第347号黒岩検閲済 2026年7月16日 発行(不定期刊/前号:7月15日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|運営者プロフィール×多重LINE誘導の型

金融業界出身を名乗る運営者プロフィールが信頼を積み、複数のLINE登録から高勝率をうたう投資顧問・AIツールへ枝分かれする型を、景品表示法の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

その日の株価材料を並べる、ごく普通の市況解説記事だった。日経平均が何円動いたか、どの業種が売られたか。中身自体に嘘は見当たらない。気になったのは、記事の随所に置かれた導線の数だ。「金融業界で勤務したのち、個人投資家を経てFP資格を取得した」という運営者の経歴紹介。そこから伸びる二つの異なるLINE登録ボタン。さらに記事の外には、投資顧問ランキングページ、勝率や利益率を具体的な数字で掲げる外部サービスが複数、枝分かれして待っていた。特定のサイトは名指しせず、この「経歴で信頼を積み、複数の入口から有償サービスへ枝分かれさせる」型を、表示のルールで調べた。

経歴の紹介が、なぜ最初に置かれるのか

この型の記事には、たいてい運営者の経歴紹介が付いている。金融業界での勤務経験、個人投資家としての活動、FPのような資格の取得——具体的な経歴が並ぶほど、読み手は「この人は分かっている人だ」と感じやすくなる。ただ、経歴の記載自体は事実かどうかを外部から確かめる手段がほとんどない。運営会社の特定商取引法に基づく表記(運営責任者・会社情報)まで遡って初めて、法人としての実在は確認できる場合が多い。経歴の説得力と、その先で紹介されるサービスの実態は、別のレイヤーの話だ。

一つの記事から、LINE登録ボタンが何度も出てくる理由

この型のもう一つの特徴は、送客が一本道ではないことだ。「一般のニュースには載らない情報を配信する」という趣旨のLINE登録と、「短期で値動きが出そうな銘柄を無料配信する」という趣旨の別のLINE登録が、同じ記事の中に複数置かれている。読み手からすると、どちらも「無料でお得な情報がもらえる入口」に見える。だが登録したLINEの先で、どのタイミングでどんな有償の話に進むかは、登録するまで分からない。

「限定」「一般には出回らない」という言葉が結ぶ先

LINE登録を促す文言には「限定」「一般には出回らない」といった言葉がよく使われる。国民生活センターは、SNSをきっかけに著名人や知人を名乗る相手から勧誘される金融商品トラブルの相談が、2022年度の170件から2023年度は1,629件へ急増したと公表している(国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」、令和6年5月29日)。対象は著名人になりすます勧誘についての集計だが、「無料の発信で信頼を得たあと、有償の話へ進む」という骨格は、この型とも重なって見える。

この型の核 経歴の説得力とLINEの「限定感」は、どちらも信頼を前払いさせるための演出になりうる。信頼を払い終えたあとに、何が案内されるかを見てから判断しても遅くない。

勝率80%超、利益率890%——その数字は誰が確かめたか

枝分かれした先でよく見かけるのが、「勝率80%超」「利益率890%」のような、極めて具体的で高い実績数値だ。数字が細かいほど、読み手には裏付けがあるように映る。だが消費者庁は、事業者の表示のうち「実際のものよりも著しく優良であると示すもの」を優良誤認表示として景品表示法の規制対象に挙げており(消費者庁「優良誤認とは」)、事業者が裏付けとなる合理的な根拠資料を提出できない場合、「当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ」ると説明している(消費者庁「不実証広告規制」)。掲げられた勝率や利益率に、検証可能な根拠資料が添えられているかどうかを、まず見てほしい。

それは「広告」だと、ひと目で分かる形になっているか

この型では、運営者自身が薦める投資顧問ランキングと、外部の投資顧問・AIツールサービスへのリンクが、同じ記事の中に混在している。運営者がどちらかから紹介料を受け取っているなら、それは実質的に広告だ。消費者庁は令和5年10月1日施行の告示で、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」をステルスマーケティングとして景品表示法の規制対象に指定しており(消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」)、「表示内容全体からみて、一般消費者にとって『事業者の表示』であることが明瞭となっているかどうかが重要」だとしている(消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。なお、この規制の名宛人はあくまで表示を行う事業者(広告主)側であり、記事を読む側に義務が生じるわけではない。読み手としては、記事内の紹介やリンクのそばに「PR」「広告」等の明示があるかどうかを、確かめる材料にすればよい。

助言する側は、登録された業者か

枝分かれの先で、報酬を得て個別銘柄の売買判断を助言するような有償プランが案内されたら、もう一段注意したい。金融商品取引法上、報酬を得て投資判断の助言を行うには投資助言・代理業の登録が必要とされている(金融庁「投資運用業等 登録手続ガイドブック2」)。金融庁は無登録業者について、「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず……登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」と注意を促しており(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)、警告書が出された業者の名称を一覧で公表している(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。サービス名が出た時点で、この一覧に照らして確かめておきたい。

  • 運営者の経歴紹介は、信頼の材料であって、その先のサービスの実態を保証するものではないと分けて考える
  • 複数のLINE登録ボタンがある場合、それぞれ登録後にどんな案内が来るかを一つずつ確認する
  • 「勝率〇%」「利益率〇%」のような数字には、検証可能な根拠資料が添えられているかを見る
  • 記事内の紹介・リンクのそばに「PR」「広告」等の明示があるかを確認する
  • 有償の助言プランが出てきたら、金融庁の登録業者情報・無登録業者一覧で名称を照らす
迷ったとき用の一言 「その勝率と利益率、根拠資料を見せてもらえますか」。経歴の話ではぐらかされたら、それが答えだと思う。(黒)

この記事のまとめ

  • 運営者の経歴紹介は信頼を積む演出であり、その先のサービスの実態を保証しない
  • 複数のLINE登録ボタンから枝分かれする多重送客の型があり、それぞれの案内先を個別に確かめる必要がある
  • 根拠のない勝率・利益率の表示は優良誤認表示・不実証広告規制の対象になりうる
  • 紹介料を受け取る形の送客は、広告だと分かる表示になっているかがステルスマーケティング規制の論点になる

経歴の説得力と、数字の根拠は別問題。LINE登録の前に、その先で何が案内されるかを一つずつ確かめてほしい。