第351号黒岩検閲済 2026年7月16日 発行(不定期刊/前号:7月16日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|名目エスカレーション×出金拒否の型

出金の名目が税金→手数料→「マネーロンダリング容疑」の保証金へ重くなっていく投資勧誘の型を、金融庁の新しい確認手段で調べた

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黒岩警戒度

今号はこの件を洗いました。マッチングアプリやSNSで知り合った相手から投資アプリへ誘われ、出金の段になって「税金」「手数料」を求められる——という型は、これまでの号でも何度か取り上げてきた。今回もう少し詳しく追ってみたいのは、その名目が一回で終わらず、どう重くなっていくかという一点だ。国民生活センターの相談事例には、税金や手数料の先に「マネーロンダリングの疑いがある」という名目まで出てくる。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで見ていく。

出金の段になって、名目が変わっていく

専用アプリに登録すると、資産が増えていく画面を見せられる。この表示自体は、運営側がいつでも書き換えられる数字にすぎない。で、その利益の出どころは?——ここは変わらず疑ってほしい一点だ。

今回追いたいのは、その先である。実際に出金を申請したあとに何が起きるか。国民生活センターが公表した相談事例では、出金しようとした際に「マネーロンダリングに使われたため口座が凍結された。口座の凍結解除金が必要」「所得税」「手数料」などの名目で、次々に、合計約4,000万円を請求されたケースが記録されている(国民生活センター「ロマンス投資詐欺が増加しています!」、2022年3月3日)。

別の相談事例では、出金しようとしたところ「利益を含めた総資産の15%(180万円)を保証金としてさらに支払う必要がある」と言われている(同資料)。最初に決めた金額ではなく、その時点で見えている資産の割合で次の請求額が決まる——というのも、この型の特徴の一つだと私は見ている。

「マネーロンダリングの疑い」という、もう一段重い名目

税金や手数料は、まだ聞き覚えのある言葉かもしれない。厄介なのは、その先に「マネーロンダリングの疑いがある」という名目が用意されていることだ。同じ相談事例には「アプリの運営事業者から『マネーロンダリングの嫌疑があるため、納入保証金を支払う必要がある』と連絡があった」という記述がある(同資料)。

捜査を思わせる言葉を持ち出されると、こちらが疑われている側であるかのような気持ちになり、判断が鈍る。だが、これは実際の捜査機関からの連絡ではない。出金を止め続けるための、いくつかある名目の一つにすぎない、というのが実態だと私は見ている。

「出金のために、まず送金を」——この一文が出た時点で 健全な取引に、出金の前払いという順番はない。名目が税金であれ、手数料であれ、「マネーロンダリングの疑い」であれ、構造は同じだ。一度払えば、次の名目が来る。

名前を借りるアプリと、実態の見分け方

勧誘してくる相手は、しばしば実在する証券会社や大手金融機関の名前を借りてくる。金融庁は、証券会社や日本証券業協会をかたるSNS上の偽広告について「実在する証券会社の名称等を使用し」ていると注意を呼びかけている(金融庁「証券会社や日本証券業協会を騙ったSNS上の偽広告等に注意!」、2023年11月13日発表・2024年6月28日更新)。

アプリの見た目やロゴが本物に似ていても、それだけでは実在の裏付けにはならない。金融庁はSNS上の投資勧誘に関する注意喚起の中で、「証券口座を装ったスマホアプリ」が使われる事例にも触れている(金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」、2026年3月5日更新)。名前とロゴを見た目だけで信じず、運営の実態を別の手段で確かめる、という一手間が要る。

事業者の登録状況は、まとめて調べられるようになった

投資や暗号資産の勧誘を業として行うには、金融庁への登録が要る。これまでは業種ごとに一覧を確かめる必要があったが、2026年1月30日、金融庁は業種をまたいで一括で検索できる「金融事業者一括検索機能」の運用を始めた。「無登録業者が関与する詐欺的な投資勧誘等の被害から身を守るため、お取引の相手方の事業者が、登録等を受けている金融事業者かどうか確認する際などにご活用いただけます」としている(金融庁「『金融事業者一括検索機能』の運用開始について」、2026年1月30日)。

勧誘してきた相手が名乗る会社名を、この検索窓に入れてみる。それだけで、この型の入口をかなりの割合で見分けられる。私が確認した範囲では、アプリストア上の星の数やダウンロード数そのものへの公的な注意喚起は見当たらなかった。ただ、運営会社の登録状況を確かめる手段は、こうしてはっきり用意されている。

  • 出金のために追加の送金を求められたら、名目が何であれ、まずその場で払わない
  • 「マネーロンダリングの疑い」「凍結解除金」も、出金を止め続けるための名目の一つと考える
  • 勧誘者が名乗る会社名を、金融庁の一括検索機能で確認する
  • アプリのロゴや名称が本物に似ていても、それだけで実在の裏付けにはしない
  • すでに払ってしまった場合は、これ以上払わないことを最優先にする
迷ったとき用の一言 「出金するために、まず払ってほしい」——名目がどれだけ重くなっても、答えはこの一文が出た時点で出ている。(黒)

この記事のまとめ

  • 出金時の名目は「税金」「手数料」から「マネーロンダリングの疑い」の保証金へと、段階的に重くなることがある
  • 実在の証券会社名やロゴを借りる偽広告・偽アプリの事例も、金融庁が確認している
  • 事業者の登録状況は、2026年1月に始まった金融庁の一括検索機能でまとめて確認できる

払う前に確かめられることは、思うより多い。名目がどう変わっても、出金の前払いという構造そのものは崩れない。