過去に問題化した投資の発信者が、名前と肩書を変えて「AIが選ぶ無税の投資」で再登場する型を、法人番号公表サイトと金融庁の一次情報で調べた
投資のインフルエンサーとして名前が知られていた人物が、しばらく静かになったあと、見た目も肩書もすっかり変えて、新しいブランドの「カリスマ投資家」として戻ってくる——そういう型を、たまに見かける。今回は特定の人物・案件名は挙げず、「名前を変えての再登場」「AIツールによる無税の銘柄指示」「メディア掲載実績」という3つの要素を、公的資料の言葉と数字でほどいてみたい。
名前と肩書が変わっていても、運営会社の履歴は消えない
見た目や活動名が変わると、検索しても過去の評判が出てこなくなる。単純だが、かなり効く手口だと思う。ただ、個人の名前は変えられても、案件を運営する法人まで丸ごと消すのは簡単ではない。
国税庁の法人番号公表サイトには、法人の商号変更履歴を遡って確認できる仕組みがある。同サイトの案内では「番号法施行日(平成27年10月5日)以降に商号又は名称や所在地を変更した法人の変更前の商号又は名称、所在地の情報も検索対象に含めて検索することができます」としている(法人番号公表サイト・ご利用方法(国税庁))。つまり、新しいブランド名の運営会社が、以前は別の名前だった案件と同一かどうかを、無料で自分で確かめられる。もっとも、これは法人の商号についての仕組みで、個人の改名や見た目の変化まで追えるものではない。そこは分けて考えたい。
それでも「銘柄を教えるだけ」は、投資助言業の登録が前提になる
AIツールが指示する銘柄に乗るだけで稼げる、という話も、この型ではよく聞く。だが、特定の顧客に対して継続的に投資判断の助言を行う行為は、本来、法律に基づく登録が前提になる仕事だ。財務省関東財務局は投資助言・代理業について「顧客に対し有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関し助言(アドバイス)を行うこと」と説明している(登録に係るQ&A・投資助言・代理業関係(財務省関東財務局))。AIが選んだ銘柄を継続的に案内し、その通りに売買してもらう——これも形を変えた投資判断の助言に見える。
金融庁は「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」で、無登録業者に警告書を出した名称等を公表する制度を運用している。同庁は同じページで「掲載されていない者でも、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得ますのでご注意ください」とも注記している。つまり、名前が載っていないことは、無登録ではない証拠にはならない。私はそこを勘違いしないようにしている。
「利益は無税」は、まず割り算で確かめる
利益に税金がかからない、という言葉も検証してみたい。国税庁は、上場株式等の譲渡益について「20%(所得税15%、住民税5%)」の税率がかかる申告分離課税だとしている(株式等を譲渡したときの課税(国税庁))。つまり、株の利益は本来、5分の1近くが税金として引かれる計算になる。無税になるとすれば、NISAのような非課税制度を使った場合に限られるはずだ。
だが、その非課税枠にも上限はある。金融庁のNISA特設サイトは「生涯を通じての非課税保有限度額が新たに設けられ、1,800万円が上限となりました」としている(NISAを知る(金融庁))。無条件・無制限の無税ではない。「無税利益」とだけ言われて、その根拠——NISA口座を使うのか、上限はどうなるのか——が説明されないなら、そこが一番聞きたいところだ。で、その利益の出どころは?
「メディアに掲載された」実績の中身
信頼を演出する材料として、メディア掲載実績もよく使われる。だが、その掲載の多くは、対価を払えば複数の媒体に配信できるプレスリリースサービスであることが多い。編集部が取材して記事にした、というのとは意味が違う。消費者庁は、広告であることを隠して第三者の評価であるかのように見せる表示について「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」としている(ステルスマーケティングに関する景品表示法の考え方(消費者庁))。この規制の対象は広告主である事業者であり、配信サービスを利用したこと自体が直ちに違反になるわけではない。ただ、「掲載実績」が取材によるものか、お金を払った配信なのかは、分けて考えたい。
- 見慣れない新しいブランド名の運営会社は、法人番号公表サイトで過去の商号を確認してみる
- 「銘柄を教えるだけ」でも、継続的な助言であれば投資助言業の登録が前提になる
- 名前が無登録業者の公表リストに載っていないことは、無登録ではない証拠にならない
- 「利益は無税」と言われたら、非課税制度の種類と上限を具体的に確認する
- 「メディア掲載」が取材によるものか、有料の配信サービスかを見分ける
この記事のまとめ
- 名前や肩書を変えての再登場でも、運営会社の商号変更履歴は法人番号公表サイトで確認できる
- 「AIが教える銘柄に乗るだけ」も、継続的な助言であれば投資助言業の登録が前提になる
運営会社の履歴、助言の登録、利益の課税——この3つを確かめる習慣が、結局いちばん確実な防御になると思う。