第426号黒岩検閲済 2026年8月3日 発行(不定期刊/前号:7月31日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|相談聴取副業×高額謝礼受取名目ギフトカード要求の型

LINEで「話を聞くだけ」の副業に応募すると、高額な「お礼」を受け取るためにギフトカード購入を名目を変えて繰り返し求められる型を、国民生活センター・警察庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

「LINEでお客様の話を聞くだけ」という在宅副業の広告から始まって、最後は身に覚えのない高額な「お礼」を受け取る話にすり替わっていた——という相談を、続けて何件か見る機会があった。細部は毎回違うのだが、骨組みはほとんど同じだった。今号はこの型を洗った。(黒)

「話を聞くだけ」は、公的資料も定義している副業の一種

「月収50万円から上限なし」「完全歩合制」「初心者歓迎」。LINEでの相談・傾聴業務を謳う副業広告は、こうした文言で目に留まる。作業内容自体は単純で、悩みを抱えた利用者とLINEでやり取りをするだけ、とされている。

実はこの手の「単純作業を積み重ねて稼ぐ」副業には、公的資料がすでに名前をつけている。国民生活センターは、こうした副業を「タスク」と総称し、その具体例として次のように挙げている。

「タスク」の定義 「『"いいね"を押すだけ』『スタンプを送るだけ』『スクリーンショットを撮るだけ』『動画を見るだけ』『フォローするだけ』『話を聞くだけ』『相談に乗るだけ』等、スキマ時間にできる簡単な仕事(作業)を総称して『タスク』と呼び」——国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル」(令和6年9月4日)より

「話を聞くだけ」「相談に乗るだけ」という文言が、今回の広告とほぼ同じ言葉で公的資料に並んでいる。つまり目新しい手口ではなく、すでに型として把握されている副業トラブルの一種、ということになる。

応募後に始まる、本題とは別の「お礼」の話

応募すると、まずグループLINEに案内される。そこまでは求人広告どおりの流れだ。ところが、しばらくすると本来の作業内容とは関係のない人物が登場し、「あなたのおかげで救われた、お礼に高額を受け取ってほしい」といった趣旨のメッセージが届く、という報告がある。金額は数億円規模と、実際の作業報酬とは桁が違う。

ここで一度立ち止まってほしい。求人に応募しただけの相手に、見ず知らずの個人が数億円規模の謝礼を渡そうとする——その動機自体が、通常の商取引の枠から外れている。物語として作り込まれているほど、金額の非現実さに気づきにくくなる。

受け取るために、なぜこちらが払うのか

高額な「お礼」の話が出たあと、実際にお金の要求が始まるのは「受け取り手続き」の段階だ。「受取のための手数料」「認証費用」といった名目で、ギフトカード(電子マネー)を購入し、その番号を伝えるよう求められる。

この「電子マネーの番号を教えさせる」という手順そのものを、警察庁は詐欺の典型パターンとして名指ししている。

電子マネー番号を教えさせる手口への警告 「コンビニで電子マネーカードを買って、番号を教える」ように誘導してくるものです。電話で電子マネーカードの話が出てきたら、絶対に詐欺です。」——警察庁「SOS47|サポート名目の詐欺対策」より

正規の受け取り手続きで、コンビニの電子マネーカードが登場することはまずない。「電話やチャットで電子マネーの話が出た時点で詐欺」というくらい、はっきりした線引きだと考えていい。

出金の前に費用を求められた時点で 受け取るはずのお金なのに、なぜこちらが先に払う必要があるのか。この順序が出てきた時点で、私はいったん赤信号だと思っている。

名目を変えて続く、終わらない請求

厄介なのは、一度払っても終わらないところだ。「今度は別の手続きが必要」「税金分が足りない」と、名目を変えながら追加の支払いが続く。この構造は、いわゆる国際ロマンス詐欺で確認されている型とよく似ている。

名目を変えた追加要求 「海外からの荷物や送金を受け取るための通関税や手数料などさまざまな名目で支払いを求め、さまざまな理由を付けて支払いを急ぐように迫る点が共通しています。」——国民生活センター「愛のギフトを受け取ってほしい!?それってもしかして『国際ロマンス詐欺』?」(令和2年2月13日)より

同資料は「国際送金やギフトカードなどで支払いをしてしまうと、返金を受けるのは非常に難しいのが現状です」とも記している。ギフトカードのコード番号は、一度伝えてしまうと取り消しがきかず、誰が使ったかも追いにくい。現金の手渡しより痕跡が残らない支払い手段が、この型では最初から指定されている。

副業の「タスク」トラブル自体、国民生活センターへの相談件数は増えている。2024年度は7月31日時点で950件(前年同期は703件)、そのうちSNSがきっかけとなった相談が70.1%を占め、平均の契約購入金額は105万9,658円にのぼるという(前掲・国民生活センター資料)。名目を変えながら請求が続くほど、支払い総額は膨らんでいく。

「海外拠点」だから届かない、わけではない

今回のような型では、運営元が国内に拠点を持たない海外法人を名乗ることも多い。海外だから調べようがない、と諦めてしまいがちだが、そこにも確認できる点がある。

まず、海外の事業者であっても、日本国内向けに勧誘・取引を行う以上は日本の法律の対象から外れるわけではない。

海外拠点でも日本の法律の対象になる 「海外の販売業者等が日本向けにウェブサイトなどで商品等の販売を行い、日本国内在住者が商品を購入する場合は、(中略)特定商取引法の適用対象となります。」——消費者庁「特定商取引法ガイド|海外からのインターネット通信販売Q&A」より

とはいえ、法律の適用対象になることと、実際に運営者を追及できることは別の話だ。無登録の海外業者について、金融庁は次のように注意を促している。

海外所在業者への注意 「無登録の海外所在業者は、業務の実態等の把握が難しく、仮にトラブルが生じたとしても業者への追及は極めて困難です。」——金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」より

この注意喚起は金融商品取引の文脈のものだが、「海外拠点を名乗る実体不明の相手は、トラブルになっても追及が極めて困難」という論旨自体は、今回のような型にもそのまま当てはまる。運営会社の住所・電話番号・代表者名が、確かめようのない海外の情報だけで埋まっていないか。それを見るだけでも、警戒の材料になる。

消費者庁も、SNS経由の「もうけ話」全般について、振込先が個人名義の口座であればそれ自体が詐欺の兆候だと明言している(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」(令和6年5月30日))。今回の型のように、受け取りのためにギフトカードや個人口座への送金を求められる時点で、正規の取引としての体をなしていないと考えていい。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

高額な「お礼」の話ほど、冷静に考える余裕を奪ってくる。だから私は、金額の大きさに気を取られる前に、次のことを決め事にしておくのがいいと思っている。

  • 求人に応募しただけの相手から、桁違いの謝礼の話が来たら、その時点で疑う
  • 受け取るはずのお金なのに支払いを求められたら、それ以上は払わない
  • 電話・チャットで「電子マネーカードを買って番号を教えて」と言われたら、その場で終わりにする
  • 運営会社の住所・電話番号・代表者名が、確認しようのない海外情報だけで埋まっていないか見る
  • 一人で抱えず、家族や消費者ホットライン188に一度は話してみる

この記事のまとめ

  • 「LINEで話を聞くだけ」の副業広告は、国民生活センターも把握している「タスク」型副業トラブルの一種
  • 応募後に届く高額な「お礼」の話は、受け取りのためのギフトカード購入要求へつながり、名目を変えながら追加請求が続く型がある
  • 海外拠点を名乗る運営元は、トラブル時の追及が極めて困難であることが金融庁の注意喚起からも分かる

対策は結局のところ、桁違いの謝礼を疑う・受け取り前の支払い要求で止まる・電子マネーの話が出た時点でやめる。この3つに尽きる。