Instagram・Threadsで親身な相談者を装うアカウントから公式LINEへ登録すると、投資顧問・情報商材・自動売買ツールなど名称の違う複数のブランドが同一の運営から並行案内され、出金の直前に手数料・税金名目の追加請求へ進む型を、警察庁・金融庁の一次情報で調べた
Instagramで、投資の相談に親身に応じてくれる個人アカウントを見かけたことがある方もいるだろう。プロフィール写真の人物が本人かどうかを、読者がその場で確かめる手段はほとんどない。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。
今号調べたいのは、そうした個人アカウントから公式LINEに登録した後の話だ。投資顧問・情報商材・自動売買ツールという性格の異なる複数のブランドが、同じ一つの運営から並行して案内される。そして入金後、出金を申し出た直後に、手数料や税金という名目で追加の入金を求められる。この一連の型を調べた。
なぜ入口を「親身な個人のSNSアカウント」にするのか
企業の広告ではなく、Instagram・Threadsで日々の暮らしや投資の悩みを発信しているように見える個人アカウントが入口になる。企業の広告だと身構える相手も、同じ立場の個人からの発信には警戒が緩みやすい。「私も最初は不安だった」という体験談風の語り口で距離を縮め、警戒心が緩んだころに公式LINEへの登録を促す。
国民生活センターは2024年5月、SNSをきっかけとした金融トラブル急増(国民生活センター・2024年5月29日)の中で「2022年度と比べて、相談件数が約9.6倍と急増している」と発表している。警察庁もSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況(警察庁・2025年12月2日)の中で、次の手口を挙げている。「『Instagram』の偽アカウントをフォローするとダイレクトメッセージからLINEの投資グループに誘導されて金銭をだまし取られる」。Instagramの個人アカウントからLINEへ、という導線そのものが、公的機関の統計にすでに現れている型だとわかる。
消費者庁もSNSなどを通じた「もうけ話」への注意(消費者庁・2024年5月30日)で「著名人・有名人のなりすましと考えられる事例が令和5年度下半期以降、増加傾向にあります」と述べている。ただし、プロフィール写真そのものが本人のものかどうかを、私が調べた範囲で名指しして注意喚起した公的資料は見当たらなかった(確認できる範囲では、である)。だが、本人確認ができない相手からの、金銭が絡む勧誘だという一点だけは、変わらない事実として残る。
型を、お金の流れで分解する
個別の案件名・発信者名は伏せる。だが、寄せられた話を並べると、入口から請求まで、おおむね同じ順序をたどる。
入口:Instagramの個人アカウントから公式LINEへ
個人アカウントでのやり取りが数日から数週間続いたころ、「詳しい話はLINEで」と公式アカウントへの登録を勧められる。この時点では登録自体に金銭は発生しない。読者が渡しているのは、電話番号でも口座番号でもなく、LINEの友だち関係という一本の糸だけである。
分岐:LINE登録のあと、名称の違う複数のブランドが同じ運営から並行して案内される
登録のあと、投資顧問サービス・情報商材・自動売買ツールといった、名前も見た目も違う複数のサービスが、時期をずらして並行して案内される場合がある。名称が違えば別の事業者のように見えるが、案内の起点はいずれも同じ一つのLINEアカウントである。
同じ運営が、複数の名前を同時に使い分けている。ここが今回の型の核だ。以前調べた別の型では、同じ発信者が名前の表記だけを変えて似た内容のセミナーを順に展開する例があった(著名人の体験談を使った「自動売買で毎月50万円」ウェビナーが、名前の表記だけ変えて複数展開される型を、届出情報で調べた)。
今回確認した型はそれとは少し違う。性格の異なる複数のブランドが、順番にではなく同時並行で走っている。名称の異なる複数の投資サービスが実は一つのLINEアカウントへ収束するという型そのものは、以前にも記録している(「銘柄配信」「投資顧問」「AI自動診断」と名称の異なる複数の投資サービスが、実際には同じ1つのLINEアカウントへ収束する型を、景品表示法・特定商取引法の一次情報で調べた)。
出口:出金を申し出た直後に「手数料」「税金」名目の追加請求が来る
入金後しばらくは、画面上の残高や配当が順調に増えて見える。だが、いざ出金を申し出ると、応じてもらえない。かわりに「出金のための手数料」「税金分の精算」といった名目で、追加の入金を求められる。
金融庁はSNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください(金融庁・2023年1月6日公表/2025年4月17日更新)の中で「出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなることもあります」と注意を呼びかけている。国民生活センターのSNSをきっかけとした金融トラブル急増(国民生活センター・2024年5月29日)の集計でも、出金拒否とあわせて100万円から1500万円規模の追加費用を請求されたという相談が確認できるとしている。
「先に手数料を払えば出金できる」を数字でほどく
出金の直前に求められる「手数料」「税金」の名目を、実際の数字で追ってみたい。以下はすべて「仮に」の数値であり、実在するどの窓口の請求でもない。仕組みを確かめるための例にすぎない。
かりに500万円の出金を申し出たとする。まず「源泉徴収相当」として20%、100万円の入金を求められたとする。
払うと今度は「国際送金手数料」として15%相当の75万円を追加で求められ、さらに「資金移動税」として10%相当の50万円を求められたとする。ここまでで、先に払った額はすでに225万円になる。500万円を受け取るために225万円を先に払う計算だ。
正規の金融機関であれば、税金や手数料は受け取る金額から天引きされるものであって、受け取る前に別途振り込ませる理由がない。先に払わせてから出金する、という順序そのものが、この型の一番のサインだと私は見ている。
で、その利益の出どころは?——投資顧問や自動売買ツールという商売なら、利益は本来、利用料や成功報酬から生まれるはずだ。出金の直前になって初めて追加の入金を求める構造だとしたら、その運営の実際の収入源は、運用の成果ではなく、新しく入ってくる入金そのものではないか。
投資顧問業・投資助言業は、投資運用業等 登録手続ガイドブック(金融庁・2026年7月28日確認)にあるとおり、内閣総理大臣(金融庁)の登録を要する業務である。金融庁は無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(金融庁・2026年7月28日確認)の中で、無登録業者の名称を公表している。ただし「掲載されていない者でも、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得ます」とも述べている。名前の違う複数のブランドのうち、どれか一つでも登録の実態を確かめられないなら、残り全部も同じ運営である以上、安心材料にはならない。
すでに入金・追加請求に応じてしまった方へ
複数のブランドのどれかに、すでに追加の入金をしてしまった方もいるだろう。気持ちは分かる。だが、まず一つだけ持ち帰ってほしい。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。
- 追加の支払い・追加の借入れをいったん止める
- LINEのやり取り・振込明細・アカウントの画面をスクリーンショットで残す
- 振込に使った決済元(銀行・クレジット会社)に状況を連絡する
- 消費者ホットライン「188」や最寄りの消費生活センターに相談する
消費者庁は消費者ホットライン(消費者庁・2026年7月28日確認)で「困ったときは、一人で悩まずに、『消費者ホットライン』188にご相談ください」と案内している。名称の違う複数のブランドと契約していても、相談窓口は一つでよい。
私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。
この記事のまとめ
- 個人アカウントからの発信は警戒心を緩めやすいが、本人確認ができるわけではない
- 名称の違う複数のブランドが並行して案内されても、出金の窓口が一つに収束しているなら実質は同じ商売である
- 出金の直前に手数料・税金名目で追加入金を求める順序そのものが、仕組みとして矛盾している
払ってしまったら、取り戻すより先に「これ以上払わない・借りない」。記録を残し、決済元に連絡し、188へ相談する。この順序を覚えておいてほしい。