第348号黒岩検閲済 2026年7月16日 発行(不定期刊/前号:7月16日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > 市況データ大量掲載×テンバガー実績訴求の型
調査報告|市況データ大量掲載×テンバガー実績訴求の型

決算・材料データを大量に並べる“市況ニュース”記事が、テンバガー銘柄の実績を掲げてLINE先の有料ツールへ読者を送る型を、金商法・消費者庁の一次情報で調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

今号はこの件を洗いました。無料の株式情報サイトを覗くと、その日の株価材料や決算発表企業の一覧が、丁寧な表組みで何十社分も並んでいることがある。数字が細かく体裁もしっかりしているので、うっかり“きちんとした市況ニュース”に見えてしまう。ただ、その一覧のすぐそばに置かれた「無料情報だけでも一度見ておいて損はありません」という一文の先に何があるのかは、記事のどこにも詳しくは書かれていない。特定のサイトや事業者は名指しせず、案件をまたいで現れるこの型を、お金の流れで調べた。

大量のデータ表が担っている役割

この型の入口は、いかにも硬派な株式ニュースサイトの体裁を取っている。当日の株価材料、決算発表企業のPERや配当利回りを一覧にした表、時にはIPO銘柄の情報まで、扱っている情報量そのものはかなり多い。個別の数字に誤りを指摘できるような内容でもなく、読んでいる側は自然と「ちゃんと調べているサイトだ」という印象を持つ。

問題は、その“きちんとした情報”のすぐ隣に置かれている一文のほうだ。「銘柄選びで迷っているなら、まず無料情報だけでも一度見ておいて損はありません」といった言葉とともに、外部の投資ツールやLINE公式アカウントへのリンクが添えられている。大量のデータで積み上げた信頼を、そのまま次のリンクへ横流しする構造になっている。

テンバガー銘柄の実績表示、その数字は誰が確かめられるのか

誘導先でよく目にするのが、「〇〇株は+225.6%」「△△株は+267.8%」といった、いわゆるテンバガー銘柄の騰落率の実績だ。数字が具体的なぶん説得力があるように見えるが、この数字を自分の手で裏取りできる読者はほとんどいない。

金融商品取引法は、証券会社やその役職員が有価証券の価格等について「必ず騰貴する」「必ず下落する」といった断定的な判断を示して勧誘することを禁じている(証券取引等監視委員会「投資をされる方へ」、金融庁)。消費者契約法も同様に、将来の価額など不確実な事項について断定的判断を提供して契約させた場合、その契約を取り消せると定めている(消費者庁「消費者契約法逐条解説」第4条第1項第2号)。実績の数字そのものより先に、「必ず」「確実に」に類する言い切りが混じっていないかを見ておきたい。

「無料情報」の先に、有償のツールや助言が来たとき

無料情報を見てLINEへ登録したあと、有償のツール利用料や個別サポートの案内が来る段になったら、もう一つ確かめたい制度がある。相手に対価を払って投資判断の助言を受ける契約は金融商品取引法上の投資顧問契約にあたり、これを業として行うには投資助言・代理業の登録が必要だ(関東財務局「投資助言・代理業関係(登録等)」)。金融商品取引業は、こうした登録等を受けた者でなければ行うことができない、と法制度上定められている(関東財務局「金融商品取引法制について」)。

登録を受けずに営業していたとして警告書が出された業者の名称は、金融庁のサイトで公表されている(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。有償の話が出た時点で、案内してきた相手の名称をこの一覧で確かめる。それだけで、この型の入口をかなりの割合で見分けられる。

この種の相談は、実際に増えている

「無料の市況記事からLINE誘導」という導線そのものが特殊なものではないことは、公的機関の資料からも読み取れる。金融庁は、SNS上の偽広告やURLをクリックするとLINEグループへの参加や詐欺的なサイトへのアクセスへ誘導される手口について注意を呼びかけている(金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」)。

消費者庁も、SNS発の副業案内をきっかけに複数のLINEアカウントへ段階的に誘導され、高額なサポートプランの契約に至る手口について注意喚起を行っている(消費者庁・2025年6月発表)。国民生活センターの集計でも、SNSをきっかけとした金融商品・サービスの消費者トラブルは急増していると報告されている(国民生活センター報道発表、令和6年5月29日)。

で、その「無料情報だけでも」の先で、実際にお金を払うことになるのは何に対してなのか。ここが曖昧なまま話が進むようなら、それ自体がこの型の入口だと思っていい。

大量のデータに足を止めない 決算表や材料一覧がどれだけ精緻でも、それは次のリンク先の安全性を保証しない。テンバガー実績の数字より先に、「必ず」「確実に」という言い切りの有無を確かめてほしい。有償の話が出た時点で、案内してきた相手の名称も一度確かめる。
  • 決算・材料データが大量に並ぶ記事でも、その情報量自体は勧誘先の安全性の証明にはならない
  • 「必ず」「確実に」に類する言い切りが混じっていないか、実績表示の前に確認する
  • 有償のプランやツール利用料の案内が来たら、相手の名称を金融庁の一覧などで確かめる
  • LINE登録や入金を急かされたら、その場で決めない
迷ったとき用の一言 「無料情報だけでも」と言われて焦る必要はない。健全な情報提供なら、こちらが確かめる時間を取ることを嫌がったりはしない。(黒)

この記事のまとめ

  • 決算・材料データを大量に並べる無料の“市況ニュース”記事が、テンバガー銘柄の実績を掲げてLINE先の有料ツール・助言へ読者を送る型がある
  • 実績の断定的な表示は金融商品取引法・消費者契約法上の問題になりうる行為で、有償の投資助言を業として行うには登録が必要
  • SNS発の金融商品トラブルの相談は国民生活センターの集計でも急増しており、公的機関が繰り返し注意を呼びかけている

「無料」「実績」という言葉が並んだら、その場でLINE登録や契約を決めずに、まず相手の名称を確かめてほしい。