第406号黒岩検閲済 2026年7月27日 発行(不定期刊/前号:7月27日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|同業批判×自己リスト誘導

同業の副業検証サイトを名指しで「詐欺師」と断定し、自分のメルマガ・LINEへ誘導する記事の型を、消費者庁・国民生活センターの一次情報で調べた

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黒岩警戒度

特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れではなく「言葉の流れ」で調べた。副業を辛口に検証しているはずのブログの中に、同業の検証サイト運営者を名指しで「詐欺師」と呼び、「本当に信頼できる情報は自分のメルマガ・LINEにある」と話をつなげる記事がある。今号は、その構造を読み解いた。(黒)

「同業は詐欺師、自分は本物」という記事の型

展開はだいたい同じ順序をたどる。まず「◯◯という副業検証サイトがある」と対象を紹介し、次に「実はこの運営者、過去に何度もサイト名を変えている」「悪評から逃げているだけ」と経歴を否定する。そのうえで「詐欺師の典型的手口」という強い言葉を使い、最後に「では、どこから情報を得ればいいのか」という読者の疑問に答える形で、自分自身のメールマガジンやLINEへ話をつなげる。批判と勧誘が、同じ記事の中に同居している。

名指し批判が「比較広告」として見られたら

消費者庁は、比較広告についての考え方を公表している。

単なる中傷・誹謗との違い 「一般消費者に対する具体的な情報提供ではなく、単に競争事業者又はその商品を中傷し又はひぼうするもの」——消費者庁「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(1987年策定・2016年改正)より

同じ資料は、適正な比較広告として認められるための条件も示している。

比較広告として認められる3条件 「①比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること②実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること③比較の方法が公正であること」——消費者庁「比較広告に関する景品表示法上の考え方」より

「過去に何度も名前を変えている」「詐欺師の典型的手口」という主張が、この3条件を満たす形で示されているか。読み手が確かめられる根拠が示されないまま、言葉の強さだけが残る記事は、この基準に照らして一度立ち止まってみる価値がある。

誘導先の「本当の情報」は検証できるか

批判の締めくくりで誘導される先は、多くの場合、登録するまで中身が分からないメールマガジンやLINEアカウントだ。国民生活センターは、この形態のトラブルが増えていることを繰り返し伝えている。

情報商材トラブルの急増 「2017年度の相談件数は6,593件と2013年度に比べ7倍超となり、2018年度も増加ペースが続いています。」——国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」(2018年8月2日)より

配信の形もさまざまだと、同じ資料は書いている。「事業者によっては、動画やメールマガジン、アプリケーション(以下、アプリ)で配信したり、冊子やDVD等に加工して契約者に送付する場合もあります。」——同資料より。つまり、「登録すればわかる」という設計そのものは、情報商材トラブルの土台としてよく見られる形だ。批判記事の強い言葉に納得して登録した先が、同じ土俵に立っている可能性は、頭の片隅に置いておいていい。

「本質的な情報」の主張にも、根拠を求めていい

特定商取引法にも、関連する規定がある。

誇大広告の禁止 「著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。」——e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」第十二条より

さらに、その表示が本当かどうかを確かめる仕組みも用意されている。

根拠資料を求められる制度 「主務大臣は、前条に規定する表示に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした販売業者又は役務提供事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。」——e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」第十二条の二より

「私の情報の方が本質的だ」という主張も、同じように、確かめられる根拠があるかどうかで見ていい。根拠を示せと言われて示せない情報が、果たして本質的と言えるのかは、私には分からない。

数字でほどく:SNS発の勧誘全体に共通する流れ

情報商材に限らず、SNSをきっかけにした「もうけ話」全般の相談も増えている。

SNSからメッセージアプリへの導線 「こうした相談は年々増加しており、特にSNSをきっかけにした割合が高まっています。」——国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!」(2024年9月4日)より。同資料によれば、相談のうちSNSをきっかけにした割合は2020年度23.0%から2023年度63.4%へ、平均契約購入金額は2020年度27万9,519円から2023年度76万3,117円へ増えている。

これはタスク型副業についての集計で、メルマガ・LINE誘導そのものの数字ではない。ただ、SNSやブログから「まずはメッセージアプリで」と一歩深い場所へ読者を動かし、そこで初めて本格的な話が始まるという導線の形そのものは、共通して見られる。

迷ったとき用の一言 「詐欺師と決めつけている根拠は何ですか」と、その場で自分に聞き返してみてほしい。答えがリンク先の実証資料ではなく、「感情の強さ」だけだったら、それ自体が答えだと思う。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れるので、私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、

  • 「詐欺師」「悪質」という言葉の根拠が、確かめられるリンクや資料として示されているかを確かめる
  • 批判している側自身の運営者情報(会社名・住所・連絡先)が、同じ記事内で確認できるかを確かめる
  • 誘導先のメルマガ・LINEの中身が、登録前に一切わからない設計になっていないかを確かめる
  • 「本質的な情報」「ここでしか言えない話」という言葉だけで、登録を即決しない

この記事のまとめ

  • 同業を名指しで「詐欺師」と断定し、自分のメルマガ・LINEへ誘導する記事の型がある
  • 名指し批判にも、比較広告として認められる「客観的な実証」「正確な引用」「公正な比較」が伴っているかを確かめる視点が使える

強い言葉で語られるほど、根拠を確かめる手間を惜しまないでほしい。(黒)