日経平均の市況ニュース記事に、基準の違う実績数字を掲げる3つの送客先が並ぶ型を、表示の根拠で調べた
今号はこの件を洗った。読んでいたのは、ごく普通の市況ニュース記事である。日経平均が大きく上げた、半導体関連が買われた——ここまでは、どの経済メディアにも載っている話だ。ただ、その記事の中に、性格の違う送客先が三つ並んでいた。投資助言サービスへのLINE登録、投資顧問を比較するランキング、AIを名乗る投資ツール。それぞれが、違う基準の実績数字を掲げていた。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。で、その利益の出どころは?
「市況ニュース」の体裁に、送客先が三つ並ぶ
記事そのものは、実際に起きた値動きを伝えている。だから読み手は「ニュースを読んでいる」つもりで読み進める。ところが本文の合間に、性格の異なる三つの誘導が挟まっている、と私は見ている。ひとつは、無料でもらえるとうたう銘柄情報へのLINE登録。ひとつは、複数の投資顧問を並べて比較する「おすすめランキング」。もうひとつは、AIを名乗る投資ツールで、利益率を前面に出す紹介である。
三つとも、遷移先は別のサービスだ。だが記事本文の地の文とほとんど同じ調子で置かれているため、どこからが広告で、どこまでが市況の解説なのか、読んでいる側には区別がつきにくい。金融庁も、著名人やニュースを装う形の投資勧誘について注意を呼びかけている。「著名人を騙るSNS上の広告等を通じて投資を行った結果、出金できなくなった等の相談も寄せられています」(金融庁「著名人を騙る投資勧誘にご注意」)。今回のような形は著名人のなりすましではないが、「本物の情報を装って、その内側に勧誘を仕込む」という骨格は同じ型に見える。地方の消費生活センターも同種の注意喚起を出している。「大手テレビ局や大手新聞社の配信を装った『偽ニュース』による、投資詐欺の被害が報告されています」(伊勢市消費生活センター)。
数字でほどく——三つの実績表示、基準がそろっていない
ここが、今回いちばん書いておきたい点である。三つの送客先は、それぞれ違う物差しで実績を語っていた。AIを名乗るツールは利益率を並べていた。300%台から900%近くまで、複数の数字が併記される形である。投資顧問の紹介のほうは、獲得利益を円建てで示していた。百数十万円、株価は2倍超、という言い方だ。LINE配信のほうは数字を出さず、「無料でもらえる」という言葉だけで誘っていた。
いずれも、母数と期間が書かれていない。利益率890%が、いつからいつまでの、いくらの元手に対する数字なのか。獲得利益135万円が、何にいくら払った上での差し引きなのか。ここが書かれていなければ、読者の側では検算のしようがない。私はいつもの割り算をしてみる。かりに元手10万円で利益率890%なら、単純計算で89万円の利益ということになる。890という数字だけを見れば、なるほど大きい。だが、それが1か月の数字なのか、1年の数字なのか、条件のよい一部だけを切り取った数字なのか——そこが分からなければ、890という数字そのものに意味はない。
将来の利益を断定的に示す表示については、法律上の考え方もある。消費者契約法は「将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」を、契約の取消しを認めうる行為として挙げている(消費者契約法 第4条・e-Gov法令検索)。加えて、実際より著しく良く見せる表示は、景品表示法の優良誤認表示にも触れうる。消費者庁は優良誤認表示を「実際のものよりも著しく優良であると示すもの」と説明している(消費者庁「優良誤認とは」)。
「誰が書いているか」が最後まで見えない
もう一点、気になったことがある。この記事、書き手の名前は出ている。だが、運営している会社の名称・住所・連絡先といった、いわゆる特定商取引法上の表示は、記事の中に見当たらなかった。通信販売にあたる場合、事業者は氏名・住所・電話番号を表示する義務を負う(根拠は特定商取引法第11条、様式は同法施行規則第8条)。加えて、著しく事実と違う表示や、実際より著しく優良・有利に見せる表示は、特定商取引法第12条で禁じられている(特定商取引に関する法律・e-Gov法令検索)。送客先の投資顧問やAIツールが、この表示義務を果たしているかどうかは、遷移した先のページで確かめるしかない。表示が見当たらなければ、その時点で「相手が誰か分からないまま話が進んでいる」ということになる。
- 提示された実績数字は、期間と母数(元手・件数)がセットで書かれているか
- 利益率・円建て金額など、単位の違う数字を並べて比べていないか
- 遷移した先のサービスに、運営者名・住所・連絡先の表示があるか
- 「無料」の先で、結局は個人情報の登録や電話番号の入力を求められていないか
この記事のまとめ
- 実際の市況ニュースの体裁の中に、投資顧問・AIツール・LINE配信という三つの送客先が並ぶ型がある
- それぞれの実績数字は基準がそろっておらず、比べることも検算することもできない
対策は、遷移先の運営者情報を確かめること。数字の母数と期間が書かれているか見ること。この2つに尽きる。