業者の一覧に名前がないか。これは入金前に、自分で照らし合わせられる。

もう一つ。海外に置かれた無登録の業者や、運営会社の住所も連絡先もはっきりしない相手とのトラブルは、日本の窓口から手が届きにくく、資金の回収が極めて難しい。サイトが新しく作られたばかりで、運営の素性がたどれない――そう感じたら、それ自体が一つの答えだと思っている。で、その取引所は、誰が、どの登録のもとで運営しているのか。そこが説明されない話には、いったん近づかないでおきたい。

もし、すでに入金してしまっていたら

すでに振り込んでしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「出金には税金が」と言われても、そこで止めてほしい。順序はこうなる。

入金してしまったときの初動 ①「出金のための手数料・税金」を含め、追加では一切払わない ②やり取り・送金履歴・相手のアカウントの記録を残す ③振り込んだ銀行や決済元に連絡し、相談する ④消費者ホットライン「188」や警察に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

困ったときの正規の窓口ははっきりしている。消費者庁はSNSなどを通じた投資・副業の「もうけ話」への注意と、消費者ホットライン「188」を案内している。緊急でない相談は、警察相談専用電話「#9110」が使える。

入金の前に、立ち止まって確かめたいこと

  • 運営者名が、金融庁の暗号資産交換業の登録一覧に載っているか(無登録業者の一覧に名前がないか)
  • 残高は画面の数字だけか、自分の口座へ実際に引き出せているか
  • 「必ず増える」「元本保証」「あなただけ」と、考える時間を奪う言葉が混ざっていないか
  • 「出金するために、まず払ってください」と言われていないか
  • 運営会社の住所・連絡先・サイトの素性をたどれるか

この記事のまとめ

  • SNS→LINE→暗号資産入金→「最初は儲かって見える」→出金時に手数料・税金で追加入金、が一つの型
  • 確かめる入口は「登録の有無」。出金のために追加入金を求められたら、そこで止めて正規窓口へ

画面の中の数字は、引き出せて初めて自分の金になる。出どころと登録を、入れる前に確かめておきたい。