SNSの投資グループで「取引所担当者」を名乗る人物の案内に従ったら、出金の段階で名目を変えた追加送金を求められた型を、国民生活センター・金融庁の一次情報で調べた
寄せられた相談は、SNSの広告からLINEグループへ入り、そこで「取引所の担当者」を名乗る人物の案内でFXの口座を開設し、出金しようとした段階で名目を変えた追加の送金を求められた、というものだった。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れを調べておきたい。
なぜ「グループ」という形を取るのか
個人に一対一で声をかけるより、いったんLINEグループへ招き入れる形の方が効きやすいのだと思う。グループの中には、案内役に加えて、同じように誘われた参加者らしき顔ぶれが同時に見える。一人で判断するのではなく、大勢がすでに同じ流れに乗っているように見える場が、先に用意されている格好になる。
入口:SNS広告からLINEグループへ
接触の起点はSNSの広告や個人アカウントからのメッセージで、そこからLINEへの登録を促され、最終的にLINEグループへの参加に至る。金融庁はSNS・マッチングアプリ等を通じた投資勧誘について「LINEのグループに参加した場合には、グループ内で特定の銘柄の投資勧誘が行われたり、口座開設や入金を要求されます。」(SNS・マッチングアプリ等からの投資勧誘にご注意ください・金融庁)と注意を呼びかけている。
案内役:グループの中の「担当者」を名乗る人物
グループの中には、取引所の担当者や運用の窓口を名乗る人物が個別に案内する形が見られる。国民生活センターが公表した相談事例には「グループ内にいたFXの取引所担当者を名乗る者の案内に従い、免許証の画像を送信してFX口座を開設し、証拠金約1,000万円を振り込んだ。」(SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル・国民生活センター・2024年)という記録がある。担当者を名乗っていること自体は、身元の確認にはならない。
型を、お金の流れで分解する
この型でよく聞くのが、「誰でも簡単に稼げる」「元本や利益を保証する」という言い切りだ。まず、この言葉そのものを一度、法律の側から確かめておきたい。
消費者契約法には、将来の利益や価額について断定的な判断を示して契約させた場合、消費者が契約を取り消せるという規定がある。「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。」(消費者契約法第四条第一項第二号・e-Gov法令検索)という条文だ。「誰でも簡単に稼げる」「返金を保証する」という言い切りは、まさにこの「将来の変動が不確実な事項の断定」にあたりうる。将来のことを言い切られた時点で、その契約は取り消せる場合がある、と法律の側にすでに書かれている。
グループ内で見せられる、他の参加者の「成功」
個別の案内と並行して、グループの中では他の参加者らしき投稿が流れる。「もう出金できた」「利益が出た」という報告が、参加を迷う人の背中を押す役割を果たす。金融庁は「LINEのグループ内では、犯人たちが複数のアカウントを使って投資が成功しているそぶりを見せて、参加者が投資を行いたくなるように仕向けるケースもあります。」(金融庁)と説明している。国民生活センターも「「簡単にもうかる」「自分も成功した」等と言われると、その甘い言葉に流されてしまいがちですが、確実にもうかる話はありません。」(国民生活センター・2024年)と述べている。目の前の成功報告を、口コミのように受け取らないほうがいい。自分の手で確かめられるかどうかを基準にしたい。
出金の段階で、名目が変わる
実際に相談として寄せられている例では、出金しようとした段階で名目を変えた追加費用が発生している。国民生活センターの資料には「「出金には税金として160万円が必要」と言われ振り込んだ。しかし、「間違った口座に入金された」と言われ、再度別の口座に160万円を請求され、指示通りに振り込んだ。」(国民生活センター・2024年)という事例が記録されている。税金、手数料、送金ミスの訂正——名目は変わっても、求められるのは常に追加の送金であり、出金そのものには一向にたどり着かない。
こうした資産運用の勧誘は、海外の業者を称する場合でも、日本国内で無登録のまま営業していれば規制の対象になる。「海外で金融商品取引のライセンスを持つ業者であっても、日本で登録を受けずに、日本に居住する者に対して金融商品取引業を行うことは禁止されています。」(国民生活センター・2024年)という説明がある。金融庁は無登録業者の名称を公表しているが、「掲載されている無登録業者は、警告書の発出を行った時点で無登録営業を行っていることが確認できた者に限られています。」(無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について・金融庁)とも説明しており、名前が載っていないことがそのまま安全の証明にはならない。
すでに入金・送金してしまった方へ
すでに入金し、出金の段階で追加送金を求められている方もいると思う。まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。順序はこうなる。
- 追加の送金要求には応じない
- 「担当者」「グループ」を名乗る相手とのやり取りは、記録を残したまま連絡を止める
- 振込先の口座・送金の経路をメモしておく
- 金融庁の無登録業者リストで名称を確認する(掲載がなくても安全の証明にはならない点に注意する)
- 消費生活センター・警察相談窓口に相談する
困ったときは、消費者ホットライン「188」(消費者庁)に相談できる。犯罪や事故と言い切れなくても不安があるときは、警察相談専用電話「#9110」(警視庁)という窓口もある。私には個別の解決はできない。判断は、正規の窓口に委ねてほしい。
この記事のまとめ
- SNS広告からLINEグループへ誘い、グループ内の「担当者」が個別に案内する型がある
- グループ内の他の参加者らしき成功報告は、演出として仕込まれている場合がある(金融庁・国民生活センター)
- 出金の段階で名目を変えた追加送金を求める点は、公的機関の相談事例でも繰り返し確認されている
で、その利益の出どころは?――誰でも稼げるという言葉の裏で、実際に動いているのは、参加者から集めた追加の送金そのものではないか。そこを一度、自分に問い直してほしい。(黒)