「銘柄配信」「投資顧問」「AI自動診断」と名称の異なる複数の投資サービスが、実際には同じ1つのLINEアカウントへ収束し、+300〜900%の運用実績を掲げる型を、景品表示法・特定商取引法の一次情報で調べた
相場ニュースを装った無料サイトを読んでいたら、同じページの中に「銘柄配信」「投資顧問」「AIによる自動診断」と、名前も見た目も違う投資サービスの案内が3つ並んでいたことがあった。それぞれ別の会社が運営しているような体裁だったが、登録ボタンを一つずつ辿ってみると、行き着く先はどれも同じ1つのLINEアカウントだった。今号は、特定の事業者は名指しせず、この「看板は複数、窓口は1つ」という型と、そこで示されていた+300%台から+900%近くまでの運用実績表示について、景品表示法・特定商取引法の一次情報で調べた。(黒)
看板が3つ、窓口が1つという構造
見ていた記事には、当日の株価材料や決算情報を一覧にした、いかにも硬派な体裁のコーナーがあった。その下に「銘柄配信はこちら」「投資顧問に相談する」「AIの自動診断を試す」とボタンが3つ横並びになっている。ボタンごとに遷移先のページも作り込まれていて、運営者名の名乗り方や実績の見せ方もそれぞれ微妙に違う。ただ、最終的にLINEの友だち追加画面へ着地したところで、追加先のアカウントは3つとも同じだった。読者からすると3社を比較検討しているつもりが、実質は1つの相手とだけ向き合っていることになる。
名称を切り替える動き自体は、公的な資料にも記録がある
同時に複数の名称を並べる今回の型とまったく同じ事例ではないが、行政の指摘を受けるたびに名称を変えて実質同じ商品・サービスを売り続ける事業者の実態は、消費者庁の検討会報告書にも記録されている。「行政当局から指摘を受けるたびに自らの会社を清算し、すぐに商品・サービスの名称を変えて、同様の商品・サービスを販売する別の会社を立ち上げるといった行為を繰り返す者が多くみられる」と同報告書は指摘し、こうした事業者の広告は「一見、第三者が作成したような記事風の広告になっている」とも記している(消費者庁「アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書」2022年2月15日)。名称を切り替えるタイミングが時間差か同時併存かの違いはあっても、「名称と運営実体を切り離しておく」という発想そのものは地続きに見える。
「+890%」「+302%」の実績表示、景品表示法ではどう見るか
案内の中には、特定の銘柄名とともに「+890%」「+302%」といった非常に高い運用実績・値上がり率が並んでいた。数字が具体的なぶん説得力を感じてしまうが、この種の実績表示は景品表示法の優良誤認表示に触れうる論点として整理されている。消費者庁は、商品・サービスの内容について「実際のものよりも著しく優良であると示すもの」「事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの」を優良誤認表示として禁止しており、事業者が表示の根拠資料を期間内に提出できない場合、その表示は優良誤認とみなされる、または推定される仕組みになっていると説明している(消費者庁「優良誤認とは」)。
つまり、+890%という数字そのものの真偽よりも先に、「その数字を裏づける資料を、事業者側がきちんと持っているか」という制度上の分かれ目がある。読者の側から根拠資料を確かめる手段はほぼないので、極端な数字が出てきた時点で、いったん立ち止まる材料にしてほしい。
有償プランに進む前に、運営の実体を確かめる方法
LINE登録の先で有償の投資顧問契約やツール利用料の案内が来たら、まず確かめたいのは相手が金融商品取引法上の登録を受けた業者かどうかだ。金融庁は2026年1月、複数の業種にまたがる金融事業者をまとめて検索できる機能の運用を始めたと発表しており、「無登録業者が関与する詐欺的な投資勧誘等の被害から身を守るため、お取引の相手方の事業者が、登録等を受けている金融事業者かどうか確認する際などにご活用いただけます」としている(金融庁「『金融事業者一括検索機能』の運用開始について」2026年1月30日)。看板が複数あっても、運営実体の正式名称さえ分かれば、この検索機能で照合できる。逆に言えば、運営者の正式名称や所在地がどこにも書かれていない案内は、それだけで確認の手段を一つ失っていることになる。
通信販売の広告には、氏名や住所を表示する義務がある
消費者庁の特定商取引法ガイドは、通信販売の広告について「法人の場合には、名称、住所及び電話番号(さらに、インターネットで広告を行う場合には、代表者の氏名又は通信販売の業務の責任者の氏名)を表示する必要があります」と説明している(消費者庁「特定商取引法ガイド-通信販売広告について」)。看板を複数持つ案内ほど、この基本的な表示が省かれていないかを、まず確認したい。
SNS発の偽広告そのものへの注意喚起も出ている
金融庁は「最近、SNSやSMSを中心に、証券会社や日本証券業協会を騙った偽広告等の存在が確認されています」としたうえで、実在する金融機関の名義を無断で使い、株価情報の提供などを名目にLINE登録や金銭の要求へ進む手口に注意を呼びかけている(金融庁「証券会社や日本証券業協会を騙ったSNS上の偽広告等に注意!」)。名称を実在の企業から借りるか、複数の架空の名称を自分たちで作るかの違いはあるが、「名称と実体のズレ」を利用する構造という点では共通している。
- 複数の名称・サービスが並んでいても、登録・相談の窓口(LINEアカウント等)が実は同じでないか確かめる
- 提示された運用実績の根拠資料を、事業者側が示せるか確認する
- 有償プランの案内が来たら、運営者の正式名称を金融庁の一括検索機能などで照合する
- 広告に法人名・住所・連絡先が明記されているか、通信販売の表示義務の観点から確かめる
この記事のまとめ
- 名称の異なる複数の投資サービスが並んでいても、実は同じ1つのLINEアカウントに収束する型がある
- +890%等の極端な運用実績表示は、景品表示法の優良誤認表示に触れうる論点として整理されている
- 有償プランの案内が来たら、金融庁の一括検索機能や特定商取引法の表示義務を手がかりに、運営実体を確かめる余地がある
看板の数に気を取られず、窓口の数を数えてみてほしい。