第424号黒岩検閲済 2026年7月31日 発行(不定期刊/前号:7月31日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > AI丸投げ副業×高額コンサル誘導の型
調査報告|AI丸投げ副業×高額コンサル誘導の型

『知識不要でAIに任せるだけ』と謳う副業案内が、AI丸投げの客対応や既存作品を学習させた生成物の販売を勧め、高額コンサルへ進む型を、AI事業者ガイドライン・文化庁の一次情報で調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「知識不要でも、AIに任せるだけで稼げる」。そう謳う副業の案内をよく見かけるようになった。YouTubeやSNSで、AI活用をテーマに副業ノウハウを発信するチャンネルは、今や珍しくない。中身を見ていくと、紹介される副業は大きく二つの型に分かれる。ひとつは、AIに出させた回答を、そのまま客に渡す仕事。もうひとつは、人気の絵や音楽をAIに学習させて、その生成物を売る仕事だ。どちらも「知識はいらない」が売り文句になっている。今号は特定の事業者を名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、AIの精度と著作権、双方の一次情報から調べた。

「知識不要」で紹介される、二つの副業パターン

調べた限り、この手の案内が勧める副業は、だいたい次の二つに集約される。どちらも「AIがやってくれるから、自分は知識がなくていい」という組み立てになっている。

パターン1|AIの回答を、そのまま客に渡す仕事

ひとつ目は、客から寄せられた質問や困りごとをAIに投げ、返ってきた回答をそのまま客に伝える、という仕事だ。「シニア向けのITサポート」のような形で紹介されることが多い。パソコンの操作で困っている人の相談に乗り、その答えをAIに聞いて教える——一見、成立しそうに見える。だが、AIの出力には事実と異なる内容を作り出す「ハルシネーション」という弱点があることは、国の指針でも繰り返し指摘されている。

総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、AIの評価や判断を「丸呑みにしない」ことの必要性をこう述べている。「AIによる評価、判断、推奨、又は予測等のアウトプットの丸呑みにしないために、AIの欠点を含む特性を理解できるトレーニングを受けることや、AIの評価や判断等を人間が承認する際には人間自身がAIの評価や判断等を承認する理由や根拠を独自に考えてから承認すべきこと」が対策として挙げられている(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」令和7年3月28日、14ページ)。つまり、AIの答えを検証せずそのまま右から左に渡す仕事のやり方そのものが、指針が注意を促している使い方に近い。知識がない状態でAIの答えの正誤を判断できるはずがなく、誤った回答を客に伝えてしまえば、クレームになって当然だ。

パターン2|既存の絵や音楽をAIに学習させ、生成物を売る仕事

もうひとつは、人気のイラストや楽曲をAIに学習させ、似た作風の生成物を作らせて、それを売るという副業だ。こちらは著作権の問題がついて回る。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」は、AI利用者が既存の著作物を意識していなくても、生成AI自体がその著作物を学習していれば「客観的に当該著作物へのアクセスがあったと認められることから」「通常、依拠性があったと推認され、AI利用者による著作権侵害になりうる」としている(文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」令和6年3月15日、32〜34ページ)。加えて、生成物が既存作品の「表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるもの」であれば、類似性も認められうるとされている。人気作品に似せることをむしろ狙いとするこの副業の作り方は、この二つの論点に正面からかかる構造になっている。なお、この文書自体は法的拘束力を持つものではなく、行政による考え方の整理である点は付け加えておく。

「知識不要」が、そのまま危うさになる 二つのパターンに共通するのは、「知識がなくてもできる」という売り文句が、そのままリスクの見えなさに直結している点だ。AIの回答が正しいかどうか判断する知識がなければ、誤りを誤りと気づけない。学習元の著作物の扱いに関する知識がなければ、権利侵害の線引きも分からない。知識不要をうたう仕事ほど、実は判断の場面で知識を要求される——そう私は見ている。

なぜ最終的に「高額コンサル」へ進むのか

この手の案内は、たいてい無料の動画や少額の教材から始まり、途中から個別コンサルや有料コミュニティへの案内が挟まる。国民生活センターは、こうした情報商材まわりのトラブルについて古くから注意を促している。「近年みられる手口では、初めから高額契約を勧誘するのではなく、無料や少額の情報商材を販売してから高額契約を勧誘する事例があります」「広告では、大金を手に入れられることや簡単な作業であることを強調したり、ビジネスで成功したと自称する“カリスマ”が広告塔として登場するケース」があるという(独立行政法人国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」平成30年8月2日)。この資料自体は2018年時点のものだが、「簡単・知識不要を強調し、無料や少額から段階的に高額契約へ進める」という構造は、AIを謳う副業案内にもそのまま当てはまる。道具がAIに変わっても、入り口の作り方は変わっていない。

迷ったとき用の一言 「知識はいらない」と言われたら、逆に一度立ち止まってほしい。本当に問題のない仕事なら、知識があってもなくてもできるはずで、わざわざ「知識不要」を売りにする必要はない。私はそこに引っかかりを覚える。
  • 「知識不要」「誰でもできる」を強く前面に出していないか
  • AIの回答を検証する工程がないまま、客にそのまま渡す仕組みになっていないか
  • 生成物のもとになる著作物の扱いについて、説明が一切ないまま販売を勧めていないか
  • 最初の動画や教材が無料・少額でも、その先に個別コンサルや高額契約が用意されていないか
  • 「今なら」「限定」など、コンサルへの申し込みを急がせる言葉がついていないか

この記事のまとめ

  • 「知識不要でAIに任せるだけ」の副業案内には、AI回答の丸投げと、既存作品を学習させた生成物の販売、という二つの型がある
  • 前者はAIの誤り(ハルシネーション)、後者は著作権の依拠性・類似性という、それぞれ知識が要る問題を抱えている
  • 最終的には無料・少額の入口から高額コンサルへ進む構造が、情報商材トラブルの典型と重なる

「知識不要」は免罪符にならない。むしろ、判断の場面で知識が必要になったときに、その仕事のリスクが表に出てくる。まずはそこを確かめてほしい。