「AIが公的統計を解析し、あなたを支援金の対象に選定しました」という広告が、電話番号だけの登録の先で電子マネー購入を求める型を、消費者庁の一次情報で調べた
今号は、広告についての相談が続けて届いた案件を洗った。「AIが公的な統計データを解析し、あなたを支援金の対象として選定しました」という一文から始まる広告だ。運営している会社名も所在地も、最後まで出てこない。求められるのは電話番号だけの簡易登録で、その先で電子マネーの購入を案内される。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで繰り返し現れる一つの型として、今号はこの広告の言葉と金の流れを調べた。
「あなたはもう対象です」から始まる入り口
この型の広告は、たいてい結果から入ってくる。「対象として正式に承認されています」「支援金の給付が決定しました」。まだ何もしていない段階で、すでに決まったことのように書かれている。
申し込みに必要なのは、名前でも住所でもなく、電話番号だけということが多い。入力のハードルを下げるほど反応する人の数は増える。効率を優先した設計だと私は見ている。
運営の正体は、最後まで出てこない
広告にも、その先の案内にも、実在する会社名・所在地・代表者の氏名は出てこない。かわりに「〇〇管理局」「〇〇支援団体」といった、いかにも公的に聞こえる名称だけが使われる。
消費者庁が調査で確認したのは、こうした名称が「架空又は実在の機関とは関係のない機関名」だったという事実だ。公的っぽく聞こえることと、公的であることは、まったく別の話になる。
「無料」の先にある、電子マネーという指定
この型でお金の話が最初に出てくるのは、たいてい受け取りの直前だ。支援金そのものは無料で受け取れるはずなのに、なぜか手数料という名目の支払いが必要になる。
支払い方法として電子マネーやコンビニ決済が指定されるのは、この型に限った話ではない。
正規の支払いであれば、まず選ばれることのない決済手段が、この型では最初から指定されている。で、その手数料は、何のために、誰が受け取るのか。
「残り48名」という急かし方
広告の文面には、期限や人数の限定がよく添えられる。「残り〇名」「本日中に手続きされた方のみ対象」。落ち着いて調べる時間を奪うための一文だと私は見ている。
「選ばれた者だけに届いた特別な案内」という体裁で相手を急がせる言い回しは、特殊詐欺の別の手口でも繰り返し確認されている型で、私の目にも見覚えのある言い回しだった。
この型に、どう向き合うか
AIという言葉が入ると、なんとなく精密で公平な判断のように見えてしまう。だが、統計を解析したという説明の中身が確認できない以上、それは「AI」という言葉を借りた演出にすぎない可能性がある。
対象として選ばれたという通知そのものより、まず運営の実体を確認すること。それだけで、この型の多くは入り口で止められる。
- 運営会社名・所在地・電話番号が、広告や案内のどこにも書かれていないか
- 「対象として承認されました」など、応募していないのに結果だけが先に届いていないか
- 受け取りの直前に、電子マネーやコンビニ払いでの手数料を求められていないか
- 「残りN名」「本日中」など、判断を急がせる言葉が使われていないか
- 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみる
この記事のまとめ
- 「AIが選定した」「支援金の対象に承認された」という体裁の広告は、公的機関の名称をかたる事例として消費者庁が確認・公表している
- 受け取り直前に電子マネー・コンビニ払いでの手数料を求める手口は、消費者庁と警察庁の双方で共通して指摘されている
- 支援金を受け取るためにこちらが先に払う、という時点で、もう答えは出ている
AIという言葉も、支援金という言葉も、確かめられなければただの飾りだ。(黒)