第335号黒岩検閲済 2026年7月13日 発行(不定期刊/前号:7月12日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|被害者目線の検証サイト×後出し利益率アフィリエイトの型

「投資商材に騙された経験から検証しています」と名乗る個人サイトが、後出しの利益率グラフで外部の株情報ツールへ橋渡しする型を、アフィリエイト広告の景品表示法上の考え方で調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「私も投資商材の被害に遭ったので、同じ思いをしてほしくなくて検証しています」——そう名乗る個人サイトを、この数年でずいぶん見かけるようになった。運営者の当事者性が前面に出ている分、こちらの警戒心もゆるみやすい。特定のサイトは名指しせず、案件をまたいで現れるこの型を、実績の見せ方とリンクの終着点の両方から調べておきたい。

ページの体裁は「検証」や「クチコミ」だが、実際に置かれているのは複数の株情報サイト・投資ツールへの誘導リンクと、過去のチャートから切り出した「利益率○○%」という実績数字だ。今号はこの「被害者目線の検証サイト」が、なぜ広告に見えにくいのかを、消費者庁の資料をもとに分解する。

なぜ「被害者目線の検証サイト」が信じられやすいのか

「広告」と名乗るページより、「私も痛い目に遭ったので中立に検証しています」と名乗るページのほうが、素直に読んでしまいやすい。運営者が"売る側"ではなく"元被害者"だと自己紹介した時点で、読者の側にある「広告は疑ってかかる」という防御が働きにくくなる、というのが率直な印象だ。

だが、そのページの収益源がどこにあるかは、自己紹介の文面だけでは分からない。検証を名乗るページの多くは、紹介先のサービスへの登録・購入によって運営者に成果報酬が入るアフィリエイト構造で動いている。当事者性の演出と、収益構造は、別のレイヤーの話だ。

型を、実績の見せ方とリンクの終着点で分解する

入口:「自分も痛い目に遭った」という当事者性の演出

冒頭で自身の被害体験に近いエピソードを語り、「だからこそ厳しい目で見極めています」「これまで100社以上を検証してきました」といった実績を添える。この語り口自体、事業者側の一方的な宣伝文句よりも読者の警戒心を下げやすい構造を持っている、と私は見ている。

中間:過去チャートから切り出す「利益率225%」「267%」

ページ中ほどには、複数の銘柄について「抽出日」と「利益率」を並べた表が置かれる。数字自体は嘘ではないのだろうが、値上がりした期間だけを結果から逆算して切り出しているのなら、同じ銘柄の下落局面は表に出てこない。読者が見ているのは、後出しでもっとも都合の良い区間だけだ。

出口:「無料で今すぐ」ボタンの先にある、外部の有料ツール

実績表のすぐ下に置かれた「無料で注目銘柄をチェックする!」というボタンを押すと、外部の株情報ツールや投資顧問サービスの登録ページへ移る。「月◯万円以上の安定した利益を狙うならここ」という文言が添えられていることもある。検証ページそのものは何も売っていないように見えて、実際にはここが本題だ。

この型の核 "検証している私"という当事者の顔と、"送客して収益を得ている広告主体"という顔は、同じページの中に同居する。どちらも嘘ではないが、読者に見えているのは前者だけ、ということが起こりうる。

数字でほどく:アフィリエイト広告と有利誤認表示の考え方

消費者庁のアフィリエイト広告等に関する検討会 報告書(2022年)は、こうした送客型の表示について「アフィリエイト広告であっても、広告主による広告である以上、アフィリエイト広告の表示内容についてはまずは広告主が責任を負うべき主体である」と整理している。ページの体裁が「検証」や「クチコミ」であっても、送客先から対価を得ている以上は広告としての責任を免れない、という考え方だ。

同報告書はさらに「アフィリエイターが成果報酬を求めて虚偽誇大広告を行うインセンティブが働きやすいという特性がある」とも指摘している。当事者性を演出した検証サイトほど、この構造と無縁ではいられない。

実際、同報告書の消費者アンケートでは「約66%の消費者(13,071名)が『あまり参考にならない』又は『ほとんど参考にならない』と回答した」——対価を受け取って書かれた記事だと分かった場合の話だ。ページのどこにも広告である旨が示されていないなら、その66%の判断材料そのものが読者から奪われていることになる。2023年10月からは、広告であることを隠す表示そのものが景品表示法違反となっている。

「利益率225%」の実績表示は、法的にどう見られるか

過去のうち都合の良い区間だけを切り出した実績数字は、景品表示法が定める表示規制と無縁ではない。消費者庁は優良誤認とはのページで「実際のものよりも著しく優良であると示すもの」を規制対象とし、有利誤認とはのページでは金融分野の実例として「外貨預金の受取利息を手数料抜きで表示したが、実質的な受取額は表示の1/3以下になってしまう」ケースを挙げている。表示された数字と、読者が実際に得られる結果との間にどれだけ開きがあるか——見るべきはそこだ。

送客先が無登録業者だったら、というリスク

「無料で今すぐ」の先にある投資ツール・投資顧問サービスが、日本で登録を受けた業者かどうかは、検証サイトの実績表からは分からない。金融庁は無登録業者との取引は要注意!!のページで「日本の居住者を相手に、株取引やFX取引、暗号資産取引などの金融商品取引業・暗号資産交換業を行う者は、日本の法令に基づき、登録を受ける必要があります」としたうえで、無登録業者については「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず……同等の態勢が整っていない可能性が高い」と注意を促している。「上場確実ですので、必ず儲かります!元本も保証します!」といった断定的な文言が送客先で使われていないか、登録の有無とあわせて確かめておきたい。

「無料ツール」の先で起きている、情報商材トラブルの型

国民生活センターの集計によれば、情報商材に関する相談件数は2022年度7,000件、2023年度6,256件、2024年度4,118件で推移している。「無料で今すぐ」から始まった導線が、最終的に高額な情報商材・有料サービスの契約に着地するケースは、この統計が拾っている型の一つだ。

迷ったとき用の一言 「この検証サイトは、紹介先からの収益がありますか」。運営者情報やお問い合わせフォームを備えたページなら、この一問に答えられるはずだ。答えがはぐらかされたら、それ自体が一つの答えだと思う。
  • 「私も被害に遭った」という当事者性の演出と、そのページの収益源は別の話だと切り分ける
  • 並んでいる利益率が「どの期間を切り取ったものか」を自分でも確認してみる
  • 「無料で今すぐ」ボタンの先が、日本で登録を受けた業者かどうかを金融庁の登録業者検索などで確かめる
  • その場で登録・入金せず、いったん持ち帰って第三者に見てもらう

この記事のまとめ

  • 「被害者目線の検証サイト」は、当事者性の演出と、広告としての収益構造が同居しうる型
  • 過去チャートの都合の良い区間だけを切り出した実績数字は、有利誤認・優良誤認表示の考え方と無縁ではない
  • 送客先が無登録業者かどうかは、検証サイトの実績表からは分からない

「検証しています」という言葉そのものより、その先で何が起きているかを見てほしい。迷ったら、消費者ホットライン「188」へ。(黒)