第419号黒岩検閲済 2026年7月30日 発行(不定期刊/前号:7月30日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|回答一律の適職診断×少額レッスン継続課金の型

「4問・3分の適職診断」が、回答にかかわらず同じLINE登録画面に着地し、月謝2,250円のレッスンへ段階的に進む型を、消費者庁と特定商取引法の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

「4問に答えるだけで、あなたに向いている仕事がわかります」──そんな適職診断の広告を見かけた。スマートフォンで3分もかからず答え終わる、ごく簡単なアンケートである。氏名や職歴を細かく尋ねられるわけでもない。ここまでは、よくある適性診断と変わらない。気になったのは、その先だ。どの選択肢を選んでも、たどり着く先が同じ画面になっている。今号はこの型を洗った。(黒)

「副業診断」より、もう一段軽い入口

副業の診断だと身構える人も一定数いる。だが「適職診断」「あなたに向いてる仕事」という言い方であれば、転職や自己分析のつもりで気軽に答えてしまう人が増えるだろう、と私は見ている。消費者庁の注意喚起でも、こうした広告の入口はこう説明されている。「スマートフォンでSNS等を見ていると、1日数回の簡単なアンケートに回答するとお金を稼ぐことができる、などといった広告が表示されます。」(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」2025年6月26日)。副業という言葉を出さず、適職・向いてる仕事という穏やかな言葉に置き換えても、広告の先で起きることは同じである。「当該広告に興味を持った消費者が、広告をタップして読み進めていくと、LINEアカウントの友だち登録を要求されるので、友だち追加をします。」(同資料)。診断は無料。次に来るのはLINEの友だち追加。ここまで、費用は発生しない。

選んだ答えは、結果に反映されているか

今回見た型で気になったのは、回答の中身が実際に結果へ反映されているように見えない点だった。設問は4つ。だが、どの組み合わせで答えても、着地するのは同じLINE登録画面である。診断という体裁は、あくまで入口の見た目にすぎないのではないか、と私は見ている。正直に言えば、この「回答にかかわらず同じ結果になる」という仕掛けそのものを名指しで扱った公的資料を、私は確認できていない。ただ、消費者庁が公表した摘発事例を読む限り、実際の遷移先は設問の中身にかかわらずLINE登録という同じ入口として説明されている。診断の設問数や所要時間ではなく、着地点が一つに収れんしているかどうか。そこを見てほしい。

LINE登録のあと、少額のレッスンへ

友だち追加のあとに案内されるのが、今回見た型では「オンラインレッスン」だった。1回50分で2,250円。高額プランと呼ぶには小さい金額である。ここが、この型の見分けにくいところだと私は思う。最初から大きな金額を提示されれば、たいていの人は身構える。だから、まずは数千円という「試しやすい」金額から始まる。

消費者庁が調べた別の事例では、入口は同じように無料の相談・診断から始まりながら、最終的には数十万円から数百万円規模の「サポートプラン」へ進んでいた。「初心者なら一番スタンダードであるNo.6パックがおすすめです。60日間の250万円のサポートプランに参加すれば、それ以上の報酬が得られます。」(前掲・消費者庁の注意喚起)。数千円のレッスンと250万円のプランでは、規模がまるで違って見える。だが型としては同じだ。少額で関係をつくり、信頼が育ったところで金額を引き上げる。本紙が繰り返し見てきた「段階的高額化」の型と、根は同じである。

その報酬は、何によって決まるのか 消費者庁は同じ資料の中で、こうした副業の報酬についてこう整理している。「副業によって当該報酬を得ることができるかどうかは、消費者のアフィリエイトの成功報酬に左右される不確実なものでした」──消費者契約法上の「断定的判断の提供」に関わる論点である。レッスンの先に示される収入が、自分の作業への対価なのか、それとも誰かへの紹介の成否に左右されるものなのか。そこを確かめないまま契約を先へ進めるのは避けたい。

数字で見る、この型の広がり

感覚ではなく、統計で見ておきたい。国民生活センターによれば、「簡単なタスクを行う副業に関するトラブル」の相談件数は2020年度1,341件、2021年度2,398件、2022年度2,793件、2023年度3,694件と増え続けている。SNSをきっかけとした相談の割合も、2020年度23%から2024年度(7月31日時点)は70.1%まで上がっている(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!」2024年9月4日)。診断やアンケートを入口にした副業・仕事紹介のトラブルは、減っていない。むしろSNS発の相談が主流になりつつある、という数字である。

法律上、どう位置づけられるか

仕事やレッスンの提供を口実に、商品や継続的な役務の契約を結ばせる取引は、特定商取引法が定める業務提供誘引販売取引に当てはまり得る類型として整理されている。消費者庁は「仕事を提供するので収入が得られる、という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引」をこの類型と説明している(消費者庁 特定商取引法ガイド「業務提供誘引販売取引」)。該当する場合、勧誘に先立つ氏名等の明示義務や、20日間のクーリングオフ期間が定められている。もっとも、入口の診断と、レッスンを提供する主体のどちらが「業務提供誘引販売取引を行う者」に当たるかは契約構造次第であり、個々の該当性をここで断定はしない。あくまで、こうした類型が法律上存在するという事実として押さえておいてほしい。

繰り返し出ている注意喚起 消費者庁は、簡単な副業を入口に高額なサポートプランを契約させる事業者について、時期を変えて複数回にわたり注意喚起を公表している。ある一つの案件を指しているわけではなく、同じ型が形を変えて繰り返し確認されている、ということだと私は見ている。で、その利益の出どころは?──紹介料なのか、レッスンの受講料そのものなのか。そこが自分の言葉で説明できないうちは、契約を先へ進めない方がいい。
  • 診断結果が、自分の回答内容を実際に反映しているか、確かめられるか
  • 診断の運営元と、レッスン・サポートを提供する主体の名称・所在地が一致しているか
  • 少額の支払いであっても、契約条件(回数・総額・解約方法)が書面や記録に残る形で示されているか
  • 「今だけ」「モニター価格」といった急かす言葉が出た時点で、いったん時間を置けているか

この記事のまとめ

  • 「適職診断」という穏やかな体裁でも、回答にかかわらず同じLINE登録画面に着地する型がある
  • 少額のレッスンから始まり、段階的に金額が引き上げられる型は、国民生活センターの統計でも増加傾向にある

診断結果を急いで信じる前に、着地点が一つに収れんしていないか、報酬の出どころは何かの成否に左右されないか。この2つを自分の手で確かめる時間を取ってほしい。