本日の材料株をまとめる無料の相場ニュース記事が、末尾のワンクリックボタンで具体的な月間利益額を掲げる外部サービスへ送客する型を、断定的判断と優良誤認の規制で調べた
その日の株価材料、注目セクター、決算発表の一覧をきっちり無料で並べる相場ニュース記事を、いくつか読み比べていた。中身に嘘は見当たらない。銘柄コードも決算日も、確認すればその通りの事実だ。ただ、読み終えたところに置かれたボタンが一つだけ気になった。「無料で今すぐ資産形成をスタート」。押した先には、月間の利益額を具体的な数字で掲げる、別の投資情報サービスが待っている。特定のサイトは名指しせず、この「正確な無料情報の末尾に置かれた一本釣りボタン」という型を、お金の流れと表示のルールで調べた。
「今日の材料株」という正確な情報の後ろにあるもの
この型の記事は、たいてい構成が決まっている。その日の株価材料の一覧、テーマ別の注目銘柄、決算発表の詳細データ——ここまでは、確認しようと思えば誰でも確認できる公開情報だ。丁寧に更新されている分、読み手の信頼はまっすぐ積み上がっていく。問題は、その信頼が記事の最後でどこに向かうか、である。
末尾に置かれるのは、たった一つのボタンだ。「チャンスを逃さず無料で今すぐ資産形成をスタート!」という煽り文句とともに、外部の投資情報サービスへ移動する。日々のニュースの正確さと、ボタンの先で語られる実績の正確さは、まったく別のレイヤーの話だ。ここを混同させてしまう構造に、まず注意を向けておきたい。
「月間で数十万円の利益」という数字は、何を根拠にしているか
遷移先でよく見かけるのが、「月30万円以上の利益」のような具体的な金額の提示だ。数字が具体的であるほど、読み手には説得力があるように映る。だが、消費者庁は事業者の表示について「実際のものよりも著しく優良であると示す」表示を優良誤認表示として景品表示法の規制対象に挙げており(消費者庁「優良誤認とは」)、事業者がその裏付けとなる合理的な根拠資料を提出できない場合は「当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ」ると説明している(消費者庁「不実証広告規制」)。掲げられた金額に、確かめられる根拠資料が添えられているかどうかを、まず見てほしい。
「必ず」に近い言い切りが混ざっていないか
証券取引等監視委員会は、有価証券の価格等について「必ず騰貴する、又は必ず下落するといった断定的な判断を示して勧誘すること」を金融商品取引法が禁じていると説明し、「『この銘柄は絶対に値上がりします。』とか……言われたとしたら、その営業員は法令違反を犯している可能性があります」と述べている(証券取引等監視委員会「投資をされる方へ」)。ワンクリックボタンの誘い文句そのものは違法ではなくても、その先の説明文に「絶対」「必ず」に近い断定が混ざっていたら、それは法令が禁じる領域に踏み込んでいる可能性がある。
自社の推奨ツールと、外部の利益額。どちらも「広告」だとわかる形か
この型のもう一つの特徴は、送客が一本道ではないことだ。運営者自身が薦める投資情報ツールの実績を記事内に置きつつ、末尾のボタンでは別の外部サービスの利益額を掲げる——いわば二重の紹介構造になっている。運営者がどちらかの紹介料を受け取っているなら、それは実質的に広告だ。消費者庁は令和5年10月1日施行の告示で「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」をステルスマーケティングとして規制対象に指定しており(消費者庁・内閣府告示第19号)、アフィリエイト表示についても「表示内容全体からみて、一般消費者にとって『事業者の表示』であることが明瞭となっているかどうかが重要」としている(消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。自社推奨・外部送客のどちらも、読み手が「これは広告だ」と一目で気づける表示になっているかを、それぞれ個別に確かめたい。
有償の話に進むなら、相手の登録の有無を確かめる
ボタンの先で有償のプランや個別サポートの話が出てきたら、もう一段注意したい。株の売買判断を報酬を得て助言する契約は投資顧問契約にあたり、業として行うには投資助言・代理業の登録が必要になる。金融庁は無登録業者について「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず……登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高いと考えられます」と注意を促し(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)、無登録で警告書が出された業者の名称を一覧で公表している(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。名前が出た時点で、この一覧に照らして確かめる。手間はかからない。
国民生活センターがまとめた統計でも、SNSやネットをきっかけとした金融商品の勧誘トラブルの相談は、2022年度170件から2023年度1,629件へと急増している(国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」、令和6年5月29日)。対象は著名人になりすます勧誘についての集計だが、「無料の発信で信頼を得たあと、有償の話に進む」という基本の構造そのものは、この型とも重なって見える。
- 材料・決算情報の正確さと、末尾のボタンの先にある利益額表示の正確さは、別々に確かめる
- 「月〇万円」のような具体的な利益額は、根拠となる資料が示されているかを見る
- 「必ず」「絶対に」に近い言い切りが出た時点で、黄信号として扱う
- 自社推奨・外部送客のどちらも、広告だとわかる表示になっているかを個別に確認する
- 有償の話が出たら、相手の名称を金融庁の登録業者情報・無登録業者一覧で確かめる
この記事のまとめ
- 正確な無料の相場ニュースの末尾に、具体的な月間利益額を掲げる外部サービスへの一本のボタンが置かれる型がある
- 根拠のない利益額表示は優良誤認表示・不実証広告規制、断定的な言い切りは金融商品取引法が禁じる断定的判断の提供にあたりうる
- 自社推奨・外部送客の二重紹介は、広告だとわかる表示になっているかがステルスマーケティング規制の論点になる
正確な情報を出せることと、その先の数字に根拠があることは別問題。ボタンを押す前に、その根拠を確かめてほしい。