第380号黒岩検閲済 2026年7月23日 発行(不定期刊/前号:7月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|AI選定訴求×電子マネー要求の型

「AIが公的統計を解析し、あなたを支援金の対象に選定しました」という広告が、電話番号だけの登録の先で電子マネー購入を求める型を、消費者庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

今号は、広告についての相談が続けて届いた案件を洗った。「AIが公的な統計データを解析し、あなたを支援金の対象として選定しました」という一文から始まる広告だ。運営している会社名も所在地も、最後まで出てこない。求められるのは電話番号だけの簡易登録で、その先で電子マネーの購入を案内される。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで繰り返し現れる一つの型として、今号はこの広告の言葉と金の流れを調べた。

「あなたはもう対象です」から始まる入り口

この型の広告は、たいてい結果から入ってくる。「対象として正式に承認されています」「支援金の給付が決定しました」。まだ何もしていない段階で、すでに決まったことのように書かれている。

申し込みに必要なのは、名前でも住所でもなく、電話番号だけということが多い。入力のハードルを下げるほど反応する人の数は増える。効率を優先した設計だと私は見ている。

運営の正体は、最後まで出てこない

広告にも、その先の案内にも、実在する会社名・所在地・代表者の氏名は出てこない。かわりに「〇〇管理局」「〇〇支援団体」といった、いかにも公的に聞こえる名称だけが使われる。

名称詐称の実例 「『特別法人支援団体』といった公的に存在するかのような名称をかたり、消費者に『80億円の支援金を給付する』旨のメールを送り、消費者が支援金の給付手続を進めると、支援金を受け取るためには3,000円の電子マネーカードの購入が必要などと説明され...」——消費者庁「支援団体等の名称をかたり、いわゆる支援金の給付を持ち掛けて架空の料金請求を行う事業者に関する注意喚起」(令和7年9月11日)より

消費者庁が調査で確認したのは、こうした名称が「架空又は実在の機関とは関係のない機関名」だったという事実だ。公的っぽく聞こえることと、公的であることは、まったく別の話になる。

「無料」の先にある、電子マネーという指定

この型でお金の話が最初に出てくるのは、たいてい受け取りの直前だ。支援金そのものは無料で受け取れるはずなのに、なぜか手数料という名目の支払いが必要になる。

手数料の要求文言 「支援金の受け取りには3,000円の手数料が必要となること」「3,000円分の電子マネーカードを購入すること」——消費者庁 同上資料より

支払い方法として電子マネーやコンビニ決済が指定されるのは、この型に限った話ではない。

電子マネー要求への注意喚起 「事業者、法務省や裁判所などが『未納料金などの支払い』の名目で、コンビニエンスストアで、電子マネー(プリペイドカード)を購入させることは絶対にありません。」——警察庁「架空料金請求詐欺|特殊詐欺の手口等紹介」より

正規の支払いであれば、まず選ばれることのない決済手段が、この型では最初から指定されている。で、その手数料は、何のために、誰が受け取るのか。

「残り48名」という急かし方

広告の文面には、期限や人数の限定がよく添えられる。「残り〇名」「本日中に手続きされた方のみ対象」。落ち着いて調べる時間を奪うための一文だと私は見ている。

「選ばれた者だけに届いた特別な案内」という体裁で相手を急がせる言い回しは、特殊詐欺の別の手口でも繰り返し確認されている型で、私の目にも見覚えのある言い回しだった。

この型に、どう向き合うか

AIという言葉が入ると、なんとなく精密で公平な判断のように見えてしまう。だが、統計を解析したという説明の中身が確認できない以上、それは「AI」という言葉を借りた演出にすぎない可能性がある。

対象として選ばれたという通知そのものより、まず運営の実体を確認すること。それだけで、この型の多くは入り口で止められる。

迷ったとき用の一言 「支援金を受け取るのに、なぜこちらが先に払うのか」。この一点さえ引っかかれば、それで十分だと思う。
  • 運営会社名・所在地・電話番号が、広告や案内のどこにも書かれていないか
  • 「対象として承認されました」など、応募していないのに結果だけが先に届いていないか
  • 受け取りの直前に、電子マネーやコンビニ払いでの手数料を求められていないか
  • 「残りN名」「本日中」など、判断を急がせる言葉が使われていないか
  • 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみる

この記事のまとめ

  • 「AIが選定した」「支援金の対象に承認された」という体裁の広告は、公的機関の名称をかたる事例として消費者庁が確認・公表している
  • 受け取り直前に電子マネー・コンビニ払いでの手数料を求める手口は、消費者庁と警察庁の双方で共通して指摘されている
  • 支援金を受け取るためにこちらが先に払う、という時点で、もう答えは出ている

AIという言葉も、支援金という言葉も、確かめられなければただの飾りだ。(黒)