「返信するだけで報酬」をうたう副業サイトが、出金直前に「認証費用」をギフトカードで要求する型を、消費者庁の注意喚起と相談統計で調べた
「返信するだけで一件3,000円から5万円」という副業の話を、何件か並べて見る機会があった。細部はそれぞれ違うが、骨組みはほとんど同じだった。会員専用のダッシュボードに、悩み相談への返信をこなすたびに“報酬”が積み上がっていく。ところが、いざその報酬を引き出そうとすると、決まって別の名目で先に金を払えと言われる。今号はこの型を洗った。(黒)
ダッシュボード上の数字は、何を証明しているのか
登録すると、まずLINEやメールで「返信するだけの簡単な作業」に案内される。用意された悩み相談のような文面に返信をこなすと、専用ページの残高がその場で増えていく。登録から数分で十万円単位の“報酬”が積み上がったという体験談も見かける。だが、この数字が実際のお金の動きを伴っているのかどうかは、画面を見ただけでは分からない。運営側の管理画面の表示を書き換えているだけなら、いくらでも積み上げられる。つまり、まだ「お金が動いた証拠」にはなっていない、ということだ。
出金の直前に現れる「認証費用」
ためた報酬を引き出そうとすると、そこで初めて別の要求が来る。「マネーロンダリング防止のための認証費用」「本人確認費用」といった名目で、数万円をApple Gift Card等のプリペイド型電子ギフト券で支払うよう求められる、という報告が複数ある。消費者庁が公表した同種の事案でも、事業者は「消費者の作業内容の誤りを指摘し、更に追加作業に要する費用として数万円から数十万円を追加送金すれば、タスクが完了して、これまで支払った金額は返金され、高額の報酬が支払われる」などと告げていたが、実際には参加費用が返金されることも、提示された報酬が支払われることもなかったという(消費者庁「『タスク副業』で報酬が支払われるとうたい、実際には高額を送金させる事業者に関する注意喚起」)。今回の型で使われる「認証費用」も、言い換えれば同じ構造だと見ている。
なぜ現金ではなく、ギフトカードなのか
ここで「仕組みで解く」なら、支払い手段そのものにも理由がある。ギフトカードのコードは、口座間の送金と違って一度渡すと取り消せない。誰が使ったかも追いにくい。警察庁の確定値統計では、副業などを名目にした架空料金請求の認知件数が前年から142.2%増えたと示されており(警察庁「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」)、電子ギフト券を使った詐欺のうち相当割合がApple Gift Cardを悪用しているとも報じられている。現金の手渡しより痕跡が残りにくい支払い方法を選んでいる、という点は覚えておいてほしい。
公的機関がすでに同じ型を注意喚起している
この「作業をこなすと稼げる」副業と出金トラブルの組み合わせは、今回初めて確認された型ではない。国民生活センターは「SNSや動画広告、インターネット検索等で見つけた副業サイトで『いいね』を押すだけ」「スタンプを送るだけ」といった簡単な作業で稼げるとうたい、高額報酬を得るには振り込みが必要だと指示され、その後も理由をつけて振り込みをさせられた末に報酬が得られなかった、という相談が増えていると報告している(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル」)。同資料によれば、この種の相談件数は2020年度の1,341件から2023年度には3,694件へと増え、相手方から請求された金額の平均も2020年度の279,519円から2023年度は763,117円へと膨らんでいる。1年ごとの増え方を並べただけでも、型が広がっている様子が見て取れる。
特定商取引法には、業務提供利益を示して勧誘する取引(業務提供誘引販売取引)について、事業者の氏名や取引条件を記した書面を交付する義務や、20日間のクーリング・オフの仕組みが定められている。ただし今回のような型は、運営者の所在地も本名も分からないまま話が進むことが多い。法律上の保護があっても、相手が誰かを特定できなければ、その通知先すら存在しないことになる。仕組みで守られる建前と、実際に使えるかどうかは別だと考えておきたい。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
ダッシュボードの数字を疑うところから始めるのは、なかなか難しい。だから私は、出金の場面だけに絞って、次のことを決め事にしておくのがいいと思っている。
- 作業を始める前に金銭を求められたら、その時点でやめる
- ダッシュボード上の“報酬”は、実際に出金できるまで信じない
- 「認証費用」「保証金」等の名目で追加の支払いを求められたら、それ以上は払わない
- 支払い方法としてギフトカードを指定された時点で、それ自体を疑う
- 家族や消費者ホットライン188に、一度は話してみる
この記事のまとめ
- 「返信するだけの簡単作業」で報酬が積み上がる副業サイトは、出金の直前に「認証費用」等の名目で追加の支払いを求めてくる型がある
- 支払い手段にギフトカードが指定される背景には、取り消しにくく追跡しにくいという事情がある
- 同種の相談は国民生活センター・消費者庁にすでに寄せられており、相談件数・請求額とも増加傾向にある
対策は結局のところ、出金前の追加費用要求で止まる・支払い方法を疑う・一人で抱えず正規窓口に話す。この3つに尽きる。